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番外編 獣人学者は運命の番を許さない
13 幸せな暮らしの中で(カリス視点)
しおりを挟むクロワールとの結婚を周囲は喜んでくれた。獣人相手ということで心配してくる人も中にはいたけれど、そのうち何も言わなくなった。
とりわけ、一番仲のいいご近所さんにはカリスの気持ちはバレバレだったようだ。
「カリスちゃん、いっつもあの獣人学者さんのことばっか話していたもんねえ。アンタ、昔から猫好きだったし」
……そんな風に言われてしまった。
なるほど、とは思ったが、別にクロワールが犬獣人でも熊獣人でも結婚してました! と力説すれば、『あらあらそれは御馳走様!』と更にニヤニヤと笑われてしまった。
結婚してからは、二人は長く同じ部屋で過ごすようになった。
本を読むクロワールの横で、静かに編み物をする時間がカリスは大好きだ。落とした毛糸にじゃれつかれたときには笑ってしまった。
そんなカリスを見て、彼は拗ねて後ろを向いてしまったけれど、その隙に編みかけのセーターを背中に合わせて大きさを確かめれば、あっという間に機嫌を直して喜んでくれているのが分かった。可愛い尻尾がゆっくりと揺れているから。
寒がりの彼はカリスの編んだセーターを喜んでくれるだろうか。爪をひっかけてしまうかもしれないけれど、そうしたら直せばいいだけだ。
そうやってカリスは毎日幸せを感じていたけれど、クロワールは子供のことを気にしているみたいだった。
どうやら、獣人との間には子供ができづらいらしい。
カリスの母親がまだ生きていた頃、猫獣人の好物を調べようと手当たり次第に獣人に話しかけていた時に、その話は聞いたことがあった。
話しかけた獣人の中に人間と結婚をしていた人がいて、その人は配偶者との間に子供が授からずに別れたそうだ。獣人と人間との間に子供ができづらいことは、彼らのように他国で働いている獣人の間では知られていることなのだとか。
そのことがまったく気にならないと言えば嘘になる。
けれど、クロワールはカリスがいればいいと言ってくれたから、それで十分だった。カリスにとって、一番気になっていたのはそこだったから。
子供が授かれば嬉しいけれど、もし無理でもクロワールさえいてくれればそれでいい。
クロワールはカリスに希望を与えてくれた。
研究で母親を救ってくれて。
経済的にも精神的にも支えてくれて。
母を喪い、独りぼっちになったカリスの家族になってくれて。
そうやって何度も彼に救われたから、カリスは少しでもクロワールの役に立ちたかった。
だから家事も頑張ったし、夫が庭で育てている薬草の世話も手を抜かなかった。
ミミズや虫はいつまで経っても苦手だったけれど、クロワールの研究のためだと思えばそれも頑張れた。カリスには夫のような特別な知識はないけれど、植物の世話くらいなら手伝えたから。
好きな食べ物。好きな色。好きな洋服。
顔色。食欲。健康状態。
大好きな彼が気持ちよく過ごせるように、カリスはいつだって夫のことをよく見ていた。
だからこそ、カリスは夫のちょっとした変化にも気付いてしまったのだ。
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