もうやめましょう。あなたが愛しているのはその人です

堀 和三盆

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番外編 獣人学者は運命の番を許さない

33 引っ越し

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 リスペットとの間に生まれた子供がある程度成長をすると、近所でいじめに遭っていることが分かった。

 クロワールが住んでいるのは愛する妻との思い出が残るあの家だ。他に親戚のいなかったカリスの財産は夫であるクロワールに引き継がれ、リスペットとの再婚後もそのまま同じ家で暮らしていた。

 カリスの最期が最期だっただけに、小さな頃から彼女を可愛がってきた近所の人たちからは、家を乗っ取る形でそのまま住み着いたクロワールとその家族に対し、冷たい視線を注がれていたのだ。

 拒絶薬の研究に心血を注いでいたクロワールは気にしていなかったが、息子はそんな微妙な空気の中で育っていたらしい。

 リスペットとクロワールについては自業自得だが、何も知らずに生まれてきた我が子にまで嫌な思いをさせたくはない。悩んだ末、クロワールは思い出の残る家を手放して、子育てしやすそうな田舎町へと引っ越すことにした。


 田舎町で古い民家を買い取ったクロワールは、研究の傍らそこで近所の子供たちを集めて勉強を教えることにした。

 裕福に思えていた人間国でも田舎の方では子供が労働力として見られていて、勉強がしたいのにできない子供が大勢いることに気が付いたからだ。

 また、引っ越し先の町では医師が常駐していないのも問題になっていた。月に数回は巡回の医師が来るのだが、急ぎの場合は二つ先の大きな町まで行かなければならないのだ。

 クロワールたちのような回復力の高い獣人はそもそもあまり病院に行く機会もないのでまったく問題は無いが、人間の場合はそうもいかない。なので、体調を崩してもよほど重病でもない限りは、薬草などを使って各家で対処をしているそうだ。

 けれど、薬草から作られる薬は家ごとに配合が違うため、効果にはかなりのバラつきがあるらしい。クロワールが実際に見せてもらったところ、中には全く効果が見込めないどころか、材料自体に問題がある物まであった。

 クロワールが薬草を使った研究をしていることを知った近所の人から相談を受けて、症状に合わせた薬を提供したところそれが評判になり、近所のみならず近隣の町からも注文が入るようになってしまった。

 そうしてふと気が付けば、クロワールは学者先生と呼ばれるようになり、種族に関係なく家族は町に溶け込んでいた。




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