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狙われた、仙子
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(でも、さっきから私、後をつけられてない?あからさまにつけられてる、・・・何時からだろ?誰だろうまさか私に見惚れて・・・あの面子が揃っている中でそれは無いな、しかもこれ、絶対殺気だよね?何で私?あの中で一番弱そうに見えたか~・・・正解です・・・しっかし、何時まで就いてくるんだろう?・・・・・・撒くか)
と、不意に細い路地へと姿を消した泉子、つけていた者も不意を付かれ、
「くそ、見失った」
「馬鹿、何してんだ、」
(あれ?二人・・・さっき感じてた殺気って二人分、この程度なら潰せそうだな・・・私の持ってる武器はスカート裏に隠してある、この三本をつなぎ合わせて、先の袋を取った槍と、あとは、拳銃、撒菱に投げナイフが10本・・・これだけあれば足りるかな?)
「さっきこの路地に入るのを見たぞ、傷つけずに済ませたかったが、しかたねえ」
(うわ、あいつら手持ち武器ナイフだけ?・・・ぽいな・・・この先の開けた場所まで行けばこっちは槍に拳銃まであるんだし何とかなるか・・・よし)
覚悟を決め路地先の工場まで一気に走りぬいた泉子、
「まっ、待ちやがれ」
そこは見るからに廃工場、開けた場所に出た泉子は、すばやく槍を組立追ってきた二人を迎え撃つ
「なっ、なんで槍なんか持ってやがるんだ」
「俺が知るか」
「痛い目見る前に捕まってくれるとうれしいな」
泉子の話を聞いているのか、いないのか、分けのわからないことを言い出す二人組み
「おい、情報と違うぞ」
「ああ、それにあの服装、あれは文子官の着る文装、確かやつは武官だったはず、どういうことだ」
困惑する二人の隙をつき先制する泉子
「ぐふ」
泉子の持つ槍をもろに喉本に食らった一人は白目を向いて気絶、もう一人も何が起こったのかわからず、不意に白目を向いて倒れる仲間を見て唖然とするが、我に帰り泉子にナイフの切っ先を向ける
「貴様、何者だ?」
「それはこっちの台詞よ、貴方たちさっきの話からすると私を誰かと間違えたみたいだけど、この紋章をみて分からないの?
「六芒星に桜、と言う事はおまえ、副文官長直属の文子官」
「貴方たちこそ何者よ」
「ちっ」
どうやら答える気はないようだ、人違いで襲われ「何者だ」と言う質問に怒りを抑えていた泉子だったが、泉子の質問に答える気のないこの者に怒りを爆発させる
「「ちっ」ってこっちの台詞だって言ったでしょう、人違いしたうえに、襲ってきて先に誤って名乗りなさい」
その間打ち込むこと数十回、泉子がふと気付くと、すでに気絶している
「あれ?意外と弱いのね?とりあえず、詠香先輩に報告しておこう」
数日後
「泉子、この間貴方が捕らえた賊二人なかなかの有名人みたいよ」
「有名人?どういうことですか?」
「ほら」
詠香の差し出した雑誌に先日泉子を襲った二人組みのことが乗っていた、二人ともやり手のテロリスト、テロリストと言ってもやっていることは貴族や皇族などから金品を奪う盗賊、だが正体は分かっていたもののどこに潜伏しているか何時、行動を起こすか分からない神出鬼没な盗賊、盗賊団の頭目を勤めるほどの凄腕の盗賊だったのである。
「えっ、そんなにすごいやつらだったの?結構あっさり倒せたのに?」
いぶかしげる泉子に詠香は言う
「当然でしょ、仮にも私の直下「六芒桜」の紋を文装に入れている者がこの程度の者達に遅れをとるようでは困ります、これが1番から15番の番号持ちなら分からなくもありませんが、紋を持つことを許された者たちが遅れをとるようでは紋の剥奪、番号持ちに降格は免れませんよ、それに、貴方に対してこの程度の者達に遅れをとるような生易しい訓練など施していません」
文官は護身程度の武術を保持していればいいのだが、泉子の武術指導は詠香が施していた為、他の指導者に比べ、並でないことは言うまでもない、よって泉子も自分は護身程度の武術を持っているものと思いきや、実はそこらの武術道場を開いている道場マスターなら軽くあしらえる程の武術を身につけていたのである
よもやそんなこととはつゆ知らぬ泉子、自分の捕らえた者たちのレベルに大いに驚くのである
「だから泉子は自分の能力をあまり過小評価しなくてもいいのよ、自分が思っている以上に強くなっていますからね」
「文官としての能力は詠香先輩に見てもらったりしていたのでなんとなく上達しているとは思いましたが・・・武術に関してはあまり図る場が無かったから、上達しているのか不安だったんですよ、よかった」
「泉子だって何時も詠香に鍛えてもらっていて以前より詠香の動きが見えるとか、感じなかったの?」
「紫翠様、詠香先輩に指導してもらっているときにそういった感じはしなかったです」
「泉子のレベルに合わせて私もスピードやパワーを上げていきましたから、感じなかったかもしれませんね」
「詠香、駄目よ、ちゃんと上達したという実感を与えて、一言言ってから自分のスピードを上げていかないと、上達した実感を与えていかないとやる気無くしちゃうのだっているんだから、まぁ、泉子にその様子は無いからいいけど、でも、稽古付けてもらっているのに上達した実感が無いから詠香に悪いな、ぐらいは、感じていたでしょうけどね」
「大丈夫よ、泉子、ちゃんと上達していますからね」
「はい」
やっと自分の武術上達の実感を得た泉子、とりあえず一安心と胸をなでおろす、だが実際、自分の武術がどこまで通用するのか分からない泉子、考えた末、ある決断をする
「紫翠様、詠香先輩、私あの部屋に挑戦しようと思います」
「それは、やってみて損は無いわね」
「では文官入門から順々にレベルを上げてやってみなさい、この上は無理だと感じたらそれが貴方の今のレベルです」
「文官中級からでもいけるんじゃない?」
「いえ、一応文官入門からやらせていただきます」
そう言って訓練室に入っていく泉子
「でも心配ですね」
「じゃあ、泉子の上達振りを見る?」
そういって取り出した大きめの奉心球で部屋全体を投影し一部始終見渡せるようにし、泉子の戦いぶりを鑑賞する二人
「あれ?泉子って剣術?」
「ええ、剣術主体で一通りの得物は扱えるよう訓練しました」
「へ~」
「どうかしましたか?」
「うん、泉子は剣術と言うよりどちらかと言うと長物のほうがいけるんじゃないかな?」
「そうですか?」
「それに、この構え方?・・・剣術の構え方にしては体を横に向けすぎだし、利き足を下げすぎ」
「それは、私も気になってはいたのですが、特に問題は無かったので、それに長物を扱わせても得物に振り回されている感じがしましたので、剣術主体で訓練しました」
「詠香?泉子は畑仕事みたいなのってしてたのかな?たとえば桑とか持ってさ?」
「ええ、あの子の家には、畑もありますし、お父様が作物を育てることを趣味にしている方ですから、桑等の扱いは慣れていると思いますが?」
「ふ~ん・・・・・・・・・・・・・・・次は私が泉子の稽古付けてあげる、主に長物で、詠香はそのまま剣術稽古付けてあげて」
「分かりました、あまり無茶はしないでくださいね」
そんな話をしているとはつゆ知らぬ泉子は文官入門、初級をらくらくクリアし、中級に挑んでいた
「入門、初級はらくだったけど、中級にもなると、そうやすやすとは行かないな~ゾンビは足が遅いし、頭を潰せば終わる、スケルトンの動きには余裕で着いていけるから問題ないけど、問題はオークとコボルトか、オークは、スピードは、無いけどガードとパワーは侮れない、コボルトはガード、パワーはオークほどではないけどスピードについて行くのがやっと、と言ったところか、どうしようかな?ゾンビはあと、6体、スケルトンが4体、オークが2体、コボルト1体・・・即効でコボルトを倒して次にオークを倒せばスケルトンにゾンビだけ、ポーションはあと7本、万能薬4つ、その他薬類補充はしてこなかったけどゾンビの毒を食らわなければ十分持つ・・・よし、でやーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「おや、泉子が入っているのか?」
「凍華?泉子は入門、初級を終わって今中級に挑戦してるよ」
「凍華様、泉子の武術、状況分析能力なかなかの物ですよ、これなら中級もクリアできますね」
「んにゃ、無理でしょ」
「凍華もそう思う?武術、状況分析力、優れてはいるんだけど何か足りないのよ」
「泉子、自身の武術、モンスターの能力分析はしている、みたいだけど、・・・」
「二人とも何を言っているのです?この調子でいけば中級も・・・凍華様?紫翠?」
詠香は、稽古をつけていたため泉子の武術は知っているし、入門、初級を見ていてモンスターの能力分析も出来ていることがわかったのだが、凍華と紫翠の言葉に自分の見落としがあるのか、それともこの二人の気の回しすぎなのか?今一度泉子の動きを分析し直すことにした
(ゾンビはまったく問題無い、スケルトンに対しては余裕を持って対応しているオークに対しては攻撃後の隙を見逃さず倒している、コボルトはスピードに少し翻弄されているところがあるとは言え、無理に追いかけることなく、確りと動きを追い対応している・・・問題は・・・無い・・・けど、この二人があんなことを言い出すと、言うことは私の見落としがどこかに必ずある、私の見落としはどこに?)
泉子の能力分析をしてみる物の個々の対応、自分の能力あまり問題が無いように見えるが凍華の言葉で自分の見落としが無いか確認する。
「凍華?分かった?」
「紫翠?見りゃ分かるだろ?敵個々の能力分析、自分の能力分析、この二つに関しては問題無いけど、空間把握能力は?・・・紫翠、詠香、泉子にシミュレーション訓練やった?さっきから見ていると、敵のいる位置を考慮に入れた動きがまったく見られないし、移動経路を追っていくと敵の攻撃範囲に入ってしまっているところもある、そこを突かれたらあっという間だぞ・・・中級をクリアするのは運しだいだな」
そう、泉子は詠香との訓練で一対一の戦闘訓練しか、していなかった為、個々の能力分析をしたあとに、的を決めてしまうと、その的に集中するあまり、他の敵の位置まで気が回っていないのである、思わず訓練を中止しようとする詠香を止める凍華
「中断するより、泉子自身に自分の限界を見極めさせないとこれをやる意味がないよ」
「そうですね」
「泉子は、シミュレーション訓練と一対多数の戦闘訓練、チームプレイを鍛えれば戦場で死ぬことだけは無くなるな、まぁ、泉子が戦場に出ることは無いけどね、・・・多分」
「まだまだ、課題は多いですね」
そんな話をしていると訓練室のドアが開き中から血みどろの泉子が出てきた
「泉子?大丈夫なのですか?」
「大丈夫~?」
「大丈夫か?」
「はい、凍華様、紫翠様、詠香先輩、なんとか中級クリアしました」
それだけ言うと、ダメージと疲れのせいかそのまま熟睡する泉子
流仙廷・薬師病棟宮
「う、う~ん」
「気がつきましたか?」
「はい、すみません、もう大丈夫です」
「いいえ、もう少し休んでいきなさい、体調はまだ万全ではないでしょ?」
「では、お言葉に甘えて・・・あっ、私は文子官・泉子ともうします、よろしくお願いします」
「自己紹介まだでしたね、私は薬師病棟宮で、薬師を勤める、名を巴 布冥(ともえ ふめい)と申します、何かあったときはいらっしゃいね」
「はい、よろしくお願いいたします、巴様」
「布冥でいいですよ、立場的には泉子さんの方が上なのですからね」
そう、泉子は副文官長・詠香の「六芒桜」の紋に牡羊座の官席が与えられているのに対し、巴は「四芒蘭」の紋を与えられ登録書簡管理局・局長を務めているが副文官長・詠香の管理下のため実質「六芒桜」の下に「四芒蘭」があるため、一応泉子の方が巴よりも上位となる
「布冥さんは薬師?と言うことは薬の調合や管理を主にしているんですか?」
「ええ、いろいろな地域の草花などを薬に仕えないかとかね、そうだ、凍華にもお願いしているけどこのさいだし、泉子さんにもお願いしようかな」
「何を、ですか?」
「薬の調達、と言っても難しいこと、じゃないの何処か出張とかいった時にその土地に生えている草花を取ってきて欲しいの」
「でも、私では凍華様ほど役に立てるかどうか」
「いいのよ、そんなこと気にしなくて、実際、凍華が取ってきたもので本当に薬として役に立った物なんて、ほんの一握りも無いのよ、それに毒にはなっても、薬にならない物や、毒にも薬にもならない物もあったのよ」
「そうなのですか?」
「そう、だから何でもいいから沢山取ってきてくれればいいの、薬になるかどうかは、私の仕事だからね」
「そういうことなら、分かりました出た先で何か見つけましたら取って来ます」
「じゃぁ、お願いね」
そして、深い眠りへ入っていく泉子
数日後、皆何やら慌しく掲示板に張られている予定表を見ている
「もうすぐ四方院会議か、この会議で何が決まるのか?」
「今まで何十回と行われているが、会議結果が正式に返ってきたことって、数回じゃないか?」
「いいや、多分片手で数えられるくらいだ」
「皆さんどうしたんですか?」
「泉子、四方院会議は知っているでしょ?あの四方の四王と各文武官長の8人で行われる会議よ」
「何でも、各文武官長達ですらその高度会議の内容について行けないとかって噂よ」
「そんなに高度な会議なんですか?」
「ええ、あまりの高度さに会議結果が発表されたことってあまり無いのよ、だから今回は発表されるかどうかで・・・今、賭けてるのよ」
「賭・・むええうう(だめですよ)」
大声を出しそうになる泉子の口を塞ぐ文子官
「し~、し~声が大きいって」
「まぁ~、でも大体がお昼おごるとかそんなのばかりよ、だから蠍座も見て見ぬ振りだしって言うか、あそこで発表されないほうに、賭けた人たちを、まとめている人見てみなよ」
「あれ、蠍座の甲夕」
「おっ、羊の泉子じゃん、何?賭ける?俺は未発表の方だけどな、ははははは」
「いいの?内部監査の貴方が賭け事なんて」
「賭け事と言っても昼飯だけだからな、これぐらいの娯楽がないと、仕事なんてやってらんねって、まぁ~、これがエスカレートするようなら、俺も上に報告しなきゃだけど、この程度で詠香さんは天秤の魅由を動かしたりはしないだろ」
「まぁ、ほどほどにね」
そう言って執務室へ向かう泉子だった
泉子が執務室へ入ると
「何だろう、お昼ご飯から少し高級レストランの夕食になっただけで、さっきの掲示板前での話と、まったくもって差の無い、賭け事の会話」
「いつもの事よ、こんなことで魅由さんを動かしていたら限が無いからね、放置しているのよ」
「詠香先輩、でも賭け事ですよ」
「これが金貨を賭けた賭博になったら、徹底的に潰しにかかりますけど、高々お昼や夕食代程度、勝っても負けても高が知れています、それに、この程度の娯楽でストレス発散できるなら、いいでしょう」
と言うより、この賭け事が無くなったら、本当に娯楽も無くなり、さらに言うなら執務終了後の娯楽も無い、と言うのも、万年人材不足の東方文官、十二宮の水瓶座、庭と東方娯楽を開催させる官席が会っても人がいない、実際十二宮あっても牡羊座の泉子を始め、乙女座の東真 凛(とうま りん)、天秤座の霧生 魅由(きりゅう みゆ)、蠍座の佐久間 甲夕(さくま こうゆう)の四人しかいない、だから詠香が働かなければ、今頃庭なんて荒れ放題で人が休める憩いの場にはなっていないであろう事は、言うまでも無い
「泉子もたまには休暇を取って、三方の娯楽を満喫してきたら?いい息抜きになると思うわよ」
三方の娯楽とは、北方の娯楽は登山、森林浴、紅葉鑑賞など、西方の娯楽は西王・白椰経営のカジノ(王が経営しているが、セレブから一般の人まで幅広い客層、そして来た客にはその日の賭け使用料金と給料とを見合わせ、家計にひびく場合は門前払い、その日の使用料金を1.5倍超えた者は強制退場させられる、とても家計にやさしいカジノである)南方の娯楽は主に華南、少佳の二人によるファッションショー、この二人以外のファッションショーも行われる、ファッション以外にも鞄、靴、絵画、漫画、などなど多分娯楽の一番多い国は南方・鳳原国で、あろうことは間違いない、むしろ娯楽の無い日の方が、少ないくらいだからである
「あっ、詠香様、じゃぁ5日間くらい私と泉子休み貰っていいですか?今、占いしていたら「一番身近な人か、それに順ずる人と西方に行くと良き出会いがある」って出たんです」
「あら?占いって自分のことは占えないのではなかった?」
「はい、ですから泉子を一回解して占いをしたんです、だ・か・ら休暇くださーい」
「まったく、貴方は、まぁいいでしょう、泉子も羽を伸ばしていらっしゃい」
「やったー、わーい、わーい」
「でも、いいんですか?」
西方旅情どうなることやら。
と、不意に細い路地へと姿を消した泉子、つけていた者も不意を付かれ、
「くそ、見失った」
「馬鹿、何してんだ、」
(あれ?二人・・・さっき感じてた殺気って二人分、この程度なら潰せそうだな・・・私の持ってる武器はスカート裏に隠してある、この三本をつなぎ合わせて、先の袋を取った槍と、あとは、拳銃、撒菱に投げナイフが10本・・・これだけあれば足りるかな?)
「さっきこの路地に入るのを見たぞ、傷つけずに済ませたかったが、しかたねえ」
(うわ、あいつら手持ち武器ナイフだけ?・・・ぽいな・・・この先の開けた場所まで行けばこっちは槍に拳銃まであるんだし何とかなるか・・・よし)
覚悟を決め路地先の工場まで一気に走りぬいた泉子、
「まっ、待ちやがれ」
そこは見るからに廃工場、開けた場所に出た泉子は、すばやく槍を組立追ってきた二人を迎え撃つ
「なっ、なんで槍なんか持ってやがるんだ」
「俺が知るか」
「痛い目見る前に捕まってくれるとうれしいな」
泉子の話を聞いているのか、いないのか、分けのわからないことを言い出す二人組み
「おい、情報と違うぞ」
「ああ、それにあの服装、あれは文子官の着る文装、確かやつは武官だったはず、どういうことだ」
困惑する二人の隙をつき先制する泉子
「ぐふ」
泉子の持つ槍をもろに喉本に食らった一人は白目を向いて気絶、もう一人も何が起こったのかわからず、不意に白目を向いて倒れる仲間を見て唖然とするが、我に帰り泉子にナイフの切っ先を向ける
「貴様、何者だ?」
「それはこっちの台詞よ、貴方たちさっきの話からすると私を誰かと間違えたみたいだけど、この紋章をみて分からないの?
「六芒星に桜、と言う事はおまえ、副文官長直属の文子官」
「貴方たちこそ何者よ」
「ちっ」
どうやら答える気はないようだ、人違いで襲われ「何者だ」と言う質問に怒りを抑えていた泉子だったが、泉子の質問に答える気のないこの者に怒りを爆発させる
「「ちっ」ってこっちの台詞だって言ったでしょう、人違いしたうえに、襲ってきて先に誤って名乗りなさい」
その間打ち込むこと数十回、泉子がふと気付くと、すでに気絶している
「あれ?意外と弱いのね?とりあえず、詠香先輩に報告しておこう」
数日後
「泉子、この間貴方が捕らえた賊二人なかなかの有名人みたいよ」
「有名人?どういうことですか?」
「ほら」
詠香の差し出した雑誌に先日泉子を襲った二人組みのことが乗っていた、二人ともやり手のテロリスト、テロリストと言ってもやっていることは貴族や皇族などから金品を奪う盗賊、だが正体は分かっていたもののどこに潜伏しているか何時、行動を起こすか分からない神出鬼没な盗賊、盗賊団の頭目を勤めるほどの凄腕の盗賊だったのである。
「えっ、そんなにすごいやつらだったの?結構あっさり倒せたのに?」
いぶかしげる泉子に詠香は言う
「当然でしょ、仮にも私の直下「六芒桜」の紋を文装に入れている者がこの程度の者達に遅れをとるようでは困ります、これが1番から15番の番号持ちなら分からなくもありませんが、紋を持つことを許された者たちが遅れをとるようでは紋の剥奪、番号持ちに降格は免れませんよ、それに、貴方に対してこの程度の者達に遅れをとるような生易しい訓練など施していません」
文官は護身程度の武術を保持していればいいのだが、泉子の武術指導は詠香が施していた為、他の指導者に比べ、並でないことは言うまでもない、よって泉子も自分は護身程度の武術を持っているものと思いきや、実はそこらの武術道場を開いている道場マスターなら軽くあしらえる程の武術を身につけていたのである
よもやそんなこととはつゆ知らぬ泉子、自分の捕らえた者たちのレベルに大いに驚くのである
「だから泉子は自分の能力をあまり過小評価しなくてもいいのよ、自分が思っている以上に強くなっていますからね」
「文官としての能力は詠香先輩に見てもらったりしていたのでなんとなく上達しているとは思いましたが・・・武術に関してはあまり図る場が無かったから、上達しているのか不安だったんですよ、よかった」
「泉子だって何時も詠香に鍛えてもらっていて以前より詠香の動きが見えるとか、感じなかったの?」
「紫翠様、詠香先輩に指導してもらっているときにそういった感じはしなかったです」
「泉子のレベルに合わせて私もスピードやパワーを上げていきましたから、感じなかったかもしれませんね」
「詠香、駄目よ、ちゃんと上達したという実感を与えて、一言言ってから自分のスピードを上げていかないと、上達した実感を与えていかないとやる気無くしちゃうのだっているんだから、まぁ、泉子にその様子は無いからいいけど、でも、稽古付けてもらっているのに上達した実感が無いから詠香に悪いな、ぐらいは、感じていたでしょうけどね」
「大丈夫よ、泉子、ちゃんと上達していますからね」
「はい」
やっと自分の武術上達の実感を得た泉子、とりあえず一安心と胸をなでおろす、だが実際、自分の武術がどこまで通用するのか分からない泉子、考えた末、ある決断をする
「紫翠様、詠香先輩、私あの部屋に挑戦しようと思います」
「それは、やってみて損は無いわね」
「では文官入門から順々にレベルを上げてやってみなさい、この上は無理だと感じたらそれが貴方の今のレベルです」
「文官中級からでもいけるんじゃない?」
「いえ、一応文官入門からやらせていただきます」
そう言って訓練室に入っていく泉子
「でも心配ですね」
「じゃあ、泉子の上達振りを見る?」
そういって取り出した大きめの奉心球で部屋全体を投影し一部始終見渡せるようにし、泉子の戦いぶりを鑑賞する二人
「あれ?泉子って剣術?」
「ええ、剣術主体で一通りの得物は扱えるよう訓練しました」
「へ~」
「どうかしましたか?」
「うん、泉子は剣術と言うよりどちらかと言うと長物のほうがいけるんじゃないかな?」
「そうですか?」
「それに、この構え方?・・・剣術の構え方にしては体を横に向けすぎだし、利き足を下げすぎ」
「それは、私も気になってはいたのですが、特に問題は無かったので、それに長物を扱わせても得物に振り回されている感じがしましたので、剣術主体で訓練しました」
「詠香?泉子は畑仕事みたいなのってしてたのかな?たとえば桑とか持ってさ?」
「ええ、あの子の家には、畑もありますし、お父様が作物を育てることを趣味にしている方ですから、桑等の扱いは慣れていると思いますが?」
「ふ~ん・・・・・・・・・・・・・・・次は私が泉子の稽古付けてあげる、主に長物で、詠香はそのまま剣術稽古付けてあげて」
「分かりました、あまり無茶はしないでくださいね」
そんな話をしているとはつゆ知らぬ泉子は文官入門、初級をらくらくクリアし、中級に挑んでいた
「入門、初級はらくだったけど、中級にもなると、そうやすやすとは行かないな~ゾンビは足が遅いし、頭を潰せば終わる、スケルトンの動きには余裕で着いていけるから問題ないけど、問題はオークとコボルトか、オークは、スピードは、無いけどガードとパワーは侮れない、コボルトはガード、パワーはオークほどではないけどスピードについて行くのがやっと、と言ったところか、どうしようかな?ゾンビはあと、6体、スケルトンが4体、オークが2体、コボルト1体・・・即効でコボルトを倒して次にオークを倒せばスケルトンにゾンビだけ、ポーションはあと7本、万能薬4つ、その他薬類補充はしてこなかったけどゾンビの毒を食らわなければ十分持つ・・・よし、でやーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「おや、泉子が入っているのか?」
「凍華?泉子は入門、初級を終わって今中級に挑戦してるよ」
「凍華様、泉子の武術、状況分析能力なかなかの物ですよ、これなら中級もクリアできますね」
「んにゃ、無理でしょ」
「凍華もそう思う?武術、状況分析力、優れてはいるんだけど何か足りないのよ」
「泉子、自身の武術、モンスターの能力分析はしている、みたいだけど、・・・」
「二人とも何を言っているのです?この調子でいけば中級も・・・凍華様?紫翠?」
詠香は、稽古をつけていたため泉子の武術は知っているし、入門、初級を見ていてモンスターの能力分析も出来ていることがわかったのだが、凍華と紫翠の言葉に自分の見落としがあるのか、それともこの二人の気の回しすぎなのか?今一度泉子の動きを分析し直すことにした
(ゾンビはまったく問題無い、スケルトンに対しては余裕を持って対応しているオークに対しては攻撃後の隙を見逃さず倒している、コボルトはスピードに少し翻弄されているところがあるとは言え、無理に追いかけることなく、確りと動きを追い対応している・・・問題は・・・無い・・・けど、この二人があんなことを言い出すと、言うことは私の見落としがどこかに必ずある、私の見落としはどこに?)
泉子の能力分析をしてみる物の個々の対応、自分の能力あまり問題が無いように見えるが凍華の言葉で自分の見落としが無いか確認する。
「凍華?分かった?」
「紫翠?見りゃ分かるだろ?敵個々の能力分析、自分の能力分析、この二つに関しては問題無いけど、空間把握能力は?・・・紫翠、詠香、泉子にシミュレーション訓練やった?さっきから見ていると、敵のいる位置を考慮に入れた動きがまったく見られないし、移動経路を追っていくと敵の攻撃範囲に入ってしまっているところもある、そこを突かれたらあっという間だぞ・・・中級をクリアするのは運しだいだな」
そう、泉子は詠香との訓練で一対一の戦闘訓練しか、していなかった為、個々の能力分析をしたあとに、的を決めてしまうと、その的に集中するあまり、他の敵の位置まで気が回っていないのである、思わず訓練を中止しようとする詠香を止める凍華
「中断するより、泉子自身に自分の限界を見極めさせないとこれをやる意味がないよ」
「そうですね」
「泉子は、シミュレーション訓練と一対多数の戦闘訓練、チームプレイを鍛えれば戦場で死ぬことだけは無くなるな、まぁ、泉子が戦場に出ることは無いけどね、・・・多分」
「まだまだ、課題は多いですね」
そんな話をしていると訓練室のドアが開き中から血みどろの泉子が出てきた
「泉子?大丈夫なのですか?」
「大丈夫~?」
「大丈夫か?」
「はい、凍華様、紫翠様、詠香先輩、なんとか中級クリアしました」
それだけ言うと、ダメージと疲れのせいかそのまま熟睡する泉子
流仙廷・薬師病棟宮
「う、う~ん」
「気がつきましたか?」
「はい、すみません、もう大丈夫です」
「いいえ、もう少し休んでいきなさい、体調はまだ万全ではないでしょ?」
「では、お言葉に甘えて・・・あっ、私は文子官・泉子ともうします、よろしくお願いします」
「自己紹介まだでしたね、私は薬師病棟宮で、薬師を勤める、名を巴 布冥(ともえ ふめい)と申します、何かあったときはいらっしゃいね」
「はい、よろしくお願いいたします、巴様」
「布冥でいいですよ、立場的には泉子さんの方が上なのですからね」
そう、泉子は副文官長・詠香の「六芒桜」の紋に牡羊座の官席が与えられているのに対し、巴は「四芒蘭」の紋を与えられ登録書簡管理局・局長を務めているが副文官長・詠香の管理下のため実質「六芒桜」の下に「四芒蘭」があるため、一応泉子の方が巴よりも上位となる
「布冥さんは薬師?と言うことは薬の調合や管理を主にしているんですか?」
「ええ、いろいろな地域の草花などを薬に仕えないかとかね、そうだ、凍華にもお願いしているけどこのさいだし、泉子さんにもお願いしようかな」
「何を、ですか?」
「薬の調達、と言っても難しいこと、じゃないの何処か出張とかいった時にその土地に生えている草花を取ってきて欲しいの」
「でも、私では凍華様ほど役に立てるかどうか」
「いいのよ、そんなこと気にしなくて、実際、凍華が取ってきたもので本当に薬として役に立った物なんて、ほんの一握りも無いのよ、それに毒にはなっても、薬にならない物や、毒にも薬にもならない物もあったのよ」
「そうなのですか?」
「そう、だから何でもいいから沢山取ってきてくれればいいの、薬になるかどうかは、私の仕事だからね」
「そういうことなら、分かりました出た先で何か見つけましたら取って来ます」
「じゃぁ、お願いね」
そして、深い眠りへ入っていく泉子
数日後、皆何やら慌しく掲示板に張られている予定表を見ている
「もうすぐ四方院会議か、この会議で何が決まるのか?」
「今まで何十回と行われているが、会議結果が正式に返ってきたことって、数回じゃないか?」
「いいや、多分片手で数えられるくらいだ」
「皆さんどうしたんですか?」
「泉子、四方院会議は知っているでしょ?あの四方の四王と各文武官長の8人で行われる会議よ」
「何でも、各文武官長達ですらその高度会議の内容について行けないとかって噂よ」
「そんなに高度な会議なんですか?」
「ええ、あまりの高度さに会議結果が発表されたことってあまり無いのよ、だから今回は発表されるかどうかで・・・今、賭けてるのよ」
「賭・・むええうう(だめですよ)」
大声を出しそうになる泉子の口を塞ぐ文子官
「し~、し~声が大きいって」
「まぁ~、でも大体がお昼おごるとかそんなのばかりよ、だから蠍座も見て見ぬ振りだしって言うか、あそこで発表されないほうに、賭けた人たちを、まとめている人見てみなよ」
「あれ、蠍座の甲夕」
「おっ、羊の泉子じゃん、何?賭ける?俺は未発表の方だけどな、ははははは」
「いいの?内部監査の貴方が賭け事なんて」
「賭け事と言っても昼飯だけだからな、これぐらいの娯楽がないと、仕事なんてやってらんねって、まぁ~、これがエスカレートするようなら、俺も上に報告しなきゃだけど、この程度で詠香さんは天秤の魅由を動かしたりはしないだろ」
「まぁ、ほどほどにね」
そう言って執務室へ向かう泉子だった
泉子が執務室へ入ると
「何だろう、お昼ご飯から少し高級レストランの夕食になっただけで、さっきの掲示板前での話と、まったくもって差の無い、賭け事の会話」
「いつもの事よ、こんなことで魅由さんを動かしていたら限が無いからね、放置しているのよ」
「詠香先輩、でも賭け事ですよ」
「これが金貨を賭けた賭博になったら、徹底的に潰しにかかりますけど、高々お昼や夕食代程度、勝っても負けても高が知れています、それに、この程度の娯楽でストレス発散できるなら、いいでしょう」
と言うより、この賭け事が無くなったら、本当に娯楽も無くなり、さらに言うなら執務終了後の娯楽も無い、と言うのも、万年人材不足の東方文官、十二宮の水瓶座、庭と東方娯楽を開催させる官席が会っても人がいない、実際十二宮あっても牡羊座の泉子を始め、乙女座の東真 凛(とうま りん)、天秤座の霧生 魅由(きりゅう みゆ)、蠍座の佐久間 甲夕(さくま こうゆう)の四人しかいない、だから詠香が働かなければ、今頃庭なんて荒れ放題で人が休める憩いの場にはなっていないであろう事は、言うまでも無い
「泉子もたまには休暇を取って、三方の娯楽を満喫してきたら?いい息抜きになると思うわよ」
三方の娯楽とは、北方の娯楽は登山、森林浴、紅葉鑑賞など、西方の娯楽は西王・白椰経営のカジノ(王が経営しているが、セレブから一般の人まで幅広い客層、そして来た客にはその日の賭け使用料金と給料とを見合わせ、家計にひびく場合は門前払い、その日の使用料金を1.5倍超えた者は強制退場させられる、とても家計にやさしいカジノである)南方の娯楽は主に華南、少佳の二人によるファッションショー、この二人以外のファッションショーも行われる、ファッション以外にも鞄、靴、絵画、漫画、などなど多分娯楽の一番多い国は南方・鳳原国で、あろうことは間違いない、むしろ娯楽の無い日の方が、少ないくらいだからである
「あっ、詠香様、じゃぁ5日間くらい私と泉子休み貰っていいですか?今、占いしていたら「一番身近な人か、それに順ずる人と西方に行くと良き出会いがある」って出たんです」
「あら?占いって自分のことは占えないのではなかった?」
「はい、ですから泉子を一回解して占いをしたんです、だ・か・ら休暇くださーい」
「まったく、貴方は、まぁいいでしょう、泉子も羽を伸ばしていらっしゃい」
「やったー、わーい、わーい」
「でも、いいんですか?」
西方旅情どうなることやら。
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