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しおりを挟む息が切れているみたいに肩で呼吸をするベルナルダンお兄様が部屋に足を進めると、案内してきたであろう侍女が扉を閉めて部屋から出て行きました。
沈黙がこの部屋を包む。
ベルナルダンお兄様が近づいてくる。
私はベルナルダンお兄様を目で追う。
あんなに会いたかったのだもの、目が離せるわけが無い。
「時間切れかな?…兄さん、じゃあ、俺はおとなしく帰るよ。…後は、うまくやってよ。今度こそ。」
ティーシルが立ち上がりながらそう言いました。
ドアに向かって歩き出すティーシル。
ベルナルダンお兄様とすれ違うときにお兄様の肩をポンと叩いたのが目に入りました。
それに答えるようにゆっくりとベルナルダンお兄様が頷くのが見えます。
部屋の外に出て行くティーシルの足音に、その後から2人分の足音が聞こえます。
きっとスタニックとシーマが後を追って行ったのでしょう。
「…元気そうだね。会えて嬉しいよ。…どうせならもっとロマンティックに再会したかったね。」
そう言ってベルナルダンお兄様は私に片目を瞑って見せました。
ウィンク?
今、私にウィンクしたの?
小さい頃に仲良く遊んでくださったあの頃を思い出します。
すごくときめいた事を。
「…昨夜、ティーシルに怒られたよ。いや、兄弟ケンカだったかな。ケンカなんて久しぶりでやり方を忘れてしまってね。1発、まともに受け止めてしまった…。」
そう言って、摩る左の頬はくすんだ色をしています。
その痛々しさに、驚きと戸惑いで私は自分の口に手を当ててしまう。
「ティーシルが言うには、私がグズグズしているから、横から変なヤツにエミリを狙われるんだ、てね。…グレン次期宰相殿は変なヤツでもないのにね。」
ちょっとおどけたように言うのは、私がベルナルダンお兄様の頬を見て怯えているから、和ませようとしてかしら。
小さな頃は、そんな話し方をしてくれていたけど、近頃ではめっきり聞いた事がない口調ですね。
なつかしくて、うれしくて少しホッとします。
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