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二人
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「もう部屋に帰るのか?」
彼女が床に脱ぎ捨てられたシャツを手に取ったのを見て訊ねた。
「結構時間たってるから…」
彼女はそう答えた。
いつものように男装を整えて、何事も無かったように振る舞う。
襟の高い服が、白い肌の首元に光る首飾りを隠した。
「何?」と男に戻った彼女が笑った。
「来て」と私がベッドで彼女を呼ぶと、彼女は苦笑しながらベッドに歩み寄って手を着いた。
「なんだよ?」
「首飾り…着けてるのを見たい」
「なんだよ?
あたしには首輪でも着けた気でいるのか?」
「そうかもしれないな」
「じゃあ、あたしはあんたに唾付けておくよ」
彼女はそう言って私に唇を重ねた。
五回を過ぎた時から数えるのをやめた。
彼女は口付けが好きなようだった…
愛し合ってる最中もずっと求めて、敬称抜きで私の名を呼んだ。
そんな姿が愛らしくて、綺麗で、ずっと見ていたかった…
「愛してる」という言葉が自然に溢れた。
「ありがとう、殿下」
彼女は照れくさそうに答えた。
敬称に戻っていて距離を感じた。
「二人だけだ、名前だけでいい」
「やだよ、恥ずかしいじゃないか」
「それなら私もヒルダと呼ばない」
「ワガママだな、さすが王子様だ」と彼女は笑って、殿下と言わずに私の名前を呼んだ。
長い腕が伸びて、蔦のように私に絡まった。
「ねえ、イール…
フィーアに来てよ」
彼女は確かにそう言った。
声が少し震えている。
囁くように耳元で話す彼女の顔を確認することは出来なかった。
「あたしがあんたを大事にするから…
守ってやるから、一緒に来てよ…そしたら…」
「すまない、それは無理だ」
私はアーケイイックを捨てられない。
私の返答に彼女は言葉を飲み込んだ。
「…そうか…そうだよな…」
抱き締められたまま彼女の辛い声を聞いた。
彼女は腕を緩めたが、離れずに悲しそうな視線で私を見下ろしていた。
オリーブの瞳は月光を宿して物憂げに輝いている。
今度は私が彼女に確認する。
「フィーアに帰らなければいけないのか?」
「…ごめん」彼女は謝罪を口にした。
何としても引き止めたかった。
彼女を引き止めるためには彼女の誇りを満たすだけのものを用意しなければならない。
私が差し出せる最上のものを彼女に提案した。
「私の妻にならないか?」
「すごいな、高待遇だ」と彼女は笑った。
「《贈るなら最高の物を》だ。
君を手に入れるのに出し惜しむものなど無い。
君が失う以上のものを私は用意する。
ヒルダ、約束する」
「…あんた…やっぱりいい男だ…」
彼女はまたそう言った。
いい返事を聞けるかと期待したが、彼女の返事は「ごめん」という短いものだった。
「あたしはラーチシュタットの《盾の乙女》でヴェストファーレンだ。
あんたが惚れたのはそういう不器用な女だ…そうだろう?」
「…どうしてもか?」
「あんたと同じかそれ以上に譲れないよ。
せっかくの高待遇だが、遠慮させてもらうよ」
彼女はそう言って私の頬にそっと手のひらを添えた。
「好きだよ、イール…
やっと本当に惚れた男に抱かれた…
後悔なんてするもんか」
そう言って彼女はまたキスをした。
回数を重ねる毎に辛くなる。
彼女と離れがたくなる…
何か良い方法はないかと考えるが、どちらかが折れるしかない。
服の上から首飾りに触れた。
彼女は私の贈った品をちゃんと着けてくれている。
「…耳飾りも贈っていいか?」と訊ねた。
「目立つから」と彼女は難色を示したが、私はどうしても耳飾りが贈りたかった…
アイビス族の男性は、意中の相手に先ず腕輪か首飾りを贈る。
生涯を誓う時には、目に留まりやすい耳飾りを贈るのが習わしだ。
私達の両親もそうだった…
それが彼女に当てはまるものでは無いにしても、それを着けてくれるなら、彼女への想いが幾らか報われる気がした。
「何故そんなに耳飾りを勧めるんだ?」
「それは…」その質問に答えたら、ヒルダは要らないと拒否するだろうか?
答えない私に彼女は何か察したらしい。
「ははぁ」と勘ぐるように笑った。
「首飾りを見たエルフの姐さん達が、あたしには似合わないドレスを持ってきたのと関係あるのか?」
そういえばそんな話があったような…
彼女は探るように私の顔を覗き込んで、シャツのボタンを緩めた。
赤い魔石の首飾りが首元で煌めいた。
彼女はそれを長い指でなぞって見せた。
「イール、これの意味は何だ?ん?」
オリーブの瞳に促されて仕方なく答えた。
「…女性に、手造りの首飾りや腕輪を贈るのは《告白》だ」
「やっぱり訳ありか…
礼だとか言いながら卑怯じゃないか?
耳飾りはまた別なのか?」
ヒルダはまた踏み込んだ質問をした。
仕方なく頷くと、彼女は「意味は?」と訊ねた。
誤魔化そうかと思ったが、バレる気がして嘘を吐くのを諦めた。
「《永遠の誓い》だ」と答えると彼女は目を丸くしていた。
「本当に?」
公用語を使うのを忘れるくらい驚いていた。
ヒルダが慌てて身を引こうとしたので、逃げられないように腕を掴んで引き寄せた。
「嫌か?」
目を見て問うと、彼女は目を逸らした。
「王子のくせに、やり方がセコいよ」と言う彼女は赤くなった顔を手の甲で隠した。
その仕草が可愛い。
「君は《要塞》だから」と言って私は笑った。
「正面からじゃ無理だろう?
卑怯な手を使わないと落とせないじゃないか?」
「ズルいだろ?そんな大事なこと言わないなんて…」
「言ったら受け取ってたか?」と私が問いかけると彼女は押し黙った。
唇を噛み締める彼女の姿を見て笑ってしまう。
「耳飾りは贈る。
要らなければ捨てればいい」
「そんな勿体ないこと出来るかい」と彼女は耳まで赤くして、拗ねた顔で呟いた。
答えを聞いた気がした…
「じゃあ大切に身に着ける事だ。
世界に一つだけの逸品を贈るから」
私の想いは、耳飾りに託すことにした…
✩.*˚
イールがアーケイイックに手紙を持って戻って来てから一週間が過ぎた。
「今日は少し調子が良いから、散歩しても良いかな?」等と言うほどにヘイリーは回復していた。
「良いわよ、でも誰か必ず連れて行ってよ?」
マリーに簡単な条件を出されたヘイリーはご機嫌で、「ミツルが来てくれるよ」と僕を指名した。
アンバーに拉致された後、ひたすら音読して、不明単語を可能な限り噛み砕いて伝えた。
この世界に無い言葉や概念を伝えるのが大変だった。
僕だって専門用語までは分からない。
インターネットの便利さを改めて知った…
考え出した人ホントにすごいと思う。
マジでどっかにWiFi飛んでないかな…
大体の病気の性質と対処法みたいな情報は伝えた。
あとはアンバーとマリーが何とかしてくれるらしい。
「この治験用のホムンクルスは元気になったわ。
もう少しだけ様子を見てこの薬を使うか決めましょう」
「できるだけ服用しやすいものにして欲しいな」とヘイリーがマリーに頼んでいたが、マリーの薬は効果に比例して不味い事を僕も知っている。
「そんなの材料しだいよ」と彼女は言っていたが、材料は聞かない方が良いらしい。
一体何を使っているのやら…
前に、薬棚の引き出しから、カエルのミイラが出てきたこともあったな…
彼女自身薬を飲むことは無いし、飲食しないので味なんて二の次なのだ。
「そういえば義手の具合はどう?」
「悪くないな。
これなら肩もこらないし負担も少ない」
そう言って彼は右手を振って見せた。
アンバーの改良した義手は上手く馴染んだらしい。
「あとは、字が上手く書ければ最高だ」と彼は嬉しそうに笑った。
本物の手みたいな質感で、触っても義手とは思えない滑らかな触り心地だ。
ちゃんと爪も指紋もあるのが、アンバーのこだわりらしい。
彼は今、四作目を製作中だ。
やり出すととことんやるからな…
疲れ知らずで飲食不要、睡眠不要の身体は暇を持て余すらしく、彼は常に新しい事を探している。
「辛くなったらちゃんと外してよ。
お父様に義理立てしなくて良いんだから」とマリーが釘を刺す。
彼女はアンバーに対して手厳しい…
そんな彼女に「分かってるよ」と答えて、ヘイリーは年の離れた兄妹みたいに彼女の頭を優しく撫でた。
そして僕に「行こうか?」と声を掛けて
ゆっくりした足取りで部屋を後にした。
「調子良さそうだね」と声を掛けるとヘイリーは「ありがとう」と応えた。
「自分の足で歩けるのは気分がいい。
アーケイイックは空気がキレイだから散歩も清々しいよ」
「そんなに違う?」
「違うね。
私の居城があるシュタインシュタットは割と大きな街でね、交易の要所でもあるから人口も多い。
フィーア人は煙草好きだし、活気があるのはいいことだが、街には緑が少ない。
療養するなら、やっぱり緑の多い田舎がいい」
彼はそう言ってマリーの部屋の前に並ぶ鉢植えに視線を向けた。
貴重な薬草が植わった鉢植えは、所狭しと並んでいる。
「彼女には感謝しかない。
私の為に時間と労力を注いでくれた。
どんなお礼を用意すれば彼女に報いることが出来るかな?」
「彼女の薬で君が元気になったら、それだけで彼女は報われるよ」
「それじゃあ私だけが得するじゃないか?」
ヘイリーは申し訳なさそうだ。
でもそれが一番皆を喜ばせることだろう。
マリーはそのために頑張ってるんだから。
「君がアーケイイックに恩を感じるなら、アーケイイックにとってもいい事だと思うよ」
「君達は欲がないね」と彼は困ったように笑った。
「やっぱりエルフを送り返すのが一番良いみたいだ」と彼が言ったので、何故そんなことをしてるのか訊ねた。
「言い方が悪いが、アーケイイック王が一番食い付いた交渉材料だったからだ。
ヴェストファーレンが《燕》達に命じて各地で買い取ってきている」
「《燕》?」
「諜報役だ。
他国の情勢を探るように配置してるが、そういうのも彼らの任務だ。
アレン・サッチャーの家族を探してるのも彼らだ」
「あぁ、そういう人たちも居るんだ」
「まだ、探すのに手間取っているようだがね…
あぁ、でもオークランドの前副宰相の話は入ってきたよ」
「アドニスの伯父さんの事?」と訊くと、彼は頷いて言葉を続けた。
「メイヤー伯爵が暗殺したと公式発表だが、どうやら怪しいようだ。
アトラス侯とメイヤー伯は文官と武官ではあるが仲は悪くなかったと聞く。
メイヤー伯は武人として多数の武功を立てた人物で、アトラス侯も彼を重用していた。
彼にはアトラス侯に手を掛けるメリットがない」
「じゃあその人は関係ないってこと?」
「可能性は高いな。
メイヤー伯がアトラス侯を暗殺するのは、ヴェストファーレンが私を暗殺する様なものだ。
こんなタイミングですることではないな…
穏健派の中枢だったアトラス侯が邪魔になった誰かの仕業だ」
「穏健派?」
「アトラス侯は国内の安定を重視してたからね。
確かにオークランドも血を流しすぎていたし、カナル運河を挟んで前線が膠着状態だった。
五年前に停戦の働きかけをしてきたのは彼だ。
前線は一進一退で、お互いに落とし所を探してた状態だったから我々も停戦に応じた 。
ここ五年ほどは大きな衝突もなく、一部の小競り合い程度で済んでいる」
「…じゃあ、戦争するためにその人は暗殺されたってこと?」
そんな無茶苦茶な…
でもそれが本当なら、そこまでしてやらないといけない戦争ってなんなんだ?
アドニスの事を思うと怒りが込み上げた。
彼は何のために失い続けるんだ?
「分からないが、その可能性は十分にある。
オークランドは《勇者》を招き損なったし、《英雄》も失った…
戦争は失策の目眩しだ、彼らの常套手段さ」
「じゃあ、僕がオークランドに召喚されてたら…
アドニスの伯父さんは死なずに、戦争も回避出来たって事?」
僕の質問に、ヘイリーは「それは無い」と完全否定した。
「どちらにしてもオークランドは仕掛けてきたはずだ。
順番が変わっただけで、アーケイイックとフィーアに攻め込むのは時間の問題だった…
アーケイイックに攻め込むのを止めたのは、魔王を攻める手立てが一つ減ったからに過ぎない。
それに、アーケイイックを攻略するより、フィーアを攻略する方が得るものが大きいと考えたのだろう。
我が国は貿易で潤っているし、元々人が住んでいる場所だ。
農地もあれば、商業拠点も軍事拠点も港だってある。
人が住むための条件は整っている。
辺境の地で、一から森を切り開いて整地する事を考えれば、どちらが楽に儲かるか目に見えてる」
「そんなの欲張りだ!」
「人間は欲の生き物だ。
与えられたものだけで満足できる、君の方が珍しいんだよ」そう言って彼は笑った。
褒めてるのか貶してるのか…
「オークランドは先ずはフィーアを潰しに来る。
そして次に脅かされるのはアーケイイックだ…
アーケイイックには人間達がどうしても取り返さなければならないものがある」
ヘイリーは僕を見て「君だよ」と静かに憐れむように言った。
「君が望まなくても、君は《勇者》だからね」
「なんで僕なのか全く分からないよ」
もっと適任者いただろうに…
誰が選んだのか分からないが、僕は勇者として不適合者だ。
「私は結構いい人選だったと思うけどね」
「なんでさ?」
「君なら戦争を続けようと言わないだろう?
私達の世界に必要なのは、終わらせる勇気を持った《勇者》だ」
彼はそう言って、また「君だよ」と僕に言った。
「私達だけでは戦うことは止められない。
でも、それを止められるだけの人物が現れれば、振り上げた拳を納めよう。
だから君は君にできることをしたまえ。
期待しているよ」
ヘイリーはそう言って優しく僕の背中を叩いた。
彼は本当にそんなふうに思ってるのだろうか?
「買い被りすぎだ」と文句を言うと「《勇者》だろ?」と彼は笑った。
便利だな、《勇者》って言い回し…
僕はずっとそう言われ続けるのだろうか?
「なんだか《勇者》って損だ」
「侯爵だって損だよ、いっそ代わってみるかい?」とヘイリーが提案したが、それもまた嫌だ…
口数の減った僕を見て、ヘイリーは年上の兄弟のように僕を慰めた。
「大丈夫、悪いことばかりじゃないさ。
《勇者》だからできることもあるんだ。
君はもっと自分の権限を最大限に利用して、図太く生きるべきだ。
遠慮してたっていいことは無いよ。
ヴェストファーレンくらい図太くなれとは言わないが、少しくらい自信を持って《勇者》として振る舞いたまえ。
あの甘い王様だって、君が享受するだけの人間ではなく、《勇者》として成長することを期待してるはずだ」
そう言って言葉を締めくくった彼は、機嫌よさそうに笑って散歩を続けた。
陽の光の中、ゆっくりと無理せずに歩く。
良くおしゃべりするし、表情も明るい。
体調がいいのだろう。
いいことだが、僕にとっては一つだけ喜べないことがある。
元気になったら、彼は自分の責任を果たしに行く事になる。
弟を失ったあの場所に、弟と同じように向かうのだろう。
じゃあ、僕は?
すべきこともできることも、僕にはまだ分からないままだ…
✩.*˚
「…分かった、オリヴィエの隊を向かわせろ」
手紙を読んでルイに指示を出した。
「各部族にも警戒するように伝えるのも忘れないように…
略奪者の襲撃が集中している現状は看過できない。
国境付近の警備を強化するように急ぎアーシャ達に《報せ》を送れ」
「御意」と短く答えてルイが部屋を後にする。
未遂も含めて三日で五件も起きている。
最近大人しかっただけにこの数は明らかに異常だ。
「何が起きている?」
手紙に再び視線を戻して報告を確認した。
エルフの小さな集落と、獣人の集落が襲われた。
子供が数人連れて行かれたとあって心が傷んだ…
同時に略奪者への怒りが込み上げる。
鬼人族のアーシャと巨人族のダドリーを国境に配しているが、それでも侵入者を防ぐには限界はある。
まだ国境から出てないことを祈りつつ、イールの部屋に向かった。
望みは薄いが、彼の能力なら子供たちを取り返せる可能性があった。
部屋のドアをノックすると返事があった。
時間が惜しかったのでドアに手をかけて勝手に開いた。
「イール、頼みが…」と言いかけて部屋にイール以外の姿を見つけた。
スラリとした長身の彼女は私の姿を見て「おや?陛下?」と驚いたように声を上げた。
意外な組み合わせに驚いていると、イールが慌てた様子で細工用の作業台を片付けた。
「何用でしたでしょうか?」とイールが私に訊ねたが、私も訊くことがある。いまさっき発生した。
「何故彼女が居るんだ?」
私の質問に答えたのはヒルダだった。
明るく笑いながら細工台に手をついて悪びれた様子もない。
「ルイ殿下が相手してくれないからさ、暇だからイール殿下に相手してもらっていた。
器用なもんだな、すごい細工だ」
「あぁ、そうか」
一応女性だもんな…
宝飾品に興味があってもおかしくはないが、お預かりしてる娘さんが息子の部屋で二人きりで居ては些か問題だ…
彼女相手では何も無いだろうが感心しない。
後で注意しよう…
「それはそうと、イール頼みがある」
「何か問題でも?」
「略奪者だ。
国境寄りの集落でエルフと獣人の子供達を奪われた。
近くに転移魔法で送るからアヴァロム達に探させることは可能か?」
そう訊ねると彼は「はい」と答えた。
「長距離になるから不安定になるが、大丈夫か?」
その場で転移魔法を展開させる。
杖を手に取り、ローブを羽織ると彼は頼もしく頷いた。
「問題ありません。
後で帰りの飛竜を誰かに預けてください」
「運動不足なんだ、あたしも一枚噛ませておくれよ」
近所に散歩に行くような感覚で彼女は私にも言った。
「ヒルダ嬢、それは…」
「役に立つからさ。
それともイール殿下一人に行かすのかい?」
そう言って彼女はイールに視線を向けた。
「あたしが守ってやるよ。
王子には傷一つ無く帰してやる」
随分頼もしい言葉だ。
確かに彼女ならそれが可能だ。
「分った、気を付けて行くんだぞ」
「何かあれば《報せ》を飛ばします」と言ってイールは転移魔法の魔法陣を踏んだ。
黙ってヒルダに手を伸べる。
彼女もその手を取った。
親しげなその姿に引っかかるものを感じたが、そのまま魔法陣を起動させて二人を飛ばした。
二人が帰ってきたら、少し話し合いが必要かもしれない…
✩.*˚
「…驚いた」まさか陛下が…
ルイが忙しくて相手をして貰えなかったと、ヒルダが部屋に訪ねて来ていた所に出くわすなんてついてない。
転送された先の自分の位置を確認する。
鳥を飛ばして風景を確認した。
確かに国境近い。
上空から鳥の視線を借りる。
「アヴァロム、群れを全部出せ」
影に命令すると、影の中に潜んでいた狼たちが一斉に姿を見せた。
「…何頭飼ってるんだよ?」
ぞろぞろと大きさの不揃いな狼たちが影から出てくるのを見て、ヒルダが驚いたように訊ねた。
「全部で一つの群れだ。全部で四十二頭いるが、今連れてるのは半分だ。
残りも呼び寄せたらすぐに来てくれる」
「そんなに連れ回して魔力消費はどうなってるんだ?
ウィルはグレンデル一頭しか連れてないぞ」
「魔獣の性質にもよるが、彼ら自体は私の魔力をあまり奪わない。
影に取り憑くだけだ。
負担に思ったことは無い」
「ふーん…あんたって思ってた以上にすごいんだな。
やっぱりエルフで王子様なだけあるんだ」
「どういう意味だ?」
「やっぱりいい男ってことさ」
彼女はそう曖昧に言葉を濁して、アヴァロムの額を撫でた。
「で?どうすんの?こいつらが子供を探すのか?」
「そうだ。
十数キロ先の獲物だって見つけられる。
人間の匂いを捉えることなんて簡単だ」
そう答えてアヴァロムの背に乗った。
「獣人とエルフの子供の匂いを探せ、大人の人間が一緒のはずだ」
《御意》と短く応答すると群れが一斉に散った。
「ヒルダ、後ろに乗れ」
「狼潰れないか?」
「アヴァロムはそんなヤワじゃない」
アヴァロムの背から手を伸ばすと、彼女はその手を取って狼の背に乗った。
「狼に乗ったのは初めてだ」と彼女は珍しがっていた。
「感想は?」
「尻が痛くなりそうだ」と彼女らしい感想が笑いを誘う。
アヴァロムが動いていいか私に視線で問うた。
私が頷いたのを確認して彼は仲間を追いかけた。
鬱蒼とした木々をかき分けてアヴァロムが走る。
先に行った若い狼の遠吠えが聞こえた。
「匂いを見つけたみたいだ」とヒルダに教えると彼女は子供みたいにはしゃいだ。
「すごい、優秀だな!」
「足止めさせろ」
《御意》と再び短く応えて彼らは命令に従った。
狼の群れの連携は兵士のそれに似てる。
彼らは命令されるまま、略奪者に追いついて道を塞いだ。
アヴァロムが追いつく頃には、狼が略奪者の連れた猟犬をボロ切れのように扱っていた。
私があの犬が大嫌いなのを彼等は知っている。
「子供を返せ」
アヴァロムの背から略奪者を睥睨して告げた。
彼らは狼の群れに囲まれて子供を盾にしていた。
「来るな!子供を殺すぞ!」などとわかりやすい脅しを掛けてきた。
繋がれるように縛られた獣人の子供を見て怒りが溢れた。
昔見た光景が浮かぶ。
赤い炎に焦がされた小さな集落と、集められた怯えた女性と子供達…
「…人間なんて」
こいつらはどれだけ時間が経っても変わることがない。
どれだけ世代を経ても、私達を苦しめる…
子供の怯えた瞳が痛々しい…
あの子たちは私自身だ…
怒りに震える私の後ろで、急にヒルダがアヴァロムから降りた。
彼女は無言のままズカズカと略奪者に歩み寄った。
呆気にとられていると、彼女は子供を抱え込んでいた男の前に立った。
彼女の長身から見下ろされて、略奪者も子供も目を見開いて固まった。
「《金剛の拳》」
彼女は拳に防殼を纏うと、それをいきなり男の頭に振り下ろした。
顔面が潰れて、血を撒き散らしながら吹っ飛ぶ男。
その手から幼い子供が開放される。
吹っ飛ばされた男は地面に転がって動かなくなった。
一瞬の沈黙の後、その場に略奪者の悲鳴と子供の泣き声が溢れた。
「あたしの男に、不愉快なモン見せんじゃねえ!」
彼女の怒号に略奪者達が凍り付いた。
子供も荷物も捨てて逃げ出そうとする。
「男が逃げんじゃないよ!
《金剛の顎》!」
彼女の防殼が姿を変えて逃げる男達に迫った。
両手から伸びた竜の顎のような防殼は、逃げた男を左右から挟み込むように飲み込んだ。
狼たちが慌てて距離をとって逃げた。
尾を腹に巻き込んで珍しく怯えた様子を見せた。
最高硬度の防殼に潰された人間の身体は、葡萄酒の入った水袋のように潰れて動かなくなった。
その姿に、助けてもらったはずの子供達も鬼を見るような目で彼女を見ている。
「クソが!」苛立たしげに髪を掻き上げて彼女は彼らの死体を確認した。
動かない死体を蹴飛ばして彼女は私に振り向いて言った。
「イール!次に行くぞ!」
「子供は無事だ…」
「こいつらは無事だが、エルフの子供がいない!
別口だ!」
彼女に指摘されて子供たちを見た。
確かに獣人の子供しかいない。
ヒルダが緊迫感のある声で叫んだ。
彼女もまた焦っていた。
「すぐに狼達に探させな!
オークランド領に逃げられるぞ!」
✩.*˚
略奪者と子供を見たイールの背が震えていた。
悲しみと怒りが彼の背を通して伝わって来た。
「人間なんて」と呟く声を聞いて胸が傷んだ。
あいつはまだ人間を許しちゃいないんだ…
当然だ。
両親を殺されて、自分達も酷い目にあって、親友も失った…
許せるはずないよな…
その姿にあたしの方が怒りを爆発させた。
せめてあたしにできることは、イールの手を汚させない事と子供達を守る事くらいだ。
もうオークランドの血は溺れるほど浴びてきたから、こいつらが増えた程度どうってことは無い。
殺しは好きじゃないが、そんなことを言っていられるような状況じゃない。
あたしがやらなきゃイールの手が汚れる。
あんたは綺麗なままでいな。
醜いのはあたしが全部引き受けるから…
「イール、あんたはこの子達を守って他の奴らと合流しな!
あたしが他の子供を連れてきてやる!」
「でも、ヒルダ一人で…」
「案内さえあれば問題ない!
あんたは子供を守ってやんな」
あたしを見て子供たちは震えている。
そりゃそうだろ?怖いよな、こんな女…
また離れた所から狼の遠吠えが聞こえた。
イールの顔が強ばった。
「国境が近い」と彼が呟くのを聞いた。
「デカいの、あんたは早いだろ?案内しな!」
イールの一番大きな狼にそう言って背中に跨る。
狼は嫌がる様子はなかった。
ただ許可を求めるようにイールの方を見た。
「…気を付けて」とイールは一言絞り出すように言った。
エメラルドの瞳が心配そうに見上げている。
「ありがとう」と応えて狼の腹を軽く蹴った。
狼が合図を拾って、遠吠えがした方角に向かって走り出す。
森を走る速度は騎竜の比ではない。
でも結構揺れるし鞍がないから乗り心地はよろしくない…
なんなら腰が辛い…
でも借り物だし贅沢も言えないな…
狼は最短距離で仲間に追い付いた。
確かに国境はもう目と鼻の先だ。
オークランドの監視塔が見えるほど近い。
狼達に足止めを食らっている略奪者の中に、子供の姿があった。
猿轡を噛まされて、手枷をされた子供の耳は人のものより長く尖っていた。
女の子が二人捕まっていた。
男達に捕まって、狼達に囲まれすっかり怯えていた。
イールを連れてこなくて良かったと改めて思う。
「ご苦労」と狼に声をかけて背から降りた。
略奪者の視線があたしに向けられた。
「何だ貴様!人間か?」あたしの姿に男たちが誰何した。
「人間だよ」と応えてズカズカと歩み寄る。
こいつらはさっきのやつらとは様子が違っていた。
随分良い鎧を着てるやつが混ざってる。
「略奪者の割にいい鎧じゃないか?
魔法が付与された鎧か?」
あたしの問いかけに男は「そうだ」と応えた。
「俺達は略奪者じゃない、オークランドの傭兵だ」
「へぇ、オークランドの傭兵は、子供を攫うような仕事しかないのか?
クソみてえなお使いだ!反吐が出る!」
怒鳴りつけてやると傭兵と名乗った男はあたしを睨みつけた。
「随分デカい女だな!威勢はいいが、口も悪くて可愛げがない…
嫁の貰い手は無さそうだが、見世物くらいにはなりそうだ」
「あ?
あたしよりチビで弱いやつが何言ってんだ?
シメてやるからじっとしてろ!」
狼達が逃がさないように取り囲んでいる。
剣を抜いた男達と睨み合いが続いていた。
傭兵と名乗った男はあたしに向かって切りつけた。
防殼に阻まれた一太刀目は簡単に弾き返され、傷一つ無いあたしに男は目を丸くした。
「何だ貴様!」
「お前らオークランドの天敵だ!
《金剛の拳》!」
拳を握って拳の防殼を強化する。
あたしの拳が凶器に変わった。
「《筋力増強》、《速度上昇》、《硬度上昇》…」
自身に能力上昇の魔法をかけて準備を整えた。
目の前の敵はたかだか小隊程度だ。
先ずは子供達取り返さなくっちゃ話にならない。
一人目を躱して子供を連れていこうとしている奴に肉薄する。
「そのデカ女を止めろ!」と偉そうな奴が叫んだ。
「止めれるもんなら止めてみな!」
前に立ちはだかった男は迷わず戦斧を振り下ろした。
それでも人間の力だけで振り下ろされた戦斧は魔法も付与されてない。
あたしを止めるには役不足だ。
拳で受け止めて、戦斧と一緒に相手の顔面を叩き割った。
骨の砕ける音と金属のぶつかる様な音が重なって、肉塊が吹っ飛んだ。
そのまま二人目にも拳を振るった。
驚愕の表情が視界に入ったが、んな事どうでもいい。
怯んだ相手を拳で黙らせ、さらに前に滑り込む。
エルフの縄を握っていた奴を踏みつけて、縄を奪った。
子供は怯えた視線であたしを見上げてた。
失禁してガタガタ震えている。
「助けてやる、もうちょっとだけ我慢しな!」
言葉が通じるか分からなかったが、声をかけて子供を抱き上げた。
「《歪む盾》」
硬度は低いが、視覚を誤認させる目眩しの盾を展開させる。
繋がれてた縄を短剣で切り離し、猿轡を解いた。
手枷は外してる余裕はない。
子供さえ逃がせればいい。
狼を呼んだ。
「アヴァロム!こいつらをイールに届けろ!」
言ってる間にも矢を射掛けられた。
《歪む盾》が阻むが、本体が見つかるのも時間の問題だ。
これはただの目眩しにしかならない。
「行け!」と子供を乗せたアヴァロムの背を叩いた。
狼を森の奥に追い返して略奪者に向き直った。
「逃げられるぞ!」と狼の背に矢を射掛けようと弓を引いた男に、握っていた短剣を投げた。
唯一の得物だがこれが無くても問題ない。
真っ直ぐ飛んだ剣は男の身体に吸い込まれ、男の身体を近くの木に縫い付けて止まった。
「あんた達の相手はあたしだ。
こんな美人が相手してやるって言ってるのにガキのケツ追ってんじゃねぇよ!」
「何なんだお前は!」
「誰でも良いだろ?
別嬪さんとでも呼んでくれ。
それにしても人攫いなんて真似して…オークランドの傭兵ってのは仕事がないのか?」
「そういう依頼を受けたんだ、仕方あるまい」と良い鎧を着た隊長っぽい奴が偉そうに答えた。
「そんな趣味の悪い依頼受けるなんてプライドもクソもないな」と吐き捨ててやると相手は眉をひそめた。
「大物の依頼だ。
アーケイイックの貴重な種族や動植物に破格の値を付けられた。
エルフは一人につき一般流通額の三倍出すってさ」
「ほー…それは儲かるね」
親父殿の話じゃ、大人のエルフ一人で大きめの家が建つくらいの金が要るらしい。
子供はさらに高いとか…
三倍ともなれば遊んで暮らせるだけの金になるだろうよ。
胸糞悪い話だ…
イールの事が頭を過った。
あの綺麗な種族がこの世から消えるのは、こういう汚ぇ奴らのせいだ…
「やっぱりあんたらはここで死んでもらう」
そう言って拳を構えたあたしに相手は剣を抜いた。
他の奴らもつられて得物を構える。
「威勢のいい奴だ」
「料理も裁縫も苦手だが、元気と丈夫だけが 取り柄でね」と笑った。
傍から見たら、剣を持った相手に拳で立ち向かうなんて無謀だとバカにされるだろう。
でもこいつら相手にはこれで十分戦える。
「《金剛の鎧》《金剛の盾》」
全身に魔法の鎧を纏い、最硬度を誇る盾を具現化させた。
こうなったらトリスタンだってあたしを止められない。
全身魔装出来るやつなんてそうそういない。
こいつらだって初めて見たことだろう。
「格の違いってのを見せてやる。
お前らは見せしめだ」
おあつらえ向きにオークランドの監視塔まで見えている。
よく見とけ、オークランド!
お前らが手を出したのはこういう奴だ!
あたしは怒ってんだ!
✩.*˚
肉塊に変わった人間だったものを捨てた。
あたし以外周りには誰も居ない。
「ふぅ…」
ため息を一つ吐いて辺りを見回す。
久しぶりに人間相手に暴れた。
やり過ぎた感もあるが、この汚い肉の塊に同情する気は無い。
投げた短剣を回収して、死体の服で血を拭うと鞘に収めた。
あのチビ達が逃げきれたか確認したかったが、走り去った方向しか分からない。
「あー…迷子だわ」
ボヤいて足元に転がった隊長の死体を漁った。
身分証と依頼状を探す。
大事なもんだから絶対に身につけているはずだ。
アーケイイック王への手土産にするつもりだった。
「あー…やり過ぎたなぁ…これ読めるかな?」
依頼書と思われる羊皮紙の巻物が出てきたが、破損してるし血がべっとり付着してる。
身分証も似たようなもんだ。
「貰ってくよ、あんたはもう要らないだろ?」
死体に断ってその場を後にした。
監視塔から見える位置だ。
彼らを助けに来る奴らが居たら厄介だ。
さっさと森の中に退散した。
宛もなく歩いていると、藪の中からイールの黒い狼が顔を覗かせた。
小柄な奴だったが、あたしを少し離れたところから見て遠吠えで仲間に報せた。
怯えた様子であたしの顔をチラチラ見て、ついて来いといった様子で前を歩く。
耳が寝て、尻尾を巻き込んでトボトボ歩く様子に、「お前も貧乏くじだな」と笑った。
あたしに関わる奴はみんな貧乏くじだ。
遅かれ早かれ、そうなるのは目に見えていた。
そのうちあいつにも貧乏くじが回ってしまうかもしれない…
それはやだな…と思った。
しばらく森を進むとアヴァロムより一回り小さい狼が迎えに来た。
自分の背を何度も鼻先で指して乗るように指示するので背中を借りた。
乗せてもらってなんだけど、やっぱり乗りにくいな…
狼に連れていかれた先は、大木の上に家が並んでいる獣人の集落だった。
一部の家が燃やされて樹が倒れていた。
ここが襲われた場所か…
狼の背を降りると、身体中に刺青を入れた猫っぽい獣人があたしを見咎めた。
大人の男の獣人はあたしより背が高い。
手には厳つい棍棒を持っている。
「何者ダ?」彼はあたしにわかる言葉で口を訊いた。
「イール殿下の連れだ」と答えると彼は警戒を解いた。
「イール殿下は?」
「案内スル」と行って、彼は呪術のようなものを施された一番奥の大樹の元に案内してくれた。
樹の根元にエルフの少女を抱いた彼の姿を見て安心する。
あたしに気付いたイールは子供を預けて駆け寄ってきた。
「ヒルダ!無事か?」
「何ともないよ」と答えるあたしにイールは手を伸ばした。
それを見て慌てて伸びた手を拒否した。
今ハグしたら返り血で服が汚れる。
それに人目もある。
「今血塗れだから」
「怪我は?」とイールは心配してくれたが、あたしは傷一つ無い。
そういう可愛げのない女だ。
「何もないって、全部あたしのじゃないから…」
「本当に?」そう言いながらイールはまた手を伸ばしてくる。
「だから、汚れるって…」手が触れないように身体を引いた。
「そんなこと気にしない、君の方が大事だ」
「あんたね…」
真面目な顔してなんてこと言うんだい?
もうちょっと隠そうとか思わんのか?
一瞬怯んだあたしの隙をついて、彼の腕があたしを抱き寄せた。
「ああ!汚れるってば!」引き離そうかと思ったがあたしの手も汚れてる。
彼に触れるのに躊躇する。
「…もう…どうすんだよ…あんたまで汚れちまったじゃないか?」
あたしが汚い役を引き受けた意味が無いだろう…
「いい…ヒルダ、いいんだ…」
そう言ってイールはさらに強くあたしを抱いた。
震える声があたしに届く。
「…ありがとう」
「…うん」
「無事私の所に戻ってきてくれて、ありがとう…」
そんなことを言うから笑ってしまった。
「それって普通女が男に言うやつだ」
あぁ、可愛いやつだな…
彼の背に、乾いた血が張り付いた手を回した。
もう汚れちまったから遠慮しなくていいだろう?
「ただいま、イール」
愛してる…
あんたを守れてあたしは今幸せだ…
彼女が床に脱ぎ捨てられたシャツを手に取ったのを見て訊ねた。
「結構時間たってるから…」
彼女はそう答えた。
いつものように男装を整えて、何事も無かったように振る舞う。
襟の高い服が、白い肌の首元に光る首飾りを隠した。
「何?」と男に戻った彼女が笑った。
「来て」と私がベッドで彼女を呼ぶと、彼女は苦笑しながらベッドに歩み寄って手を着いた。
「なんだよ?」
「首飾り…着けてるのを見たい」
「なんだよ?
あたしには首輪でも着けた気でいるのか?」
「そうかもしれないな」
「じゃあ、あたしはあんたに唾付けておくよ」
彼女はそう言って私に唇を重ねた。
五回を過ぎた時から数えるのをやめた。
彼女は口付けが好きなようだった…
愛し合ってる最中もずっと求めて、敬称抜きで私の名を呼んだ。
そんな姿が愛らしくて、綺麗で、ずっと見ていたかった…
「愛してる」という言葉が自然に溢れた。
「ありがとう、殿下」
彼女は照れくさそうに答えた。
敬称に戻っていて距離を感じた。
「二人だけだ、名前だけでいい」
「やだよ、恥ずかしいじゃないか」
「それなら私もヒルダと呼ばない」
「ワガママだな、さすが王子様だ」と彼女は笑って、殿下と言わずに私の名前を呼んだ。
長い腕が伸びて、蔦のように私に絡まった。
「ねえ、イール…
フィーアに来てよ」
彼女は確かにそう言った。
声が少し震えている。
囁くように耳元で話す彼女の顔を確認することは出来なかった。
「あたしがあんたを大事にするから…
守ってやるから、一緒に来てよ…そしたら…」
「すまない、それは無理だ」
私はアーケイイックを捨てられない。
私の返答に彼女は言葉を飲み込んだ。
「…そうか…そうだよな…」
抱き締められたまま彼女の辛い声を聞いた。
彼女は腕を緩めたが、離れずに悲しそうな視線で私を見下ろしていた。
オリーブの瞳は月光を宿して物憂げに輝いている。
今度は私が彼女に確認する。
「フィーアに帰らなければいけないのか?」
「…ごめん」彼女は謝罪を口にした。
何としても引き止めたかった。
彼女を引き止めるためには彼女の誇りを満たすだけのものを用意しなければならない。
私が差し出せる最上のものを彼女に提案した。
「私の妻にならないか?」
「すごいな、高待遇だ」と彼女は笑った。
「《贈るなら最高の物を》だ。
君を手に入れるのに出し惜しむものなど無い。
君が失う以上のものを私は用意する。
ヒルダ、約束する」
「…あんた…やっぱりいい男だ…」
彼女はまたそう言った。
いい返事を聞けるかと期待したが、彼女の返事は「ごめん」という短いものだった。
「あたしはラーチシュタットの《盾の乙女》でヴェストファーレンだ。
あんたが惚れたのはそういう不器用な女だ…そうだろう?」
「…どうしてもか?」
「あんたと同じかそれ以上に譲れないよ。
せっかくの高待遇だが、遠慮させてもらうよ」
彼女はそう言って私の頬にそっと手のひらを添えた。
「好きだよ、イール…
やっと本当に惚れた男に抱かれた…
後悔なんてするもんか」
そう言って彼女はまたキスをした。
回数を重ねる毎に辛くなる。
彼女と離れがたくなる…
何か良い方法はないかと考えるが、どちらかが折れるしかない。
服の上から首飾りに触れた。
彼女は私の贈った品をちゃんと着けてくれている。
「…耳飾りも贈っていいか?」と訊ねた。
「目立つから」と彼女は難色を示したが、私はどうしても耳飾りが贈りたかった…
アイビス族の男性は、意中の相手に先ず腕輪か首飾りを贈る。
生涯を誓う時には、目に留まりやすい耳飾りを贈るのが習わしだ。
私達の両親もそうだった…
それが彼女に当てはまるものでは無いにしても、それを着けてくれるなら、彼女への想いが幾らか報われる気がした。
「何故そんなに耳飾りを勧めるんだ?」
「それは…」その質問に答えたら、ヒルダは要らないと拒否するだろうか?
答えない私に彼女は何か察したらしい。
「ははぁ」と勘ぐるように笑った。
「首飾りを見たエルフの姐さん達が、あたしには似合わないドレスを持ってきたのと関係あるのか?」
そういえばそんな話があったような…
彼女は探るように私の顔を覗き込んで、シャツのボタンを緩めた。
赤い魔石の首飾りが首元で煌めいた。
彼女はそれを長い指でなぞって見せた。
「イール、これの意味は何だ?ん?」
オリーブの瞳に促されて仕方なく答えた。
「…女性に、手造りの首飾りや腕輪を贈るのは《告白》だ」
「やっぱり訳ありか…
礼だとか言いながら卑怯じゃないか?
耳飾りはまた別なのか?」
ヒルダはまた踏み込んだ質問をした。
仕方なく頷くと、彼女は「意味は?」と訊ねた。
誤魔化そうかと思ったが、バレる気がして嘘を吐くのを諦めた。
「《永遠の誓い》だ」と答えると彼女は目を丸くしていた。
「本当に?」
公用語を使うのを忘れるくらい驚いていた。
ヒルダが慌てて身を引こうとしたので、逃げられないように腕を掴んで引き寄せた。
「嫌か?」
目を見て問うと、彼女は目を逸らした。
「王子のくせに、やり方がセコいよ」と言う彼女は赤くなった顔を手の甲で隠した。
その仕草が可愛い。
「君は《要塞》だから」と言って私は笑った。
「正面からじゃ無理だろう?
卑怯な手を使わないと落とせないじゃないか?」
「ズルいだろ?そんな大事なこと言わないなんて…」
「言ったら受け取ってたか?」と私が問いかけると彼女は押し黙った。
唇を噛み締める彼女の姿を見て笑ってしまう。
「耳飾りは贈る。
要らなければ捨てればいい」
「そんな勿体ないこと出来るかい」と彼女は耳まで赤くして、拗ねた顔で呟いた。
答えを聞いた気がした…
「じゃあ大切に身に着ける事だ。
世界に一つだけの逸品を贈るから」
私の想いは、耳飾りに託すことにした…
✩.*˚
イールがアーケイイックに手紙を持って戻って来てから一週間が過ぎた。
「今日は少し調子が良いから、散歩しても良いかな?」等と言うほどにヘイリーは回復していた。
「良いわよ、でも誰か必ず連れて行ってよ?」
マリーに簡単な条件を出されたヘイリーはご機嫌で、「ミツルが来てくれるよ」と僕を指名した。
アンバーに拉致された後、ひたすら音読して、不明単語を可能な限り噛み砕いて伝えた。
この世界に無い言葉や概念を伝えるのが大変だった。
僕だって専門用語までは分からない。
インターネットの便利さを改めて知った…
考え出した人ホントにすごいと思う。
マジでどっかにWiFi飛んでないかな…
大体の病気の性質と対処法みたいな情報は伝えた。
あとはアンバーとマリーが何とかしてくれるらしい。
「この治験用のホムンクルスは元気になったわ。
もう少しだけ様子を見てこの薬を使うか決めましょう」
「できるだけ服用しやすいものにして欲しいな」とヘイリーがマリーに頼んでいたが、マリーの薬は効果に比例して不味い事を僕も知っている。
「そんなの材料しだいよ」と彼女は言っていたが、材料は聞かない方が良いらしい。
一体何を使っているのやら…
前に、薬棚の引き出しから、カエルのミイラが出てきたこともあったな…
彼女自身薬を飲むことは無いし、飲食しないので味なんて二の次なのだ。
「そういえば義手の具合はどう?」
「悪くないな。
これなら肩もこらないし負担も少ない」
そう言って彼は右手を振って見せた。
アンバーの改良した義手は上手く馴染んだらしい。
「あとは、字が上手く書ければ最高だ」と彼は嬉しそうに笑った。
本物の手みたいな質感で、触っても義手とは思えない滑らかな触り心地だ。
ちゃんと爪も指紋もあるのが、アンバーのこだわりらしい。
彼は今、四作目を製作中だ。
やり出すととことんやるからな…
疲れ知らずで飲食不要、睡眠不要の身体は暇を持て余すらしく、彼は常に新しい事を探している。
「辛くなったらちゃんと外してよ。
お父様に義理立てしなくて良いんだから」とマリーが釘を刺す。
彼女はアンバーに対して手厳しい…
そんな彼女に「分かってるよ」と答えて、ヘイリーは年の離れた兄妹みたいに彼女の頭を優しく撫でた。
そして僕に「行こうか?」と声を掛けて
ゆっくりした足取りで部屋を後にした。
「調子良さそうだね」と声を掛けるとヘイリーは「ありがとう」と応えた。
「自分の足で歩けるのは気分がいい。
アーケイイックは空気がキレイだから散歩も清々しいよ」
「そんなに違う?」
「違うね。
私の居城があるシュタインシュタットは割と大きな街でね、交易の要所でもあるから人口も多い。
フィーア人は煙草好きだし、活気があるのはいいことだが、街には緑が少ない。
療養するなら、やっぱり緑の多い田舎がいい」
彼はそう言ってマリーの部屋の前に並ぶ鉢植えに視線を向けた。
貴重な薬草が植わった鉢植えは、所狭しと並んでいる。
「彼女には感謝しかない。
私の為に時間と労力を注いでくれた。
どんなお礼を用意すれば彼女に報いることが出来るかな?」
「彼女の薬で君が元気になったら、それだけで彼女は報われるよ」
「それじゃあ私だけが得するじゃないか?」
ヘイリーは申し訳なさそうだ。
でもそれが一番皆を喜ばせることだろう。
マリーはそのために頑張ってるんだから。
「君がアーケイイックに恩を感じるなら、アーケイイックにとってもいい事だと思うよ」
「君達は欲がないね」と彼は困ったように笑った。
「やっぱりエルフを送り返すのが一番良いみたいだ」と彼が言ったので、何故そんなことをしてるのか訊ねた。
「言い方が悪いが、アーケイイック王が一番食い付いた交渉材料だったからだ。
ヴェストファーレンが《燕》達に命じて各地で買い取ってきている」
「《燕》?」
「諜報役だ。
他国の情勢を探るように配置してるが、そういうのも彼らの任務だ。
アレン・サッチャーの家族を探してるのも彼らだ」
「あぁ、そういう人たちも居るんだ」
「まだ、探すのに手間取っているようだがね…
あぁ、でもオークランドの前副宰相の話は入ってきたよ」
「アドニスの伯父さんの事?」と訊くと、彼は頷いて言葉を続けた。
「メイヤー伯爵が暗殺したと公式発表だが、どうやら怪しいようだ。
アトラス侯とメイヤー伯は文官と武官ではあるが仲は悪くなかったと聞く。
メイヤー伯は武人として多数の武功を立てた人物で、アトラス侯も彼を重用していた。
彼にはアトラス侯に手を掛けるメリットがない」
「じゃあその人は関係ないってこと?」
「可能性は高いな。
メイヤー伯がアトラス侯を暗殺するのは、ヴェストファーレンが私を暗殺する様なものだ。
こんなタイミングですることではないな…
穏健派の中枢だったアトラス侯が邪魔になった誰かの仕業だ」
「穏健派?」
「アトラス侯は国内の安定を重視してたからね。
確かにオークランドも血を流しすぎていたし、カナル運河を挟んで前線が膠着状態だった。
五年前に停戦の働きかけをしてきたのは彼だ。
前線は一進一退で、お互いに落とし所を探してた状態だったから我々も停戦に応じた 。
ここ五年ほどは大きな衝突もなく、一部の小競り合い程度で済んでいる」
「…じゃあ、戦争するためにその人は暗殺されたってこと?」
そんな無茶苦茶な…
でもそれが本当なら、そこまでしてやらないといけない戦争ってなんなんだ?
アドニスの事を思うと怒りが込み上げた。
彼は何のために失い続けるんだ?
「分からないが、その可能性は十分にある。
オークランドは《勇者》を招き損なったし、《英雄》も失った…
戦争は失策の目眩しだ、彼らの常套手段さ」
「じゃあ、僕がオークランドに召喚されてたら…
アドニスの伯父さんは死なずに、戦争も回避出来たって事?」
僕の質問に、ヘイリーは「それは無い」と完全否定した。
「どちらにしてもオークランドは仕掛けてきたはずだ。
順番が変わっただけで、アーケイイックとフィーアに攻め込むのは時間の問題だった…
アーケイイックに攻め込むのを止めたのは、魔王を攻める手立てが一つ減ったからに過ぎない。
それに、アーケイイックを攻略するより、フィーアを攻略する方が得るものが大きいと考えたのだろう。
我が国は貿易で潤っているし、元々人が住んでいる場所だ。
農地もあれば、商業拠点も軍事拠点も港だってある。
人が住むための条件は整っている。
辺境の地で、一から森を切り開いて整地する事を考えれば、どちらが楽に儲かるか目に見えてる」
「そんなの欲張りだ!」
「人間は欲の生き物だ。
与えられたものだけで満足できる、君の方が珍しいんだよ」そう言って彼は笑った。
褒めてるのか貶してるのか…
「オークランドは先ずはフィーアを潰しに来る。
そして次に脅かされるのはアーケイイックだ…
アーケイイックには人間達がどうしても取り返さなければならないものがある」
ヘイリーは僕を見て「君だよ」と静かに憐れむように言った。
「君が望まなくても、君は《勇者》だからね」
「なんで僕なのか全く分からないよ」
もっと適任者いただろうに…
誰が選んだのか分からないが、僕は勇者として不適合者だ。
「私は結構いい人選だったと思うけどね」
「なんでさ?」
「君なら戦争を続けようと言わないだろう?
私達の世界に必要なのは、終わらせる勇気を持った《勇者》だ」
彼はそう言って、また「君だよ」と僕に言った。
「私達だけでは戦うことは止められない。
でも、それを止められるだけの人物が現れれば、振り上げた拳を納めよう。
だから君は君にできることをしたまえ。
期待しているよ」
ヘイリーはそう言って優しく僕の背中を叩いた。
彼は本当にそんなふうに思ってるのだろうか?
「買い被りすぎだ」と文句を言うと「《勇者》だろ?」と彼は笑った。
便利だな、《勇者》って言い回し…
僕はずっとそう言われ続けるのだろうか?
「なんだか《勇者》って損だ」
「侯爵だって損だよ、いっそ代わってみるかい?」とヘイリーが提案したが、それもまた嫌だ…
口数の減った僕を見て、ヘイリーは年上の兄弟のように僕を慰めた。
「大丈夫、悪いことばかりじゃないさ。
《勇者》だからできることもあるんだ。
君はもっと自分の権限を最大限に利用して、図太く生きるべきだ。
遠慮してたっていいことは無いよ。
ヴェストファーレンくらい図太くなれとは言わないが、少しくらい自信を持って《勇者》として振る舞いたまえ。
あの甘い王様だって、君が享受するだけの人間ではなく、《勇者》として成長することを期待してるはずだ」
そう言って言葉を締めくくった彼は、機嫌よさそうに笑って散歩を続けた。
陽の光の中、ゆっくりと無理せずに歩く。
良くおしゃべりするし、表情も明るい。
体調がいいのだろう。
いいことだが、僕にとっては一つだけ喜べないことがある。
元気になったら、彼は自分の責任を果たしに行く事になる。
弟を失ったあの場所に、弟と同じように向かうのだろう。
じゃあ、僕は?
すべきこともできることも、僕にはまだ分からないままだ…
✩.*˚
「…分かった、オリヴィエの隊を向かわせろ」
手紙を読んでルイに指示を出した。
「各部族にも警戒するように伝えるのも忘れないように…
略奪者の襲撃が集中している現状は看過できない。
国境付近の警備を強化するように急ぎアーシャ達に《報せ》を送れ」
「御意」と短く答えてルイが部屋を後にする。
未遂も含めて三日で五件も起きている。
最近大人しかっただけにこの数は明らかに異常だ。
「何が起きている?」
手紙に再び視線を戻して報告を確認した。
エルフの小さな集落と、獣人の集落が襲われた。
子供が数人連れて行かれたとあって心が傷んだ…
同時に略奪者への怒りが込み上げる。
鬼人族のアーシャと巨人族のダドリーを国境に配しているが、それでも侵入者を防ぐには限界はある。
まだ国境から出てないことを祈りつつ、イールの部屋に向かった。
望みは薄いが、彼の能力なら子供たちを取り返せる可能性があった。
部屋のドアをノックすると返事があった。
時間が惜しかったのでドアに手をかけて勝手に開いた。
「イール、頼みが…」と言いかけて部屋にイール以外の姿を見つけた。
スラリとした長身の彼女は私の姿を見て「おや?陛下?」と驚いたように声を上げた。
意外な組み合わせに驚いていると、イールが慌てた様子で細工用の作業台を片付けた。
「何用でしたでしょうか?」とイールが私に訊ねたが、私も訊くことがある。いまさっき発生した。
「何故彼女が居るんだ?」
私の質問に答えたのはヒルダだった。
明るく笑いながら細工台に手をついて悪びれた様子もない。
「ルイ殿下が相手してくれないからさ、暇だからイール殿下に相手してもらっていた。
器用なもんだな、すごい細工だ」
「あぁ、そうか」
一応女性だもんな…
宝飾品に興味があってもおかしくはないが、お預かりしてる娘さんが息子の部屋で二人きりで居ては些か問題だ…
彼女相手では何も無いだろうが感心しない。
後で注意しよう…
「それはそうと、イール頼みがある」
「何か問題でも?」
「略奪者だ。
国境寄りの集落でエルフと獣人の子供達を奪われた。
近くに転移魔法で送るからアヴァロム達に探させることは可能か?」
そう訊ねると彼は「はい」と答えた。
「長距離になるから不安定になるが、大丈夫か?」
その場で転移魔法を展開させる。
杖を手に取り、ローブを羽織ると彼は頼もしく頷いた。
「問題ありません。
後で帰りの飛竜を誰かに預けてください」
「運動不足なんだ、あたしも一枚噛ませておくれよ」
近所に散歩に行くような感覚で彼女は私にも言った。
「ヒルダ嬢、それは…」
「役に立つからさ。
それともイール殿下一人に行かすのかい?」
そう言って彼女はイールに視線を向けた。
「あたしが守ってやるよ。
王子には傷一つ無く帰してやる」
随分頼もしい言葉だ。
確かに彼女ならそれが可能だ。
「分った、気を付けて行くんだぞ」
「何かあれば《報せ》を飛ばします」と言ってイールは転移魔法の魔法陣を踏んだ。
黙ってヒルダに手を伸べる。
彼女もその手を取った。
親しげなその姿に引っかかるものを感じたが、そのまま魔法陣を起動させて二人を飛ばした。
二人が帰ってきたら、少し話し合いが必要かもしれない…
✩.*˚
「…驚いた」まさか陛下が…
ルイが忙しくて相手をして貰えなかったと、ヒルダが部屋に訪ねて来ていた所に出くわすなんてついてない。
転送された先の自分の位置を確認する。
鳥を飛ばして風景を確認した。
確かに国境近い。
上空から鳥の視線を借りる。
「アヴァロム、群れを全部出せ」
影に命令すると、影の中に潜んでいた狼たちが一斉に姿を見せた。
「…何頭飼ってるんだよ?」
ぞろぞろと大きさの不揃いな狼たちが影から出てくるのを見て、ヒルダが驚いたように訊ねた。
「全部で一つの群れだ。全部で四十二頭いるが、今連れてるのは半分だ。
残りも呼び寄せたらすぐに来てくれる」
「そんなに連れ回して魔力消費はどうなってるんだ?
ウィルはグレンデル一頭しか連れてないぞ」
「魔獣の性質にもよるが、彼ら自体は私の魔力をあまり奪わない。
影に取り憑くだけだ。
負担に思ったことは無い」
「ふーん…あんたって思ってた以上にすごいんだな。
やっぱりエルフで王子様なだけあるんだ」
「どういう意味だ?」
「やっぱりいい男ってことさ」
彼女はそう曖昧に言葉を濁して、アヴァロムの額を撫でた。
「で?どうすんの?こいつらが子供を探すのか?」
「そうだ。
十数キロ先の獲物だって見つけられる。
人間の匂いを捉えることなんて簡単だ」
そう答えてアヴァロムの背に乗った。
「獣人とエルフの子供の匂いを探せ、大人の人間が一緒のはずだ」
《御意》と短く応答すると群れが一斉に散った。
「ヒルダ、後ろに乗れ」
「狼潰れないか?」
「アヴァロムはそんなヤワじゃない」
アヴァロムの背から手を伸ばすと、彼女はその手を取って狼の背に乗った。
「狼に乗ったのは初めてだ」と彼女は珍しがっていた。
「感想は?」
「尻が痛くなりそうだ」と彼女らしい感想が笑いを誘う。
アヴァロムが動いていいか私に視線で問うた。
私が頷いたのを確認して彼は仲間を追いかけた。
鬱蒼とした木々をかき分けてアヴァロムが走る。
先に行った若い狼の遠吠えが聞こえた。
「匂いを見つけたみたいだ」とヒルダに教えると彼女は子供みたいにはしゃいだ。
「すごい、優秀だな!」
「足止めさせろ」
《御意》と再び短く応えて彼らは命令に従った。
狼の群れの連携は兵士のそれに似てる。
彼らは命令されるまま、略奪者に追いついて道を塞いだ。
アヴァロムが追いつく頃には、狼が略奪者の連れた猟犬をボロ切れのように扱っていた。
私があの犬が大嫌いなのを彼等は知っている。
「子供を返せ」
アヴァロムの背から略奪者を睥睨して告げた。
彼らは狼の群れに囲まれて子供を盾にしていた。
「来るな!子供を殺すぞ!」などとわかりやすい脅しを掛けてきた。
繋がれるように縛られた獣人の子供を見て怒りが溢れた。
昔見た光景が浮かぶ。
赤い炎に焦がされた小さな集落と、集められた怯えた女性と子供達…
「…人間なんて」
こいつらはどれだけ時間が経っても変わることがない。
どれだけ世代を経ても、私達を苦しめる…
子供の怯えた瞳が痛々しい…
あの子たちは私自身だ…
怒りに震える私の後ろで、急にヒルダがアヴァロムから降りた。
彼女は無言のままズカズカと略奪者に歩み寄った。
呆気にとられていると、彼女は子供を抱え込んでいた男の前に立った。
彼女の長身から見下ろされて、略奪者も子供も目を見開いて固まった。
「《金剛の拳》」
彼女は拳に防殼を纏うと、それをいきなり男の頭に振り下ろした。
顔面が潰れて、血を撒き散らしながら吹っ飛ぶ男。
その手から幼い子供が開放される。
吹っ飛ばされた男は地面に転がって動かなくなった。
一瞬の沈黙の後、その場に略奪者の悲鳴と子供の泣き声が溢れた。
「あたしの男に、不愉快なモン見せんじゃねえ!」
彼女の怒号に略奪者達が凍り付いた。
子供も荷物も捨てて逃げ出そうとする。
「男が逃げんじゃないよ!
《金剛の顎》!」
彼女の防殼が姿を変えて逃げる男達に迫った。
両手から伸びた竜の顎のような防殼は、逃げた男を左右から挟み込むように飲み込んだ。
狼たちが慌てて距離をとって逃げた。
尾を腹に巻き込んで珍しく怯えた様子を見せた。
最高硬度の防殼に潰された人間の身体は、葡萄酒の入った水袋のように潰れて動かなくなった。
その姿に、助けてもらったはずの子供達も鬼を見るような目で彼女を見ている。
「クソが!」苛立たしげに髪を掻き上げて彼女は彼らの死体を確認した。
動かない死体を蹴飛ばして彼女は私に振り向いて言った。
「イール!次に行くぞ!」
「子供は無事だ…」
「こいつらは無事だが、エルフの子供がいない!
別口だ!」
彼女に指摘されて子供たちを見た。
確かに獣人の子供しかいない。
ヒルダが緊迫感のある声で叫んだ。
彼女もまた焦っていた。
「すぐに狼達に探させな!
オークランド領に逃げられるぞ!」
✩.*˚
略奪者と子供を見たイールの背が震えていた。
悲しみと怒りが彼の背を通して伝わって来た。
「人間なんて」と呟く声を聞いて胸が傷んだ。
あいつはまだ人間を許しちゃいないんだ…
当然だ。
両親を殺されて、自分達も酷い目にあって、親友も失った…
許せるはずないよな…
その姿にあたしの方が怒りを爆発させた。
せめてあたしにできることは、イールの手を汚させない事と子供達を守る事くらいだ。
もうオークランドの血は溺れるほど浴びてきたから、こいつらが増えた程度どうってことは無い。
殺しは好きじゃないが、そんなことを言っていられるような状況じゃない。
あたしがやらなきゃイールの手が汚れる。
あんたは綺麗なままでいな。
醜いのはあたしが全部引き受けるから…
「イール、あんたはこの子達を守って他の奴らと合流しな!
あたしが他の子供を連れてきてやる!」
「でも、ヒルダ一人で…」
「案内さえあれば問題ない!
あんたは子供を守ってやんな」
あたしを見て子供たちは震えている。
そりゃそうだろ?怖いよな、こんな女…
また離れた所から狼の遠吠えが聞こえた。
イールの顔が強ばった。
「国境が近い」と彼が呟くのを聞いた。
「デカいの、あんたは早いだろ?案内しな!」
イールの一番大きな狼にそう言って背中に跨る。
狼は嫌がる様子はなかった。
ただ許可を求めるようにイールの方を見た。
「…気を付けて」とイールは一言絞り出すように言った。
エメラルドの瞳が心配そうに見上げている。
「ありがとう」と応えて狼の腹を軽く蹴った。
狼が合図を拾って、遠吠えがした方角に向かって走り出す。
森を走る速度は騎竜の比ではない。
でも結構揺れるし鞍がないから乗り心地はよろしくない…
なんなら腰が辛い…
でも借り物だし贅沢も言えないな…
狼は最短距離で仲間に追い付いた。
確かに国境はもう目と鼻の先だ。
オークランドの監視塔が見えるほど近い。
狼達に足止めを食らっている略奪者の中に、子供の姿があった。
猿轡を噛まされて、手枷をされた子供の耳は人のものより長く尖っていた。
女の子が二人捕まっていた。
男達に捕まって、狼達に囲まれすっかり怯えていた。
イールを連れてこなくて良かったと改めて思う。
「ご苦労」と狼に声をかけて背から降りた。
略奪者の視線があたしに向けられた。
「何だ貴様!人間か?」あたしの姿に男たちが誰何した。
「人間だよ」と応えてズカズカと歩み寄る。
こいつらはさっきのやつらとは様子が違っていた。
随分良い鎧を着てるやつが混ざってる。
「略奪者の割にいい鎧じゃないか?
魔法が付与された鎧か?」
あたしの問いかけに男は「そうだ」と応えた。
「俺達は略奪者じゃない、オークランドの傭兵だ」
「へぇ、オークランドの傭兵は、子供を攫うような仕事しかないのか?
クソみてえなお使いだ!反吐が出る!」
怒鳴りつけてやると傭兵と名乗った男はあたしを睨みつけた。
「随分デカい女だな!威勢はいいが、口も悪くて可愛げがない…
嫁の貰い手は無さそうだが、見世物くらいにはなりそうだ」
「あ?
あたしよりチビで弱いやつが何言ってんだ?
シメてやるからじっとしてろ!」
狼達が逃がさないように取り囲んでいる。
剣を抜いた男達と睨み合いが続いていた。
傭兵と名乗った男はあたしに向かって切りつけた。
防殼に阻まれた一太刀目は簡単に弾き返され、傷一つ無いあたしに男は目を丸くした。
「何だ貴様!」
「お前らオークランドの天敵だ!
《金剛の拳》!」
拳を握って拳の防殼を強化する。
あたしの拳が凶器に変わった。
「《筋力増強》、《速度上昇》、《硬度上昇》…」
自身に能力上昇の魔法をかけて準備を整えた。
目の前の敵はたかだか小隊程度だ。
先ずは子供達取り返さなくっちゃ話にならない。
一人目を躱して子供を連れていこうとしている奴に肉薄する。
「そのデカ女を止めろ!」と偉そうな奴が叫んだ。
「止めれるもんなら止めてみな!」
前に立ちはだかった男は迷わず戦斧を振り下ろした。
それでも人間の力だけで振り下ろされた戦斧は魔法も付与されてない。
あたしを止めるには役不足だ。
拳で受け止めて、戦斧と一緒に相手の顔面を叩き割った。
骨の砕ける音と金属のぶつかる様な音が重なって、肉塊が吹っ飛んだ。
そのまま二人目にも拳を振るった。
驚愕の表情が視界に入ったが、んな事どうでもいい。
怯んだ相手を拳で黙らせ、さらに前に滑り込む。
エルフの縄を握っていた奴を踏みつけて、縄を奪った。
子供は怯えた視線であたしを見上げてた。
失禁してガタガタ震えている。
「助けてやる、もうちょっとだけ我慢しな!」
言葉が通じるか分からなかったが、声をかけて子供を抱き上げた。
「《歪む盾》」
硬度は低いが、視覚を誤認させる目眩しの盾を展開させる。
繋がれてた縄を短剣で切り離し、猿轡を解いた。
手枷は外してる余裕はない。
子供さえ逃がせればいい。
狼を呼んだ。
「アヴァロム!こいつらをイールに届けろ!」
言ってる間にも矢を射掛けられた。
《歪む盾》が阻むが、本体が見つかるのも時間の問題だ。
これはただの目眩しにしかならない。
「行け!」と子供を乗せたアヴァロムの背を叩いた。
狼を森の奥に追い返して略奪者に向き直った。
「逃げられるぞ!」と狼の背に矢を射掛けようと弓を引いた男に、握っていた短剣を投げた。
唯一の得物だがこれが無くても問題ない。
真っ直ぐ飛んだ剣は男の身体に吸い込まれ、男の身体を近くの木に縫い付けて止まった。
「あんた達の相手はあたしだ。
こんな美人が相手してやるって言ってるのにガキのケツ追ってんじゃねぇよ!」
「何なんだお前は!」
「誰でも良いだろ?
別嬪さんとでも呼んでくれ。
それにしても人攫いなんて真似して…オークランドの傭兵ってのは仕事がないのか?」
「そういう依頼を受けたんだ、仕方あるまい」と良い鎧を着た隊長っぽい奴が偉そうに答えた。
「そんな趣味の悪い依頼受けるなんてプライドもクソもないな」と吐き捨ててやると相手は眉をひそめた。
「大物の依頼だ。
アーケイイックの貴重な種族や動植物に破格の値を付けられた。
エルフは一人につき一般流通額の三倍出すってさ」
「ほー…それは儲かるね」
親父殿の話じゃ、大人のエルフ一人で大きめの家が建つくらいの金が要るらしい。
子供はさらに高いとか…
三倍ともなれば遊んで暮らせるだけの金になるだろうよ。
胸糞悪い話だ…
イールの事が頭を過った。
あの綺麗な種族がこの世から消えるのは、こういう汚ぇ奴らのせいだ…
「やっぱりあんたらはここで死んでもらう」
そう言って拳を構えたあたしに相手は剣を抜いた。
他の奴らもつられて得物を構える。
「威勢のいい奴だ」
「料理も裁縫も苦手だが、元気と丈夫だけが 取り柄でね」と笑った。
傍から見たら、剣を持った相手に拳で立ち向かうなんて無謀だとバカにされるだろう。
でもこいつら相手にはこれで十分戦える。
「《金剛の鎧》《金剛の盾》」
全身に魔法の鎧を纏い、最硬度を誇る盾を具現化させた。
こうなったらトリスタンだってあたしを止められない。
全身魔装出来るやつなんてそうそういない。
こいつらだって初めて見たことだろう。
「格の違いってのを見せてやる。
お前らは見せしめだ」
おあつらえ向きにオークランドの監視塔まで見えている。
よく見とけ、オークランド!
お前らが手を出したのはこういう奴だ!
あたしは怒ってんだ!
✩.*˚
肉塊に変わった人間だったものを捨てた。
あたし以外周りには誰も居ない。
「ふぅ…」
ため息を一つ吐いて辺りを見回す。
久しぶりに人間相手に暴れた。
やり過ぎた感もあるが、この汚い肉の塊に同情する気は無い。
投げた短剣を回収して、死体の服で血を拭うと鞘に収めた。
あのチビ達が逃げきれたか確認したかったが、走り去った方向しか分からない。
「あー…迷子だわ」
ボヤいて足元に転がった隊長の死体を漁った。
身分証と依頼状を探す。
大事なもんだから絶対に身につけているはずだ。
アーケイイック王への手土産にするつもりだった。
「あー…やり過ぎたなぁ…これ読めるかな?」
依頼書と思われる羊皮紙の巻物が出てきたが、破損してるし血がべっとり付着してる。
身分証も似たようなもんだ。
「貰ってくよ、あんたはもう要らないだろ?」
死体に断ってその場を後にした。
監視塔から見える位置だ。
彼らを助けに来る奴らが居たら厄介だ。
さっさと森の中に退散した。
宛もなく歩いていると、藪の中からイールの黒い狼が顔を覗かせた。
小柄な奴だったが、あたしを少し離れたところから見て遠吠えで仲間に報せた。
怯えた様子であたしの顔をチラチラ見て、ついて来いといった様子で前を歩く。
耳が寝て、尻尾を巻き込んでトボトボ歩く様子に、「お前も貧乏くじだな」と笑った。
あたしに関わる奴はみんな貧乏くじだ。
遅かれ早かれ、そうなるのは目に見えていた。
そのうちあいつにも貧乏くじが回ってしまうかもしれない…
それはやだな…と思った。
しばらく森を進むとアヴァロムより一回り小さい狼が迎えに来た。
自分の背を何度も鼻先で指して乗るように指示するので背中を借りた。
乗せてもらってなんだけど、やっぱり乗りにくいな…
狼に連れていかれた先は、大木の上に家が並んでいる獣人の集落だった。
一部の家が燃やされて樹が倒れていた。
ここが襲われた場所か…
狼の背を降りると、身体中に刺青を入れた猫っぽい獣人があたしを見咎めた。
大人の男の獣人はあたしより背が高い。
手には厳つい棍棒を持っている。
「何者ダ?」彼はあたしにわかる言葉で口を訊いた。
「イール殿下の連れだ」と答えると彼は警戒を解いた。
「イール殿下は?」
「案内スル」と行って、彼は呪術のようなものを施された一番奥の大樹の元に案内してくれた。
樹の根元にエルフの少女を抱いた彼の姿を見て安心する。
あたしに気付いたイールは子供を預けて駆け寄ってきた。
「ヒルダ!無事か?」
「何ともないよ」と答えるあたしにイールは手を伸ばした。
それを見て慌てて伸びた手を拒否した。
今ハグしたら返り血で服が汚れる。
それに人目もある。
「今血塗れだから」
「怪我は?」とイールは心配してくれたが、あたしは傷一つ無い。
そういう可愛げのない女だ。
「何もないって、全部あたしのじゃないから…」
「本当に?」そう言いながらイールはまた手を伸ばしてくる。
「だから、汚れるって…」手が触れないように身体を引いた。
「そんなこと気にしない、君の方が大事だ」
「あんたね…」
真面目な顔してなんてこと言うんだい?
もうちょっと隠そうとか思わんのか?
一瞬怯んだあたしの隙をついて、彼の腕があたしを抱き寄せた。
「ああ!汚れるってば!」引き離そうかと思ったがあたしの手も汚れてる。
彼に触れるのに躊躇する。
「…もう…どうすんだよ…あんたまで汚れちまったじゃないか?」
あたしが汚い役を引き受けた意味が無いだろう…
「いい…ヒルダ、いいんだ…」
そう言ってイールはさらに強くあたしを抱いた。
震える声があたしに届く。
「…ありがとう」
「…うん」
「無事私の所に戻ってきてくれて、ありがとう…」
そんなことを言うから笑ってしまった。
「それって普通女が男に言うやつだ」
あぁ、可愛いやつだな…
彼の背に、乾いた血が張り付いた手を回した。
もう汚れちまったから遠慮しなくていいだろう?
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