26 / 29
番外編
3 お引越し
しおりを挟むああ、もう。それにしてもこの子ったら魔力操作がへたっぴね。せっかく大・天・才! のお父様が偉大なお仕事の手を止めてまで教えてくださっているのに。座って見ているだけの私の方が先に覚えてしまったじゃないの。
どうやらお父様がお金に糸目をつけずに私を育ててくれたおかげで、私ってば魔力の扱いが上手いみたい。元々の素材が良いのね。
あらヤダ、そうなると我が家の財政状態は私のせいでもあるんだわ。
身体は動かせないけど魔力は少しだけ動かせるようになったので、私はちょっぴり手助けしつつ不器用な侍女の成長を見守った。
お父様の元へ戻されてから約一年後。私と旦那様と侍女は何となく見覚えがある大きな邸へと移り住んだ。
思っていたよりは質素な部屋だったけれど、それでも実家にあった侍女の部屋よりは広い。
そして毎日の過ごし方は変わらない。侍女は私の世話を焼き、丁寧に旦那様のマッサージをする。
変わったことと言えば、侍女の『公爵様に奥様が出来ていたらこんな風に私が奥様のお世話をするのかしら……。考えるとつらいけど、確実に雇ってもらうためには一通り何でも出来るようになっておかなくちゃ、練習、練習……』とブツブツ独り言を言いながら私の世話を焼くクセが直ったことくらいかしらね?
まあ、代わりに『傍に居られるだけで幸せなのに。私って贅沢ね……』って別の独り言が始まったけど。
この邸に来てからの侍女は他にも仕事があるようで、部屋を留守にすることが多い。そんな時、この侍女は必ず旦那様と私を隣同士に座らせてくれるから嬉しいわ。
色々と問題の多い侍女だけど、頑張っているのは見ていて分かるし、こういう気遣いはできる子だからなんとなく憎めない。
だから色々と応援しているんだけど……ね。
一つだけ、どうしても許せないことがある。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
562
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる