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1 番が見ている
しおりを挟むその視線に気が付いたのはいつ頃のことだっただろう。
焦がれるような。縋るような。睨みつけるような。
どこかから注がれる――番からのその視線。
正直、俺は番なんてものは迷信だと思っていた。
だって。男も、女も、星の数ほどいるんだぜ? それなのに、生まれながらに定められた運命の番だの、出会ったが最後ソイツだけ――だの。嘘くさいにもほどがあるだろ。
俺は自分の見た目はかなりいい方だと思っている。高い背も。鍛えられた肉体も。品よく整った顔も。猫獣人特有の薄くて繊細な耳も、素晴らしく滑らかな毛並みのしっぽも。
全ての要素が俺の姿を引き立ててくれる。
そう。俺は猫の獣人だ。
そして獣人ではあるが、その見た目の良さから獣人だけでなく人間からだってしょっちゅう告白される。いわゆるモテモテってやつだ。
だから女に困ったことはないし、生涯をたった一人に縛られるなんてバカみてえ。そんな風に思っていた。
なのに。
ある日、彼女の一人とのデート中にどこからかその視線を向けられた。正直、信じられなかった。急に体中が熱くなり、自分が興奮しているのが分かった。
最初は目の前の彼女に対してのソレだと思い、いつものように口づけを交わしてみたけれど、むしろ頭が冷えてちっとも気持ちが盛り上がらなかった。
そんな俺を見る視線に。激しい怒りのような、嫌悪のような――マイナスの感情が混じったのを感じ、俺は感情が高ぶった。
コレは、あれか。見ている相手が嫉妬をしているのか?
その事実に興奮して、ちっとも気持ちのこもらないその行為を続けていたら、俺達を捉えていた視線がいつの間にか消えた。
一瞬、とんでもない喪失感に襲われたが――短い時間のことだし何かの気のせいだったのだろうと思い、その日はそのままデートを楽しんだ。
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