魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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334 王子とお花見 後編

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「温かくて、お得で、半分こは美味しいな!」

「ねー、やっぱ買ってすぐに食べると違うよねー」


 ――結局。選べない王子様のために、肉まんとあんまんを一つずつ購入した。お夕飯前ですからね。ピザまんはまた今度ってことで、今回は我慢。その他にも二人分のホットコーヒーを買うと、公園のベンチに移動した。そして、公園の水道で手を洗ってから、両方とも半分こに分ける。
 おっと、大きさに偏りが……仕方ない、特別に王子に大きい方をあげるとしましょうか。

 うん、冷えた手にホカホカの肉まん、あんまんが温かいですね。そんでもって、すごく美味しい! 寒い中飲むコーヒーも格別だし、なんてったって景色がキレイ!!

 はー……大・満・足!



 あっという間に食べ終えて。

 幸せな気分でコーヒー片手に桜を見上げていたら、いつの間にか食べかけのあんまんを待ったまま王子がこっちを向いて固まっていた。

 どうやら、肉まんの方は既に食べ終わったらしい。前に温泉饅頭やら、たい焼きやらを食べさせたことあるから、あんこは大丈夫だったはずだが……どうかしたのだろうか?


「王子、どうしたの? 早く食べないと冷めちゃうわよ。あー、もしかして苦手な味だった?」

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………〇〇△△△※□※いや、ちょっと熱かっただけで、凄く美味しいぞ!?」


 ……コレは、また魔法使って写真モドキを撮ってたな。誤魔化したって、魔力切れ起こしてホニャララ語になるからすぐ判る。

 ……まあ、こんだけキレイだから記憶に残したい王子の気持ちは解るけどね。周りの人達も、みんなスマホでパシャパシャ撮ってるし。


「召喚主が言った通りだな。肉まんもあんまんも、両方とも美味しかった。コーヒーもすごく美味しい!」

「うん。こうやって、外で食べると気分も違うよね」

「美味しいものがたくさんあって、コンビニはいいなー。ピザまんとやらも気になるし、是非また行きたい。しかし、召喚主はあの店の者とずいぶん親しいようだったが……?」

「ああ、だってあそこ私のバイト先だもの」


 そう。あのコンビニは私のバイト先。毎日のように目にしているので、ゲーム内での再現度が高いのは当たり前。

 近所にコンビニはたくさんあるけれど、だからこそこういうときに積極的にバイト先の売り上げに貢献をしなければ。

 店長さんいい人だし学業面にも理解があって、勤務時間とか試験時のシフトの調整とか色々融通をしてくれる学生にすごく優しい店だから、こういう働きやすい良心的なお店は長~く続いてもらわないと困ります。


「――え、召喚主のバイト先!? もっと早く言ってくれれば……『僕の召喚主がいつもお世話になっております』ってしっかり挨拶したのに……!」


 ……危なかった。速攻で私のバイト生活が終わるとこだった(社会的に)。




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