【完結】そう、番だったら別れなさい

堀 和三盆

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6 豹変する番

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「ああ、やっぱりそうなったか。――で、僕の言う通りにしてくれた?」

「う…うん。ちゃんと『番かもしれない』って確定はしないような言い方で伝えたわ」

「うん。それなら大丈夫。僕の計画通りだ」


 お母様から頭ごなしに反対をされたことに取り乱して。
 居てもたってもいられず、つい獣化して彼の部屋まで訪れたらそう言われて驚いた。

 時間は既に夜。お風呂上がりだったのだろう、ファンゲンの髪は濡れて前髪が下にたれている。最近はやたら大人ぶって、横に分けたり後ろに流したりしていることが多いのに。

 そうやって昔ながらの髪型をしていると、子供の頃を思い出して安心する。ファンゲンは昔から頭が良いのだ。彼に任せておけば何の心配もない。


(ダメだな……。私も、もっと彼みたいに頭を使ってから行動するようにしないと)


 私は直感で行動したり発言してしまったりするから、ファンゲンみたいに落ち着いて物事を進めることが苦手だ。

 今だって私は何も考えずに獣化して窓から抜け出して来てしまったけれど、彼の屋敷の前まで来て途方に暮れてしまった。

 彼の屋敷を訪ねようにも、このまま獣化を解いたら素っ裸になってしまう。流石にオムツの頃から付き合いのあるご家族とはいえ、そんな姿は見せられない。

 仕方なく獣化したまま屋根に上がり、ダメ元で彼の部屋の窓から中を覗いてみたら、ちょうどお風呂から戻ってきたらしい彼と目が合った。彼は慌てて窓を開けて部屋の中に招き入れてくれて、肩からかけていたバスタオルで私を包んでくれた。それで、ようやく獣化を解くことが出来たのだ。

 種族が同じならば獣の姿のままでも会話ができるが、ファンゲンとは種族が違うので獣化を解かなくては話せない。
 人の形をとったことで、どうにか先ほどのお母様とのやり取りをファンゲンに伝えて――全てが計画通りだと言われて、私もようやく落ち着くことが出来た。

 彼が大丈夫と言えば大丈夫なのだ。子供の頃からずっとそうだったのだから。


「私、偽の恋人役を頼んだのがファンゲンで良かったわ……。貴方が本物の番だったおかげで自分の番に面倒な説明をする手間が省けたし、何より余計な情報で相手を傷つけないで済んだのだもの。それが一番嫌だったの。手近なところで手を打たずに、ちゃんと貴方に相談してよかった……」


 ピクリ……。


 私の発言で彼の纏う空気が突然変わった。

 私が来てからずっと余裕な態度ですました顔をしていたのに、急に獲物をいたぶる獣の表情になる。考え無しの私が、また何か余計なことを言ってしまったのだろうか。




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