魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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333 王子とお花見 中編

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 お花見と言っても、実際に飲み食いをするのは自宅アパートなので今一つお花見感はない。せっかくの機会だし、キレイな桜を見ながらそれっぽい気分を味わうのもアリなんじゃないだろうか。夜だとちょっと怖いけど、昼間なら安全面もオカルト面も問題ないですし。

 近所では大きめの公園なので、桜の木の下にはいくつかのベンチが並んでいる。まわりは住宅街だから流石に大々的にご馳走を広げて宴会したり飲酒したりはできないけれど、ベンチに座ってちょっと軽食を取るくらいならば問題なさそうだ。元々、広場の方ではフリマなんかもやっているような公園ですしね。

 ――と、いうわけで。

 いつも通り駅前の100均を覗いた後は、お花見スポットの公園からもほど近い、私が行き慣れているコンビニに立ち寄ることにした。



「ここは……!? 塔にある店とソックリだ!!」

 コンビニに入った途端。周囲をキョロキョロと見回して、大興奮の王子様。

 ああ、クラフト系ゲームの中に作成した『幽閉されたい塔』の一階にあるコンビニの店舗ですね。その通りですが少しだけ違います。このコンビニが塔の店にソックリなんじゃなくて、塔の店の方がこのコンビニにソックリなんですよ。この店をモデルにしたんだから当然ですね。

 でもまあ、その言葉は再現度を褒められたみたいで悪い気はしない。なんてったって、面倒な意味で凝り性な王子のお墨付きを貰えたのだ。頑張った甲斐がありました。

 興味深そうに店内を見ている王子を引っ張って、目的の場所――レジ横にあるホットスナックコーナーへと連れて行く。

 日差しは暖かいとはいえ、気温自体はまだ低い。その点、温かいものをすぐに食べられるコンビニのホットスナックは非常にありがたい存在です。


「ルカちゃんいらっしゃい。これはこれは……随分と現実離れした美形のお客様を連れているね。もしかしてルカちゃんの彼氏かい?」

「あっはっは、まさか。彼は幽へ……じゃなくて、同じ大学に通う留学生の友達です。せっかくだから公園でお花見をさせてあげようと思って。王子、『肉まん』と『ピザまん』と『あんまん』どれにする?」

「『肉まん』と『ピザまん』と『あんまん』……?」


 おっと、よく解っていないようだ。まあ、見た感じが似たようなものだから仕方ないか。


「ええと……『しょっぱいの』と『あまいの』。どれも美味しいわよ」

「……どれも美味しい…………!?」


 うーん、うーん……

 詳しく説明をすると、何故か余計に悩みだした王子様。
 どうやらどれも美味しいと聞いて、決めかねているようだ。好きなだけ悩ませてあげたいところだけど、このままでは他のお客さんとお店の迷惑になってしまう。


「……それとも、前みたいに『半分こ』する?」

「!! 半分こで!!!」




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