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288 ドキドキ王子の召喚主コレクション(王子視点)
しおりを挟むその後は流れで記念写真とか言うのを撮ることになった。
彼女が少し離れたところでスマホを置いているので、なんだなんだと思って見に行こうとしたら、動いちゃ駄目だと止められた。位置がどうとか言っている。
なので、動かないでそのまま待っていると、いそいそとキレイな格好をした彼女が僕の隣にやってきた。美しい彼女と並んでいると思うとドキドキする。
召喚主とは暖房費節約やら3D酔い対策やらで、しょっちゅうくっついてゲームをしているからこのくらいのことは慣れている筈なのに……。
やがてパシャリと音がして。召喚主が回収したスマホを覗き込んでいたので僕も真似したら、今度は止められたりはしなかった。
そこで僕が見たものは。
スマホの中で、ニコニコと笑っている僕と召喚主――。
え。なにこれずるい!!
羨ましくてずるいずるいと文句を言ったら、召喚主が僕にも同じものをくれるという。プリントというのをしてもらえば絵葉書のように、魔力を使わずとも好きな時に見られるのだそうだ。
何だそれ、すごい! 今から隠し場所を考えないと!!
召喚主は最後に眼鏡姿の僕にスマホを向けて何やらパシャパシャとやって、満足すると大慌てでどこかに出かけて行った。
彼女に構ってもらえるのは嬉しいが、急いでいるなら余計なことしなければいいのに……。
時々妙なこだわりを見せる彼女に若干呆れながらも、僕は追加でもらったポテトチップスを食べながら考える。
童顔な召喚主もああいう姿をしているとしっかり大人の女性に見えてしまうから困る。そのせいでさっきからドキドキして落ち着かない。
けれど、彼女は彼女で久しぶりの僕の正装姿に目を丸くしていたのでおあいこだ。まあ、最近は『汚しそう』という彼女の意思を尊重して、こっち来るなりジャージ(お下がり)に着替えていたからな。僕もあっちの方が楽だし。……特にウエストが。
ちなみに、召喚主が僕の服装への反応が遅れたのは、彼女がゲーム用眼鏡の方に食いついていたからだと思われる。
何か眼鏡に負けたようで面白くないが、この眼鏡は彼女自身が僕に似合うようにとアレコレ口出しをして、色合いなんかを僕が魔法で微調整して作り上げた特別な品。
二人の共同作業の努力の結晶――そう考えるとまあ悪くない。彼女の御眼鏡に叶うように魔力切れ寸前まで酷使させられたおかげか、この眼鏡着用時は彼女の機嫌が若干良くなるし。
多分、ポテトチップスを勝手に食べたことを怒られないうえもう一袋くれたのはその辺も関係あるのだと思う。ゲームの3D酔い防止にはこの眼鏡は必須だからな。眼鏡をかけているおかげで助かった。
本日の召喚主のあまりの美しさにポカンと口を開けてしまい、最後の一枚のポテチを下に落としてしまったが、彼女はキレイ好きでメイドもいないのにまめに部屋の掃除をしているし、僕は僕でゲームをしながらお菓子を食べているとどうしても手元がおろそかになってしまうので、おやつの落下対策にラグに保護魔法をかけて30分くらいは回収可能にしているから別に食べても問題はないのだが……。
流石にあっちの塔地下ダンジョンみたいに呪い付き魔物の体液塗れの床では僕も考えるけど……多少。
でもまあ、召喚主の怒った顔は今日のとは別の意味でドキドキするので彼女が嫌がることはやめておこうと思う。
召喚主の『怒った顔』はもう十分に撮ったしね!
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