魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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256 王子様とクリスマス……とゲーム

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「うん? 『クリスマスイルミネーション』??」

「――そう! 駅前もスーパーもその辺の民家も、この時期は張り切っているトコ多いのよ。特に駅前周辺はキレイだから、王子にも見せてあげたいなって思っていたのよね」


 以前は無理だったが、王子の行動可能範囲が駅前まで広がったことでそれが可能になった。


 クリスマスシーズンの今。
 しかも夜。


 軽い運動でもすれば王子の気分転換にもなってスッキリ爽快☆ 体も疲れて眠りやすくなるでしょう―――ということで。


 今日は駅前のイルミネーションを見学がてら、王子を夜のお散歩に連れ出します☆




 電気料金が何かと気になる昨今だけど、以前と比べて多少大人しめになったとはいえ、12月のこの時期は夜の風景が何かと華やかだ。

 なので、王子にもぜひこの空気を一度は経験させてあげたい――と、思っていた。

 この何でもかんでも魅了堕ちしちゃう王子様は去年、初めてのお散歩に夢中になるあまり越えてはいけない行動可能範囲をサクッと超えてしまい、その影響で異世界往復魔法陣が一時的に使えなくなって、冬の間ず~っとコチラに召喚できなくなっていた。


 そのため、王子にとっては今回がウチで迎える初めてのクリスマス――となるのだ。


 この時期特有の、何とも言えない浮足立ったリア充カップルの甘い空気はどうでもいいけれど。
 せっかく幽閉中の塔から離れて科学の世界へと召喚されてきたのだから、あの何かと華やかな電飾ピッカピカは王子だって体験しておいて損はないと思う。

 何より、王子ってああいう子供が好きそうなワクワクしちゃう雰囲気、絶対に好きだと思うんだよね。そうじゃなくても性格的に期間限定とか言う言葉に弱そうだし。


 子供も大人も世代を問わず皆が大好きなクリスマス。


 かくいう私も小さい頃はお兄ちゃん達と一緒になって、ご家庭サイズのクリスマスツリーにこれでもかってくらいあれこれ飾り付けをして楽しんでいた。


 女の子はみんなキラキラの光物が大好きだから♡


 ……と、言っても私は宝石には一切興味ないので、キラキラの電飾一択ですが。



 何か、クリスマスの飾りは見ているだけでいろいろ想像しちゃってわくわくしてくると言うか、なんと言うか……。

 ……ほら。ぶっちゃけ、サンタさんからゲームが貰えますしね? そりゃーわくわくするし、飾りつけだって張り切るってものですよ☆

 私からしてみれば、ツリーの飾りつけってサンタさんを召喚する儀式のような物ですし。


 ああ、楽しかった過去のクリスマス(プレゼント貰った後のゲーム三昧ライフ)の思い出が目に浮かぶ。
 冬休みだから時期的にもクリスマスってゲームソフト貰うのに最っ高のタイミングなのよねぇ……。



 中学くらいまでは対戦ゲームやRPGが多かったけど、もう少し大きくなってからは乙女ゲームに興味を持ちだして。

 そういえば初めてサンタさんから乙女ゲームを貰えたのっていつだっけ。リクエストしたクリスマスプレゼントが楽しみすぎて、ケーキもそこそこに早寝してメチャクチャ早起きして、枕元に置かれたゲームをそのまま夜まで楽しんだのは覚えている。
 どうしても好みの眼鏡キャラのスチルを年内にコンプリートしたくって。

 ……ってか、あの頃は乙女ゲームに限らず眼鏡キャラに夢中になっていたなぁ……今もたいして変わらないけど。


 ……と、これまでにサンタさんから貰った歴代ゲームソフトやその感想を思い浮かべながら、しみじみとそんなことを考えていたら、


「クリスマス……そうか。僕にはよくは分からないが、乙女ゲームの固定イベントでそんな感じのがあったな。なるほど、キレイなスチル拾える祭りっぽい雰囲気の何かくらいにしか思っていなかったが、実際にこの目で見るのはいい勉強になりそうだ! この先、より深く乙女ゲームを理解するキッカケとなるかもしれない」


 いつの間にか冬用装備(3番目のお兄ちゃんからのお下がり)を完璧に着こなしたイケメン王子様が、いつも通り真剣な様子でゲームに向き合っていた。

 うん。まあ、何事にも真剣に取り組むのは王子の良いところですね。時間を忘れてまで取り組んじゃうのはダメなところとも言えますが。





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