冥婚悲恋歌

堀 和三盆

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第二歌

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 簡素な式を挙げ――とはいっても、私にとっては素晴らしいものだった。こんなキレイな衣装が着られるだなんて。

 公爵家の娘とは言っても小国だし、あまり経済状態も良くない国だから、夜会なんかも滅多にないし、なんならカーテシーより鍬をふるっている方が多いくらいの令嬢だった。

 おそらく、メーコンの市民の方がよほど裕福なのではないかしら。祖国では働かなくては食べるものがないのは貴族も平民も同じ。と、いうより責任がある分だけ貴族の方が背負うものは重い。

 王太子殿下は相変わらずの口数だし、帰国後は何故か今まで以上に戸惑っているご様子だったから、流石に里帰りを延長したりして我が儘が過ぎたかしら、蔑ろにされてしまうのでは……と初夜は少し不安だったけど、殿下はとてもお優しかった。

 翌朝世話をしてくれたメイドや使用人の方々も良かったこれで……と目頭を押さえている。


 悪役令嬢になっても生活はあまり変わらない。


 教育が無くなった分、むしろ暇が増えたかしら? 殿下は相変わらず口数が少なかったけれど、その分なるべく私の方からたくさん話しかけるようにした。

 国と同じ花が咲いていたとか、この国のお菓子は美味しいとか、たいしたことはない話。

 その度に帰ってくるのはやはり「そうか」のひと言。

 でも、最近気が付いたわ。この「そうか」にもちゃんと喜怒哀楽があるのよ? びっくりよね。最初にお会いしたときは何の感情もこもらない「そうか」だったのに。

 長い里帰りを終え帰ってきた時は戸惑ったような「そうか」が返ってきたし、嬉しいことを報告したときは楽しそうに「そうか」と返ってくる。

 疲れていらっしゃるようだから肩をマッサージして差し上げたらガッチガチだったから「凝ってますわね」と言ったら不思議そうに「そうか?」とおっしゃっていた。
 うふふ、少しは仲良くなれたのかしら。

 そして、3カ月がたった頃。妊娠が分かった。


「そう……か…………」


 彼の感情は分からなかった。



 それでも喜んでくれているのだと思う。この国に来てからあまり出歩かないようにと言われていたけれど、少しでも王太子殿下と交流を持とうと執務室にお茶を持って行ったり、休憩にお誘いしたり。

 これまではそんな風に私から行動することが多かったけれど、妊娠が分かってからは彼がこまめに部屋まで様子を見に来てくれるようになった。


 今日は調子がいいようです。
 少し動いたような気がします。


 そんな報告を嬉しそうな「そうか」で聞いてくれる。侍医によると、お腹の子供はとても順調らしい。時期的に、初めての夜に授かった子だという。

 無事に役目を果たせたことが嬉しかった。その言葉には、なぜか少し悲し気な「そうか」が返ってきた。理由は分からない。


 王太子殿下が毎日様子を見にやってきてくださるようになって。ずっと堅かった表情が少し柔らかくなったな、と感じられるようになったころ。


 冥妃様が歪んだという噂が立った。




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