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番外編 獣人学者は運命の番を許さない
39 獣人国への里帰り(リスペット視点)
しおりを挟むそんな日々が数年続き、運命の番との間に何の進展もないままに、研究だけが順調に進んでいった。計画されていた両国の共同事業は実現の目途が立ち、あとは引き継ぎと細々とした手続きを残すのみで、それを終えたらリスペットは獣人国へ帰ることになっている。
この頃にはリスペットも運命の番から拒絶されていることをしっかり理解していた。
人間国に来てすぐの頃に所長から提示された条件を無視してクロワールに強引に迫ったりはしたが、それでも番との出会いを家族に知らせることについては避けていた。所長が危惧していた通り、番からリスペットへの扱いを母国にいる両親に知られたら、権力を使って仕事の邪魔をされかねないからだ。
リスペットとしても、大切な研究成果をつぶされないために、その事実を黙っている必要があった。
しかし、そのせいでリスペットには思わぬ事態が待っていた。今まで自由にさせてくれていた両親から、度々お見合いを勧められるようになったのだ。
仕事ばかりしていないで、いい加減に身を固めろということらしい。高位貴族は結婚が早いので、年齢を考えたら十分自由にさせてもらった方だと思う。これまで婚約者を決めずにいられただけでも奇跡に近い。
とにかく一度こちらへ帰ってくるようにと言われ、リスペットは仕方なく年末の長期休みを使って久々に獣人国へ帰ることにした。
そしてその道中で、リスペットは両親の願いには応えられないことを悟った。クロワールのいる人間国から離れれば離れるほど気持ちが落ち着かなくなり、胸が張り裂けそうな痛みで動けなくなってしまったのだ。
どうにか実家に辿り着いても、どこか上の空でため息ばかり。大好きな家族との再会で落ち着くどころか、クロワールが恋しくて堪らない。しかも、その思いは日に日に強くなる一方だ。
この調子では、誰かと結婚したところで相手をその身に受け入れることなど到底不可能だろう。リスペットの獣人としての本能がそれを強く拒絶しているのだ。
運命の番と出会ってしまった今、自分が普通の貴族令嬢としての義務を果たすことは難しい。運命の番と上手くいけばそれが一番よいのだが、これまでリスペットを拒絶し続けてきたクロワールが、今更妻を捨てて思いを受け入れてくれるとも思えない。
だとすれば、この先自分は運命の番を諦めた上で、仕事に生きるしかないだろう。
そう決意を固めたリスペットは、『どうか私の結婚は諦めてほしい』とだけ両親に告げて、当初の予定よりも早く獣人国を後にした。
運命の番を諦めて身を引く覚悟をしていたのだ。
――少なくとも、この時までは。
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