魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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341 偽王子(大)と深夜のジョギング

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「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………動きやすい……」

「でしょー。これなら汗も吸ってくれるから、安心して運動できるよね! それに、よく似合うわよ。すごくカッコいい」

「…………」


 せっかく新品を買うんだから――ってことで、購入するジャージの色やデザインにはこだわった。そのおかげか、偽王子(大)の髪や肌の色ともマッチしていて非常によく似合っている。

 王子(本物)にお下がりを着せておいて偽王子に新品なのはごめんなさいだけど、身体の大きさだけはどうしようもないからねえ……。それに、お下がりとはいえ王子のジャージも一応は未使用品だし。

 まあ、流石にコート類は古着だけど、王子は気にしていないみたいだから別にいいよね。ってか、逆に喜んでいる節すらあるのが不思議。
 王子ってば、なんであんなにウチのお兄ちゃんのことを気に入っているんだか……。



 そして、思った通り偽王子(大)とのダイエットは中々に快適だった。

 偽王子(大)の口数が少ないのは相変わらずだが、運動に一生懸命な分そこはまったく気にならないし。こちらから話しかければ無言ながらもしっかりと頷いて意思表示をしてくれる。そして、私がサボりそうになると無言でそっと圧をかけてくれるという有能ぶり。
 プロの影さんは、ダイエットのパーソナルトレーナーとしての腕も持ち合わせているようだ。

 ちなみに、ジョギングのコースについては確実な行動可能範囲……ってことで、近所の大きめの公園をグルグルと回ることにした。

 本当は飽きないようにあちこちコースを変えたいけど、行動可能範囲が本物と同じかどうか判らないし、この人の場合は口数が少なすぎて王子のようにホニャララ言語で判別することもできないので、念のためです。

 頼めば話してくれるのかもしれないけど、無理強いするのもちょっとね……。それに、下手にしゃべらせるとこの人情報漏洩してくる可能性あるし。
 偽王子(大)の漏らしてくる情報って、暗殺者始末しただだのなんだの、内容的に荒っぽいのが多いんですよ。

 そういったわけで、無言は無言でありがたい側面もあるのです。この辺は猫ちゃん化した偽王子(猫耳)と一緒ですね。モフモフ中は言葉も通じないし、ただ可愛いだけなので正義。


(――ま、行動可能範囲についてはそのうち偽王子(猫耳)をお散歩にでも連れ出して確認すれば……ああいや、ダメだ。そもそも偽王子全員が同じとも限らないし、ここは安全策でいこう。特に猫ちゃんは色々と規格外過ぎて参考にならないとこあるし。偽王子の召喚中にうっかり範囲外に出て、訳が分からぬまま何か月も召喚が止まったら、また王子が闇堕ちしかねない)


 そんなことをつらつらと考えている間に今日の分のジョギングも無事終了。順調に身体の方も軽くなっています。

 うん! 今日もいい汗かいた!!




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