魔王と勇者のPKO 2

猫絵師

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勇者と略奪者

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夕刻過ぎてもイールは帰ってこなかった。

僕が余計なことを言ったからかな?

「ミツル、イールを知らないか?」とアンバーが部屋に訪ねてきたが僕も知らない。

「少し話があったのだがな…」と珍しくアンバーが歯切れの悪い言い方をしていた。

「マリーに薬草取ってきてって頼まれたって聞いたよ。

夕刻には帰るって本人から聞いてたけど…」

「そうか、それならマリーの所に行ってみるよ、ありがとう」

「あ、待って、僕も行く」

そう言ってアンバーに近付くと、彼は驚いた声で訊ねた。

「何だ?その顔どうしたんだ?」

「へ?」驚いて鏡の前に立つと、顎の辺り、顔の端の方にくっきりと痣が出来てた。

ヒルダの手の痕だ…こっわぁ…

「…ちょっとヒルダにつまらないこと言って…」

「何を言ってそうなったんだ?」アンバーの骨だけの手のひらがヒタヒタと僕の輪郭に触れた。

原因を話す訳にはいかなかったので隠した。

「美人だねって言ったから、からかわれたと思ったんだろうね」

「おいおい…君も怖いもの知らずだな…」

アンバーも若干引いている。

一緒にマリーの部屋に向かう時にアンバーが不意に僕に訊ねた。

「ところで、イールとヒルダは仲が良いのかな?」

「え?…何で…」

「先日のイールの部屋を訪ねた時、ヒルダの姿があったのでな…

どんなに男勝りでも、彼女はお預かりしてる娘さんだ。

二人きりというのは感心しないな…」

アンバーは困ったように顎に手を当てた。

あぁ…何だよバッチリバレてるじゃないか…

「まぁ、そういうことで、君たちも少し気をつける事だ。

とこを共にするならちゃんと結婚してからにしてくれよ」

「してない!」

先日のキスを思い出して耳まで真っ赤になった。

そんな僕を見てアンバーが首を傾げる。

「何だね?するならって言ったんだよ、私は…

君は純情だからそんなことはないと思うが…まさかしたのかい?」

ベティといいアンバーといいなんて事を言うんだい!

「キ、キスした…だけです…」

言わされるのはかなり恥ずかしい…イジメか…

「はあ?まだしてなかったのかい?

その分じゃまだ当分何も無さそうだ」

アンバーは少し残念そうに呆れた声で答えた。

「君そんなんじゃ、子供ができる頃には髭のおじいさんになってしまうぞ」

君はして欲しいのかして欲しくないのかどっちなんだい?!

だんだん訳が分からなくなってきた…

恋愛って答えがなくて難しい…

✩.*˚

「ヒルダ、窓枠は座るところじゃないんだが…」

ヘイリーに注意された。

最近元気になったのは良い事だが、親父殿のように小言も増えた。

「ふらっと出かけて帰ってきてはボーっとしてるけど、大丈夫か?」

「煙草」と短く答えた。

ヘイリーが不思議そうに眉を顰めた。

「煙草ないからさ、口寂しいだけだよ」

「全く…懲りないな…」

煙草の件は毒を仕込んだやつが悪いわけで、煙草に罪はない。

ヘイリーの言葉に口を尖らせた。

「へそを曲げてるのはそれだけかい?」と彼は問うた。

「何だよ?吸わないやつが偉そうに…」

「煙草が吸えないと機嫌が悪くなったことがないからね。

ヒルダの気持ちは分からないよ」とヘイリーは軽口を叩いている。

随分調子良いじゃないか?

この間まで死にかけてたくせに…

「薬が合ってるのか?」

「おかげさまでね、味はイマイチだが、少しずつ調子が良くなってる。

食事も普通の物を取れるようになったから、体重も少し増えたようだよ」

「へぇ…体重増えて喜ぶなんてな」と、からかったが、ヘイリーは嬉しそうな顔で笑った。

「ウィルに喜んで貰えるよ」と答える彼は、恋人を思って明るい顔を見せた。

いいな…

羨ましい気持ちを必死で抑えて、「良かったな」と心にもない言葉を返した。

窓ガラスの向こうに視線を戻す。

飛竜の姿は見えない。

まだ帰ってこないのか…

待ってるのは飛竜じゃない。あいつの顔が見たくて仕方なかった。

煙草代わりの心の安定剤を待っていた。

✩.*˚

「イールお兄様?まだ帰ってないのよ、私も待ってるのに…」

マリーの仮面が困ったように表情を変えた。

やっぱりイールはまだ帰らない。

もうすぐ日が沈んで夜になるっていうのに…

「何処に行ったか分かるかね?」

「ジューリオの集落からすぐの湿地よ。

リザードマンと魔獣達の生息地で、コールって薬草を採取しに…」

「探すのに苦労するものか?」

「そんなことないわ、見たらすぐに分かる、赤いハート型の葉っぱの植物だもの、すごく目立つわ。

イールお兄様ならすぐに分かるはずよ」

「ますます分からないな…イールは何しているんだ?

ジューリオと話し込んでいるのだろうか?」

「ジューリオって仲良しなの?」と、アンバーに尋ねると彼は「ステファノの父だ」と答えた。

なるほど、親友のお父さんか…

確かに寄り道する可能性はあるが、彼の性格上言ったことは守るほうだ。

「転移魔法で様子を見てくる」とアンバーが杖を手にした。

「ポルタ」と呟くと青白い魔法陣が展開される。

「お父様!お父様が行かなくても…」

「心配だ、略奪者のこともある。

何も無ければそれでいいが、確認しなければ…」

「待ってよ、僕も行く」

アンバーの袖を掴んだ。

アンバーは頷いて見せて、「離れるなよ」と忠告した。

彼は転送魔法の魔法陣を調整すると「イニーレ」の言葉と共に光に包まれた。

エレベーターのような浮遊感の後、マリーの部屋から屋外に風景が変わる。

もう日が沈みかけていて暗くなってきている。

アンバーが杖に明かりを灯した。

少し先までの歩く範囲が少し明るくなる。

「座標は少しズレがあるが、すぐ近くだ。

行こう、ミツル」

「うん」

ガサガサと草をかき分けて進む。

アンバーが居るから何も怖くない。

なんなら暗闇なら彼の方が怖い…骨だもの…

集落の方角に進むと暖炉のような匂いが鼻に届いた。

人の気配がする。

でも何か騒がしい…

胸騒ぎがした。

先を歩くアンバーの足が止まった。

「どうしたの…」僕が尋ねるとアンバーは蹲って足元の何か黒いものを触っていた。

何かと覗き込むと、彼の手には狼が抱かれていた。

「…これは…イールの…」

アンバーがさらに視線を前に向けた。

少し先の方、開けた場所に、大きな牛のような影を見て絶句する。

「…もしかして…アヴァロム?」

こんな大きい狼が他にいるとも思えない。

動かない黒い影に歩み寄って絶句する。

いつもイールの隣にいた狼達のボスだ。

イールがいつも自慢げに連れ回していた。

彼は目を開いたまま死んでいた。

黒い硬い毛並みは抉れて首元に重傷を負っていた。

「…イールは何処に…」

アヴァロムの亡骸を撫でながら、アンバーが不安げに呟いた。

アンバーの杖の灯りを見つけたのだろう。

黄昏時の暗い中、人影がこちらに向かって走ってくるのが見えた。

「…これは…《錬金術師の王レクス・アルケミスト》陛下でございますか?」

僕らの姿を見て男の人は恐る恐る訊ねた。

エルフっぽい尖った耳をしているが、イールより少し短い。

「なにがあった?」と尋ねるアンバーに「略奪者です」と彼は答えた。

「ジューリオ様も手傷を負いました」

「ジューリオの容態は?イールは?私の息子はどうした?」

「ジューリオ様は軽傷ですが、二名亡くなりました、うち一人は…子供です…」

「なんということだ…」

「イール殿下は…他の部族が助けに来た時は既にお姿がなく…」

彼は言葉を途中で切った。

イールが連れていかれたのは明らかだった。

狼達は彼を守ろうとしたのだろう。

「なんて事だ…あぁ…イール…」

普段は冷静なアンバーが嘆きながら杖に縋ってよろめいた。

「アンバー、しっかりして…」

「彼は《サンベルナ》だ…油断した私のせいだ」

「君一人で全部守るのは無理だよ!

イールを探そう!」

「希少な種の収集を目的にしてるなら、彼ほど適任な者はいないと心に留めておくべきだった…」

「《サンベルナ》って何?」

「肌の黒いエルフのことだ…白い肌のものより希少なんだ、数だって極端に少ない。

しかもアイビス族はもう数える程しか居ないんだ!

人間からしたら珍しくて喉から手が出るほど欲しい種だ!」

「私のせいだ」と、アンバーは嘆いていた。

「すぐに探そう!

まだ遠くまで行ってないだろ?ルイ達も呼んで、皆で探そう!」

そう言うと近くで何か動く気配がした。

アンバーの杖の明かりに獣の目が反射した。

大きな狼が口元に泡を吹いて、唸り声を上げながらもがいている。

「ゲイル!ゲイルだろ?」

駆け寄って声をかけると狼は僕のことが分かったようだった。

イールに借りて何度か乗ったことがある。

首に絡まった縄の先端には瓢箪型の重りが付いていた。

これが見た目に反してめちゃくちゃ重い。

「魔法か?ちょっと待って…」

ロープが絡まって取れないので腰に提げた剣を手にした。

魔法が付与されて重くなっているなら、《全ての魔法を無効化できる》剣の《凪》で無効化できる。

思った通り、《凪》を使うとロープは弱い紐のように簡単に切れ、ゲイルは自由になった。

さっきまで地面にめり込んでいた重りは嘘みたいに軽くなる。

「ゲイル、イールは?僕の言ってること分かる?イールはどこだ?」

僕の言葉を無視して、ゲイルが真っ先に向かった先はアヴァロムの亡骸だった…

アヴァロムの死を確認して、彼は遠くまで届く声で鳴いた。

遠吠えに声が重なる。

悲しげな声が響いた…

その声に答える声が続々と集まってくる。

「イールの狼って…こんなに居たの?」

驚いた。

三十頭は居るぞ…

ずい、とゲイルが僕の前に立った。

乗れと言うのだろうか?

「ゲイル、待って」

ポーチから回復魔法の刻まれた骨を取り出した。

簡易魔法が刻まれていて、折ると発動する便利なものだ。

ゲイルに使ってやった。

「イールの匂いを辿れる?」と尋ねると、ゲイルは低く鳴いた。

「アンバー!僕行くよ!」そう言ってイールに教えてもらった通りに狼の背に乗った。

長い首の鬣の辺りを強く握る。

「ミツル!一人では危険だ!」

そう言って引き止めるアンバーに「僕は《勇者》だから」と答えて笑った。

「イールは連れて帰るよ。

狼が案内してくれる、誰か応援に寄越してよ」そう言ってゲイルに合図した。

ゲイルは嫌がらずに僕を背に乗せて走り出した。

アンバーの声が僕の背に追いすがった。

少しだけ振り向いて笑って見せた。

大丈夫だよ、アンバー。

イールは必ず連れて帰るから…

僕は僕にできることをするよ…

✩.*˚

男に担がれながら狼の遠吠えを聞いた。

ゲイルだ…アヴァロムの死を群れに伝えている。

自分が次のボスだと宣言している。

「…アヴァロム…」

私が変な意地を張ったせいで彼は死んだ…

すまない、アヴァロム…お前の判断が正しかったんだ…

涙が溢れた。

結局私は子供も助けられずに、ただお前達を失った…

ずっと…抱けるくらい小さな頃からお前と一緒に過ごした。

お前は賢くて私の友として寄り添ってくれた…

その彼への報いがこれか?私はなんて愚かなんだ…

「狼共、諦めてないのか?」

遠吠えを聞いたレイモンドが声の聞こえる方向を睨んだ。

彼らは安全な場所を求めて移動していた。

「この《サンベルナ》を人質にしてる限り手は出せないだろ?

それより、こいつには訊く事あるんだ、早く落ち着ける場所に移動するぞ」

「痛めつけるのか?」とレイモンドがメイナードに訊ねた。

「なに、城の場所を素直に喋ってくれたらそんな事しねえよ。

値が下がるのはゴメンだ」

「このキレーなお顔に傷を付けると厄介だ。

殴るんなら見えないところにしておけよ」

「分かってるって、俺だってその辺は上手くやるさ。

なんたって上物の商品だ」

男達の会話を聞いてると反吐が出る。

私は…私達は物じゃない…

こんなヤツらに…アヴァロムは…

怒りが込み上げる。

それでも手も足も拘束されているから暴れたって大した抵抗にもならない。

一行は大きな樹の根元の少し開けた窪んだ地点をキャンプ地に決めた。

「暗くなってきたこの辺で一旦休む。

ロビン、目眩しの結界を頼む」

「了解、少し待って」

樹に結界用の紐を繋いで、木に文字刻んだ。

魔物避けの結界を整えた一行が休憩をとる。

「逃げようとか思うなよ?」とリーダーのメイナードが私に釘を刺した。

「魔王も《サンベルナ》なのか?」と彼は私に尋ねたが、答える気は無い。

無視していると足が飛んできた。

避けきれずにもろに鳩尾に食らった。

口から胃液が溢れた。

苦しくて身体を丸めて蹲ったが、乱暴に髪を掴まれて顔を上げさせられた。

「魔王の子供は《王子》かもしれねえがな、今あんたは《王子》として扱われると思うなよ?

痛い思いしたくなけりゃこっちの質問に答えるこったな」

「…お前達なんかに…私は屈しない」

「へー、そう?一丁前に強がってんな…

おい、イーノック、アレやってくれよ」

そう言って仲間の黒ずくめの男を呼んだ。

「…見せもんじゃない」と彼は言ったが、メイナードは肩を竦めて、「逃げる気も無くなるだろ」と言った。

「まず軸足だ」

「…分かった」と答えて、イーノックと呼ばれた男の手が私の太腿に伸びた。

「私に触れるな!」と身体をよじったが左足を抱え込まれてゴキンッと音と衝撃と痛みが走った。

関節を外された。

「あ、あっあぁッ!」

激痛で悲鳴を上げた。

左足全く動かなくなる…最悪だ…

「上手いもんだろ?こいつ関節抜くの上手いんだぜ。

次は利き腕にしようか?」

メイナードの言葉を聞いて、イーノックの手が今度は腕に伸びた。

黒い腕にゾッとする…

「止めろ!触るな!」

さっきの足の関節を抜かれて自由が利かない。

嫌だ!これ以上耐えられない!

「やれ、イーノック」

メイナードの命令で手枷をはめた右腕にイーノックの手が伸びる。

彼は鶏でもしめるみたいに簡単に、私右肩の関節を抜いた。

痛みで全身が強ばり、仰け反って悲鳴を上げた。

略奪者達はただそれを見ていた。

「これでいいか?」と問うイーノックに、「おつかれさん」とメイナードが彼の肩を叩いて労った。

「さあて、悲鳴もあげたし、ちょっとくらいお口の運動になったろ?

俺とおしゃべりしようぜ」

彼はそう言ってしゃがむと、乱暴に私の襟首を掴んだ。

痛みで苦しんでる私など知ったことでは無い様子だ。

「城の場所を訊く前に確認だ。

数日前に、お前の狼の群れと一緒にいた背の高い男。

あれはお前らが勝手に召喚した《勇者》か?」

「…何の…話だ…」

「しらばっくれんなよ、見たんだぜ」と男は自慢げだ。

「化け物みたいに強い奴だ。

さすがの俺も震えたよ…

人間を、蟻でも潰すみたいに大盾でミンチにしてた。

短い癖のある金の髪で、巨大な盾を操る全身魔装の軍神みたいな野郎だ。

あれが《勇者》じゃなきゃ誰が《勇者》だってんだよ?」

思考が停止した…

痛いのも忘れて驚いたが、次に湧き上がったのは笑いだった。

笑うと抜かれた間節が痛むが笑わずにいられない…

ミツルが聞いたらなんと言うんだろう?

それより、男だと思われた上に《勇者》と間違われた彼女を思うと笑わずにいられない。

あんなに美人なのに、彼女が可哀想だ。

「…笑わせてくれる」痛みを堪えて口を開いた。

略奪者達は驚いた顔で私を見ていた。

「お前たちの目は節穴だ」

「…どういうことだ?《勇者》じゃないのか?」

メイナードが眉を顰めて問い返した。

は《勇者》じゃない」

「…は?彼女?」

驚いた様子のメイナードが、私から手を離して、少し離れたところにいたレイモンドという男に視線を投げた。

彼もまた驚いている。

「あんなに美人に失礼な…」と彼らの勘違いを笑った。

私の襟首に再びメイナードの乱暴な手が伸びた。

無理やり立たされて苦痛で顔が歪む。

「馬鹿野郎!あれは男だろう?いや!男だ!」

「…彼女は…とても美しい女性だ…」

「嘘つけ!あんなバカでかい女がいるか?!」

必死になって否定するメイナードにレイモンドが叫んだ。

「おい!メイナード一人だけいる!」

「いるか!そんな女!」そんなに必死になって否定しなくても…

彼に駆け寄ってレイモンドがメイナードの肩を掴んだ。

「忘れたか?ラーチシュタットだ!」

その言葉を聞いてメイナードの手が緩んだ。

支えを失った身体が地面に投げ出された。

「…まさか」

「嘘だろ?」

他の奴らも動揺の色を見せた。

「ヒルデガルト・フォン・ヴェストファーレン…

《歩く要塞》だ」

「マジか?」

「条件が完全に合致する。

相手がアーケイイックだったから忘れていた…

そんなでかい女ポンポンいるもんじゃねえ」

「何で奴がアーケイイックに…」

ヒルダの名前が出ただけで全員顔色が悪くなった…

何だ?彼女はオークランド相手に何したんだ?

五人で緊急会議だ 。

何か端々からおかしな単語が聞こえる。

「破城槌を正面から受けて粉々にした」とか、

「魔導誘導されたバリスタを撃ち込まれて無傷」とか、

「騎士団を壊滅させた」とか、

「重装騎兵隊の突撃を防殼だけで瓦解させた」とか…

漏れ聞こえてくる武勇伝の数々に笑ってしまう。

そんな話してなかったじゃないか?

君ならやりそうだな…

聞かせてくれても良いのに…

「…じゃあ《勇者》は?」という話になって再び私に視線が注がれる。

ミツル、彼女の後だと霞んでるどころかほぼ透明だ。

お前も可哀想にな…

「呼んだ?」と頭上から間の抜けた声がした。

驚いて声のした方を見る。

「ミツル!?」

「僕の結界が!」魔法使いが声を上げた時にはもうミツルが《凪》を振るって結界を破った後だった。

段差を飛び降りてミツルが私の前に降り立つ。

「逃げろ、イール」

唖然とする略奪者の前でそう言い放つと、ミツルは私に向かって《凪》を振るった。

手枷の魔力封じの魔法が解ける。

ゲイルが連れた狼がなだれ込んで私を攫った。

「《サンベルナ》が逃げる!」

「追え!イーノック!」

メイナードの指示に、応えて黒い影のような男が狼の背を追おうとした。

でももう私の手枷は意味を為していない。

指輪に魔力を注いだ。

「《デコイイレックス》」

分身が現れ、狼の群れと共に撹乱した。

「クソッ!」追いすがった死神のような黒い影が怯んだ。

イーノックが怯んだのを見て狼が彼に襲いかかった。

三日月のような剣を振るって応戦してる間に、ゲイルの足で一気に距離が開いた。

「ゲイル!ミツルは?」

『見殺しにはしません!でもイール様の方が優先です!』

ゲイルがそう言って真っ直ぐ森を駆け抜けた。

狼の群れが彼に続く。

『アヴァロムとの約束です』と彼は言った。

その名を聞いて胸が傷んだ。

『彼は最後まで貴方を…』

そう言ってゲイルは声を詰まらせた。

アヴァロムは最後まで私を逃がそうとしていた。

それを無駄にしてしまったのは私だ。

ゲイルの背で泣いた。

ミツルはまた突き放した私を助けてくれた…

それなのに私は…

無力を示すように、抜かれた手足が力なく揺れる度に痛みを伴った。

✩.*˚

「えーと…こんばんは、《勇者》です」

なんとも間の抜けた挨拶だ。

皆さんさぞかしガッカリしたことだろう。

半月より少しだけ明るい月明かりが森を照らしていたので真っ暗という訳でもない。

僕の姿も相手には良く見えていることだろう。

残念だが、このパッとしない僕が《勇者》なのだから仕方ない。

驚いた視線が僕に注がれている。

頭の上を黒い影が過ぎって仲間の元に戻った。

「…すまん、逃げ切られた」

朗報だ。ゲイル達はイールを連れて逃げきれたらしい…

「とんだ邪魔が入ったもんだ」と男たちが得物を構えた。

魔法使いと盾持ちもいる。

わー、ちゃんとした冒険者パーティーっぽい。

無理ぃ…白旗持ってくるべきだった?

「《勇者》ってのは本当か?」

背の高い無精髭の男の人が僕に訊ねた。

「鑑定書ならある」

アドニスの時と同じように鑑定書を出して、彼らに投げて寄こした。

「…へぇ…ホントだ」

「見せて、フェイクかも」と杖を持った魔法使いっぽい青年が手を伸ばして取り上げた。

「《暴けディスクローズ》」

彼のかけた魔法は無駄になった。

僕が《勇者》かもしれないという話から、《勇者》だという確信的な話になっただけの事だ。

「げー…うっそぉ…」

何だそのあからさまなリアクションは!腹立つ!

「マジか?ぱっとしねえな?」

「もう一回確認してみるのは?」

言いたい放題だな!悪かったな!こちとら凡人だい!

「捕まえるんだろ?」と黒ずくめの男がリーダーっぽい奴に確認した。

薄暗い森の中だと認識しにくいな。

リーダーの返事は「当然」だ。

「《勇者》を土産にするなら《サンベルナ》を逃がしてもってところだな」

そう言って彼が腰に提げたポーチから紐状のものを取り出した。

先端に重りの付いた形状はゲイルに絡まってたやつだ。

「俺はオークランドの傭兵でメイナードってんだ、よろしくな」

「平和島満、皆ミツルって呼ぶよ」

「変わった名前だな」

「《勇者》だからね」

「ハハッ、なるほどね」とメイナードと名乗った男が笑った。

「《勇者様》のお手並み拝見といこうか」

「…戦わないで帰って欲しいんだけど、ダメかな?」

「おっ、自信家だねぇ!」

「逆なんだけどなぁ…」と僕はボヤいたが彼らは聞く耳持たない。

「ロビン、強化魔法を頼む。

イーノック先に行け」

「了解」と答える声が重なった。

黒い影が暗闇に溶けるように馴染んだ。

仕方ない、と僕も《嵐》も抜いた。

《嵐》を抜くと雷を纏った刀身が白く輝いた。

「やべー武器持ってるな、《勇者》っぽいじゃねえか?」

「だから、《勇者》だってば…」

僕が答える間に黒い影の男、イーノックが迫っていた。

シミターみたいな湾曲した刃が襲ってくる。

狭い窪地だったので、闘技場みたいで逃げ場がないのに気付く。

《ラリー》を発動させて迎え撃った。

僕が数回打ち返したことに彼は驚いたらしい。

「…メイナード、こいつ見た目より強そうだ」

「ハハッ、自称 《勇者》なだけあるな」

「だから、《勇者》なんだって!」

腹立つわこいつら!

隙を見て窪地から出たかったが、そうはさせてくれないようだ。

ジリジリと距離を詰めてくる。

《嵐》の刀身を見えるように掲げた。

釣られるように視線が注視される。

「《嵐・閃光》」

僕の呼び掛けに応じて、《嵐》の刀身が強い光を放った。

強い光が上に向かって伸び、光の柱は天に伸びて消えた。

誰かの目には入ったはずだ。

目眩しの効果を期待して逃げようとした。

走ろうとしたところに足に何かが絡まった。

足が縺れて派手に転んだ。

「いったぁ…」

「すげえ光だったが逃げるには一歩及ばずだ!」

「盾か!」盾役タンクいるの忘れてた!

盾役が閃光からメイナードを守ったらしい。

足に絡まっているのはさっきメイナードが持ってたやつだ。いつの間に投げたんだ?

「そいつは簡単には切れねえよ!

俺用の特注品だ!魔法の糸で…」

「あっそう?じゃあいいや」

自慢げに話すメイナードの言葉を待たずに《凪》で縄を切った。

ゲイルのと同じやつだから思った通り簡単に切れた。

「えーと…」メイナード沈黙…ざまあみろ!

「しっかりしてくれ、メイナード…」と仲間が呆れ顔で呟いた。

「余裕ぶってると時間なくなるよ」と魔法使いにも言われて、おっさんが拗ねた顔をした。

「分かってるって!こっからはマジだ」

メイナードが仕切り直しを宣言する。

正直時間稼ぎしか出来ないんだが…

「隙を見て捕まえろ」と呟いて、イーノックと呼ばれたやつが動いた。

「レイモンド、お前もイーノックを手伝え」

「了解」

短く答えて彼が取り出したのは、棒の先端にトゲトゲの付いたファンタジーによくあるあれだ…

「モーニングスターなんて使ってる人いるんだ…」

「壊れにくいからな」と笑ってレイモンドが正面から振り下ろしてくる。

そう言いながらもう一本構え、軽々と操りながら迫った。

こっわ!避けたけどあれは死ねる!

逃げた先で待ち構えてたイーノックの剣が伸びるのを何とか防いだ。

後ろから空を切る音がして慌てて身体を低くする。

トゲトゲが頭の上を掠めた。あっぶね…

「ちっ!よく逃げる!」レイモンドが残念がってるが、期待にお応えすることは出来ない。

「当たったら死ぬわ!」

もう戦わなくていいから逃げることだけ考える。

二人とも結構ガチに殺しに来てる。

僕を捕まえるか殺すかするまで諦めそうにない。

ちくしょう!《勇者》なんて損だ!

ネガティブモードに突入しててメイナードと盾役の男のことを忘れてた。

二人から逃げようとした先で、大きな盾が目の前に迫っていた。

「やっ!」誘導されたと気付いたがもう遅い。

受け身も取れずに、盾から繰り出される突進をもろに食らった。

そのまま壁に追い詰められた。

本日二度目の壁ドン…

まだ女性な分、ヒルダの方が良かったな…

「かはっ…」潰される…苦し…

「抑えたぞ!」盾役が叫ぶとメイナードが「よくやった!」と絶賛した。

くっそッ!盾はビクともしない。

《凪》と《嵐》は大丈夫か?

ご機嫌なメイナードがイーノックを呼んだ。

「イーノック!お人形さんにしてやんな!」

何だよ人形って?

「全部か?」

「当然だ、こいつ得体が知れないからな」

訳の分からない会話が視界の隅で交わされると、黒ずくめのイーノックと呼ばれてる男が僕の右肩に手を伸ばした。

「リチャード、そのまま抑えてろ」

そう言った次の瞬間、ゴキゴキと肩が軋んで激痛が身体を駆け抜けた。

何が起きたか分からずに悲鳴をあげて剣を落とした。

そのまま、悲鳴をあげる僕を無視して、イーノックは手際よく手足の関節を外した。

イーノックが「いいぞ」とリチャードに声をかけると、抑えてた盾が離れ、僕は支えを失ってその場に崩れ落ちた。

手も出せなくて顔から倒れた。

人形ってこれか、と理解する。

無理やり外された関節は熱を帯び、鈍い痛みが身体中に響いた。

最悪だ!いくらなんでもやり過ぎだろ!

手足を拘束された方がマシだ!

なにこれ?ちゃんと治るんだろうな!

「芋虫みたいだぜ、《勇者様》」とメイナードが意地悪く笑っている。

「これからどうすんだ?」とレイモンドが訊ねた。

「そうさな…早いとこ移動しようか…」

メイナードの手が動けない僕の頭に伸びる。

無造作に髪を掴まれ、木の根元まで引き摺られた。

「い!痛いって!止めろ、ハゲたらどうすんだ!」

「元気じゃないか?さすが《勇者》だな」とメイナードが僕をバカにするように笑った。

こちとら手足プランプランで、手も足も出ないんだぞ!

残念ながら何の準備もなしに飛び出してきたから、手持ちの武器は《凪》と《嵐》だけだ。

こんな状態じゃ戦えない。

メイナードが腰に提げていた手枷を取って僕の動かない腕に嵌めた。

足はロープで手際よく結ばれ、口にはご丁寧に猿轡までされる。

彼らは引越し屋みたいな手際の良さで、荷物をまとめて、僕を担ぐとその場を離れた。

「魔王の城はどうするのさ」と魔法使いの青年が訊ねた。

「面倒だが一旦仕切り直しだ」とメイナードが答えた。

「《勇者》を手にいれたんだ。

欲張って全部無くすことないだろ?

《サンベルナ》や魔王の城は他に譲るさ」

「珍しい…独り占めしないのはあんたらしくないね」

「やばいヤマだからな…」

レイモンドがメイナードの代わりに答えた。

「この頼りない《勇者》が魔王の城の位置を把握してれば儲けもんだが、期待できないだろうよ」

「こんな頼りない《勇者》連れて帰ってお偉方に怒られないかね?」と僕を担いた大男が訊ねた。

お前らどんなんだったら良かったんだよ…

何か惨めになってきたわ…

「お偉方からすれば《勇者》って事実が大事なわけで、別に使えるか使えないかの問題じゃないだろ?

《英雄》だって結局は使い捨てだ。

使えなくなりゃポイだ。

こいつは頭悪そうだから丸め込みやすそうだし、テューダー公だって上手いことするだろ?」

「《勇者》も用がなくなりゃ消されるね」

ふふっと魔法使いが笑った。

その言いように腸が煮えるような怒りを覚えた。

それは誰の話だ!

唯一自由になる背筋を反らせ、渾身の頭突きを盾持ちの背中にかました。

「こいつ!」

不意をつかれて、僕を担いだ大きな身体がよろめいた。

直ぐに誰のか分からないが拳が飛んできた。

顎が割れるかと思うほどの、ボクサーみたいなマジのやつだ。

脳みそがグチャグチャになったかと思った。

視界が一瞬白くなって暗くなった。

人の声が遠くから聞こえる。

「バカ」とか「無駄」とかそういう言葉が聞こえた気がした。

猿轡を噛んでいたから舌は噛まなかったが、口の中に血の味が広がる。

それでも怒りは消えなかった。

まだ頭突きしてやる!何度だって抗議してやる!

何が《勇者》も、だ!

誰を消した!

アドニスの伯父さんか!?

それとも彼自身か!?

お前らの思いどおりになってたまるか!

僕は、彼らのところに帰るんだ。


ペトラ、君と生きると約束した…約束だ!

✩.*˚

急に暴れたから仕方ないにしても…

「おいおい、レイモンド、そいつ死んでないよな?」

「こんぐらいて死ぬかよ?《勇者》だぜ。

リチャード、大丈夫か?」

「驚いただけだ」

そう答えたリチャードが、ぐったりと動かない《勇者》を担ぎ直して体勢を立て直した。

暗くて足元も悪い。

いきなり何だってんだよ?

「何だ?」と先行して偵察しながら進んでいたイーノックが、騒ぎを聞きつけて戻って来た。

「分からんが、《勇者》が急に暴れたからレイモンドが黙らせただけだ」

イーノックは興味無さそうに「そうか」とだけ言ってまた暗い森に溶けて消えた。

「昼間の飛竜、連れて来るべきだったな」と後悔を口にした。

他にもいるかと思っていたが、あの集落にいたのは一匹だけだった。

移動手段としては心もとないし、馬みたいに操れるわけじゃない。

すぐに諦めて空に逃した。

「まさかこんなに早く《勇者》を手に入れるとは予想出来なかったろ?

誰かに逃げられて魔王に報告されないように逃がすのが精一杯だったな」

「僕も疲れたよ、ずっと歩き通しだ」

レイモンドはまだ余裕そうに笑ってたが、魔力を消費し続けてるロビンは疲れた様子だった。

どこかで休まなきゃバテちまう。

魔法使いがいないパーティーなんか不便でならない。

「もう少し進んで、いい所があったら休もう」と提案した。

「こんなところでリタイアするなよ、大魔導師になるんだろ?」

「分かってるよ。

僕の物語に《英雄》としてメイナードも出してあげるよ」と彼は軽口を叩いた。

「《英雄》か…」感慨深いものだ。

俺とレイモンドとイーノックの三人で盗賊まがいな生活を送ってた頃を思うと考えられない話だった。

一度は捕まって牢屋にぶち込まれたが、今のギルドで頭数を合わせる傭兵として雇用された。

何度かメンバーは変わったが、三人で変わらずやってこれたのは相性が良かったからだ。

前任者の代わりにリチャードが入り、ロビンが加わった。

二人とも割と上手くやってるし文句なしだ。

ロビンは皮肉屋で、よく意地悪く勝手に囀っている。

リチャードは真面目な奴だが、図体の割に気が利く。

せっかちで手の早いレイモンドも、淡白で口数の少ないイーノックも俺もこのパーティーを気に入ってた。

「もっと長くなると思ってたからな、どっかで馬でも調達出来れば良いが…」

《勇者》をこのままずっと担いで回るのも負担だ。

しかし、さっきの反抗的な態度を見れば自分で歩かせる訳にもいかない。

「…全く、人間の国に戻してやるって言うのに…

何の文句があるのかね?」

理解に苦しむ…

普通だったら「助かった!」と喜ぶもんだろう?

「洗脳されてるんだよ」とロビンは言ったが、 本当にそれだけか?

「《魔王》も《魔王》だろ?

何でこいつに武器なんか与えてる?

どっかに閉じ込めておけばいいのに、フラフラ出歩いてるってのはどういうこった?意味が分からん?」

考えれば考えるほど分からなくなる。

こいつら自由を与えるほど信頼関係があるのか?

それとも《勇者》が《魔王》の目を盗んで逃げてきたのか?

この鈍臭いのが?

でもどんなに考えても答えは見つからなかった。

お手上げだ、頭を掻いて俺は考えるのを止めた。

✩.*˚

夕食前にヘイリーの薬を貰うためにマリーの部屋を訊ねた。

部屋が賑やかだ…

今はミツルに会うのが気まずい…

出直そうか迷ったが、避けるのもガキっぽくて嫌だった。

仕方なくドアに手をかけた。

あたしの姿を見て、マリーがいきなり腰の辺りに抱きついてきた。

「ヒルダ!助けて!」

彼女の悲鳴のような声に驚き、表情を映す仮面は泣き顔だった。

「おわっ!何だよ!」

軽い身体を抱きとめて部屋にいた奴らを見回した。

マリーの他はルイ、シャルル、あと人間っぽい金髪の幽霊みたいな無表情の男がいた。

あれ?こいつどっかで見たような…

思い出せないが、なんか見た覚えが…

「では私達はこれで…」とシャルルが男を連れて部屋を出ていこうとした。

いつもなら《愛しい人シェリー》などとふざけた呼び掛けをしてくるシャルルが、あたしを無視してすれ違いざまに部屋を出ようとする。

「待てよ」とシャルルの腕に自分の腕を絡めて引き止めた。

「何だよ?あたしに内緒の話か?」

「そうだ」とルイは険しい顔で答えたが、到底納得のいく答えではない。

「ヒルダ嬢、急いでいるので…」と腕を振り払おうとしたシャルルを睨みつけた。

あたしの腰にしがみついたままのマリーが叫んだ。

「ヒルダ!お願い!貴方もイール兄様を助けに行って!」

「…マリー?」

「帰ってこないの!

あたしが用事を頼んだから…

お父様が迎えに行ったら、略奪者に連れていかれたって報告が…」

その言葉を聞いて弾かれたようにルイに視線を向けた。

彼は何も言わずに険しい顔をしている。

シャルルがあたしの手をそっと外した。

「急ぎますので…

アドニス、行きましょう」

シャルルは連れの男を急かして部屋を出て行く。

その後を追おうとしたあたしの背にルイの声が飛んだ。

「どこに行く気だ!」

「あたしも行くんだよ!」

「ヒルダ!お前には関係ない事だ!部屋で待て!」

「ルイ!彼女はこの間、略奪者達から子供達を助けたのよ!」

「マリー様、仰りたい事は分かります。

しかし今回とは事情が異なります!

あの時はイール様が一緒でしたし、昼間でした。

アーケイイックの夜の森は危険です!

それに今回は緊急を要します、彼女の同行は許可できません!」

ルイの言い分は尤もだ。

それでも…

「マリー」

彼女の名を呼んで頭をそっと撫でた。

「教えてくれてありがとう。

ヘイリーに薬を届けてやってくれ」

「ヒルダ!」ルイが吠えた。

あたしの腹の中を読み取ったのだろう。

彼は止めるべき立場の存在だ。

あたしは《盾の乙女シルトメイド》の顔でルイに応えた。

「あたしも行く。

陛下には自分で申し開きする。

シャルルらへの同行を許してくれ」

ルイが怖い顔であたしを睨んだが引く気は無い。

イールはあたしの大切な男だ…

「あたしはもう後悔したくない」

「…行っても後悔するやもしれんぞ」

「それでもあたしは行かなきゃならないんだ」

イールを助ける、それ以外は些事だ。

あたしとの睨み合いの末、ルイはため息を吐いて折れてくれた。

「…分かった、案内する…

ダメだと言ったら、どういう手に出るか分からないからな…

しかし条件は必ず戻ってくることだ…守れるな?」

「当然」と答えた。

「あたしはヴェストファーレンと《盾の乙女》の名に賭けて約束を守るよ」

あたしはルイと約束した。

ライナーの二の舞は絶対に晒さない。
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