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25 世話役の正体
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そうして日常の世話をされる一方で、クアリフィカは男性の手で毎日様々なポーズを取らされた。どうやら長く寝込んでいた影響で身体が固まっていたらしい。
足を上げたり、下げたり、伸ばしたり。
腕を上げたり、下げたり、伸ばしたり。
貴族女性からすると少々はしたなく思えるような恰好もさせられたが、男に下の世話までされていることを思えば今更だ。
最初こそ男性のなすがままだったが、クアリフィカの身体は地道な運動のお陰で少しずつ元の機能を取り戻していった。
真っ暗だった部屋はクアリフィカの目が暗闇に慣れて相手の動きが分かるようになると、それに合わせるように少しずつ明るくなっていった。
もしかしたら部屋の明るさというよりも、クアリフィカの身体に残っていた毒の影響だったのかもしれない。
男性はクアリフィカの世話をしながら大まかな事情を教えてくれた。それにより、クアリフィカは自分の置かれている状況についてある程度は察しがついた。
男性は『王家の影』と言われる存在だった。
王家の影――クアリフィカもその存在については王妃教育の中で詳しく学んでいる。表で国を支配するのが王族ならば、その治世を裏で支えるのが王家の影だ。
国にとってはまさに光と影で、そのどちらが欠けても国は正しく機能しない。光の象徴である王族と言えど、常に正しい判断ができるとは限らないのだから。
それを正すために動くのが王家の影であり――その最たる例が、クアリフィカにも用いられたあの毒杯だ。
毒杯を管理しているのは王家の影であるとクアリフィカは国の機密事項として教わった。国王の他、彼らにもソレを使用する権利は与えられているのだ。
「――と、王妃教育を受けたお前が知っているのはこの辺りまでだな。そして、その王家の影はどうやって選ばれるのかだが」
「……私のように毒杯処分を受けて、表で生きることのできなくなった者達、なのですね。第一王子殿下」
「!!」
ぱちぱち。
元婚約者と同じ、王家の色を宿した目を瞬いて。
これまでクアリフィカの面倒を看てきた男が楽しそうに笑う。その表情まで元婚約者にそっくりだ。
もっとも、もう何年も婚約者のそんな笑顔はクアリフィカには向けられていないし、男性の髪の色も王太子のソレとは全く違うが。
足を上げたり、下げたり、伸ばしたり。
腕を上げたり、下げたり、伸ばしたり。
貴族女性からすると少々はしたなく思えるような恰好もさせられたが、男に下の世話までされていることを思えば今更だ。
最初こそ男性のなすがままだったが、クアリフィカの身体は地道な運動のお陰で少しずつ元の機能を取り戻していった。
真っ暗だった部屋はクアリフィカの目が暗闇に慣れて相手の動きが分かるようになると、それに合わせるように少しずつ明るくなっていった。
もしかしたら部屋の明るさというよりも、クアリフィカの身体に残っていた毒の影響だったのかもしれない。
男性はクアリフィカの世話をしながら大まかな事情を教えてくれた。それにより、クアリフィカは自分の置かれている状況についてある程度は察しがついた。
男性は『王家の影』と言われる存在だった。
王家の影――クアリフィカもその存在については王妃教育の中で詳しく学んでいる。表で国を支配するのが王族ならば、その治世を裏で支えるのが王家の影だ。
国にとってはまさに光と影で、そのどちらが欠けても国は正しく機能しない。光の象徴である王族と言えど、常に正しい判断ができるとは限らないのだから。
それを正すために動くのが王家の影であり――その最たる例が、クアリフィカにも用いられたあの毒杯だ。
毒杯を管理しているのは王家の影であるとクアリフィカは国の機密事項として教わった。国王の他、彼らにもソレを使用する権利は与えられているのだ。
「――と、王妃教育を受けたお前が知っているのはこの辺りまでだな。そして、その王家の影はどうやって選ばれるのかだが」
「……私のように毒杯処分を受けて、表で生きることのできなくなった者達、なのですね。第一王子殿下」
「!!」
ぱちぱち。
元婚約者と同じ、王家の色を宿した目を瞬いて。
これまでクアリフィカの面倒を看てきた男が楽しそうに笑う。その表情まで元婚約者にそっくりだ。
もっとも、もう何年も婚約者のそんな笑顔はクアリフィカには向けられていないし、男性の髪の色も王太子のソレとは全く違うが。
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