魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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340 宴の後で

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 コンビニの中華まんを食べながら王子と一緒にプチお花見をして。
 お酒を飲みながらお花見のご馳走をお腹いっぱい食べて。

 それにプラスして、プチお花見を偽王子3人分。

 ――で、そんなことをしていたら太った。
 うん。まあ、当たり前っちゃ当たり前ですね。

 でも仕方ないじゃん? 桜が楽しめるのは今の時期だけなんだし、せっかくならお疲れの偽王子さん達にも満開のキレイな桜を見せてあげたいじゃないですか。

 そんでもって、どうせお花見をするなら少しくらい何か食べたい……じゃなくて、食べさせてあげたいし。これも彼らに日本文化を体験させてあげたいという、私の召喚主としてのおもてなし精神です。
 ちなみに、これとは別にシール狙いで菓子パンお夜食生活も続けていたわけですが……そちらについては完全に私の自業自得ですね。

 お気に入りのスカートがきつくなり、流石にこのままではまずいってことで、王子(本物)の夜の召喚を一時的に取りやめて、偽王子(大)を呼んで一緒にジョギングをすることにした。

 どうして偽王子(大)なのか――これについては完全に消去法です。

 王子と一緒だとおねだりに負けてついついお値引き品を求めて閉店間際のスーパーに行っちゃいそうだし、偽王子(猫)は喜んで運動に付き合ってくれそうだけど、気まぐれで飽きっぽいから途中でいなくなってそのまま迷い猫になっちゃいそうだし。そんでもって偽王子(腹黒)は運動が苦手な上に、機嫌を損ねると人気がない場所でサクッと消されそうな怖さがある。
 しかも、希少スキル持ちの腹黒さんの場合は口に出さなくても思っただけで詰みだからな。ギャルゲーやっている時はあんなに楽しそうなのに……なんて、うっかり考えちゃう時点でアウトです。とてもじゃないけど、そんな状態では運動に集中できる気がしない。

 その点、偽王子(大)は性格が穏やかだし、生真面目で体を動かすことも好きだから、一緒にダイエットするにはもってこいのお相手ですね!


 ――と、いうことで。
 まずは実家に戻ってお兄ちゃんのお下がり(※一番太っていた時のもの)を物色し、偽王子(大)用に洗い替えを含めて数枚のシャツを手に入れた。

 ……が、残念ながらジャージについては少々小さいようだ。お兄ちゃんとは手足の長さが違いすぎて、特にズボンなんかはつんつるてんになっちゃう。

 まあ、これについては仕方ない。王子も大概大きいけれど、偽王子(大)ってばそれよりも更に大きいし。悲しいことに、平均よりも小さめの私と並ぶと、まるで親子のような身長差。

 だけどその分、夜の運動の際にはいいボディーガードになってくれそうだ。私が悪い人だったら、こんな大きくて強そうな人は絶対に狙わないもの。
 何といっても暗殺者撃退しちゃうくらいの実力者だし、これほど頼りになる護衛はいない……ってか、そういや本職の方でしたね。暗殺――じゃなくて、護衛の方の……って、ああほら、やっぱ腹黒さんにしなくてよかった。完全にアウトでしたよ。危ない、危ない。

 そんなわけで、ダイエットに付き合ってもらうお礼代わりに、偽王子(大)用のジャージ上下を新品で購入。
 運動するなら動きやすい方がいいだろうし、私としても召喚時の黒ローブ+騎士服姿でご近所を連れまわすような度胸はない。かといってコートを着せて運動させるわけにもいかないので、これについては必要経費だ。

 もちろんサイズが大きい分それなりのお値段はしたけれど、それでもこのままブクブク太って自分のお洋服を全て買い直しになるよりはマシだと思う。背が小さいと、好みのお洋服を探すのも一苦労なんですよ。子供服コーナーでお気に入りを見つけることもあるけれど、たいてい色や模様が子供っぽくてね……って、いや子供服なのでそこは当然なのですが。

 何にしても懐に痛みを伴う分、真剣にダイエットに取り組める――ハズ!


 よーし、偽王子(大)と一緒に運動頑張るぞ!!




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