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123 魅了堕ち幽閉王子と欲望まみれの塔(王子視点)
しおりを挟む建設意欲が止まらない。
召喚主と共につくり始めたコンビニはいつの間にか様々な業種の店を飲み込んだ商業施設のような塔となり、ほぼ幽閉中の塔と同じ大きさへとなっている。
いいなあ、どうせ幽閉されるならこっちがいいなあ。
それを召喚主に伝えたらそうすればいいと言われてテンションが上がった。
そうだよな! ここは僕が……僕と、召喚主で作る理想の世界。ゲームの中では好きに作って、好きに暮らして構わないのだから!!
でも、屋上に露天風呂を作るのには断固反対をした。
いや、だって。
そんなの丸見えだろう、色々と!!
大体、僕は幽閉中の暮らしを少しでも楽しくするためにゲームの中でも僕の世界を再現したんだ。窓から召喚主の住むアパートとか、彼女のバイト先のコンビニとかが見えたら楽しそう、とか思って。
それなのにフ……風呂とか、窓から見るのに目のやり場に困るじゃないか。堂々と見づらくなってしまう。そんなの困る。
ゲームではアパート内に僕の部屋もあるし、現在建設中のコンビニ付きの塔にも居住用に仮眠室を作ったりもしたけれど、それとこれとは別。幽閉中の塔の窓からの景色は現実問題としての僕の楽しみだ。
例え、僕の世界であるアチラに同じ景色がなくとも、ゲームで作った景色を思い出すだけで楽しい気持ちになれるから。
その為にも堂々とガン見できなくなるような施設は困る。例えちょっと興味があったとしてもそこは我慢だ。
あ、もちろん僕が心魅かれて興味があるのは『温泉』の方……だけど……な、うん。
建設を進めるうちに、召喚主もココに住もうかな、とか言い出したのはかなり本気で嬉しかった。
ゲーム上とはいえ、幽閉仲間ができるのだ。これは彼女のためにも、もっともっと居住空間を充実させなくては!!
なにせ、幽閉は暇との闘いだからな。幽閉歴○年のベテランの僕にはよく分かる。そこを乗り切れないと、あっという間にヒトは壊れてしまうのだ。
その点僕は頑張った。あらゆる方向に努力して努力して、日々小さな楽しみを見つけながら、ようやくこの娯楽の多い異世界への召喚生活を勝ち取ったのだ。しかも、おまけでゲーム内での生活までついてきた。むしろ今ではそっちがメインとなりつつある。
今、僕は充実している。当たりの召喚主に出会えてラッキーだった。前の召喚主である鈴木さんに見放された時はどうしようかと思ったが、このための準備期間だったのかもしれない。
やってはいけない社会常識としてのアレコレを、僕に懇切丁寧に教えてくれたのは鈴木さんだ。そのお陰でこうして現在の召喚主に迷惑をかけることなく、嫌われることなく、適度な距離感で今の召喚生活楽しむことができている。
迷惑しかかけていないが、鈴木さんには感謝しかない。
そして、今日。本日三回目となる夜の召喚で、召喚主から見覚えのある懐かしいモノを出されて嬉しくなった。
鈴木さんが、疲れた時によく飲んでいた栄養ドリンク。そんなに美味しいのかと思って勝手に何本か飲もうとしたら怒られた。なんでも、用法用量があるらしく、それを守らねばならないそうだ。
勝手に飲み食いしたことよりも、僕の健康を気遣ってくれたのだと分かって、彼への信頼感が増した。思えば、鈴木さんが怒るのには、全てちゃんと理由があったのだと気づくきっかけにもなった出来事だ。
そんな、思い出の栄養ドリンク。
それを、今の召喚主から提供されるなんて、コレも何かの運命かもしれない。
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