公爵様のわかり辛い溺愛は、婚約を捨る前からのようです

奈井

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幕間-⑧

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押し込められていたせいで髪は絡まりあい、口に布が詰められ、手と足が縛られていた。

小刻みに震え、ぎゅっと瞑る目が恐る恐る開き始める。

きっとまだ、ジェラールが側にいることをわかっていない。

エルヴィナが自分を見る事だけを願いながら、唇を噛み、その時を待つ。

瞼が開ききる前に、恐らくジェラールだとわかったのだろう。

すぐにこれ以上ないほど目を開き、それに見る間に透き通る水が溜まる。

声にならない呻くような声が、口に詰められた汚い布越しに聞こえてくる。

ジェラールはエルヴィナに苦痛を与える、モノたちを急いで取り払う。

足の紐を解き終わり、静かにそして強くエルヴィナを抱きしめた。

エルヴィナより歳は二つ上のジェラールは、まだ少年の線の細さを纏う。

その細い肩にエルヴィナが顔を埋め、嗚咽が身体の中に響く。

「・・・エルヴィナ・・・。」

何か安心するような言葉を掛けたいと思ったが、名を呼ぶだけで精一杯だった。

ジェラールも喉に何かが詰まったような、安心しているのにとても息苦しい感じでいっぱいだった。

どれくらいそうしていたのか、とても長い時間だった気がするが、エルヴィナの声が次第に静まり呼吸も落ち着いてきたのがわかった。

「・・・ジェラールはきっと来てくれると思って信じてた。」

蚊の鳴くような、とても小さな声でエルヴィナが呟く。

「え?・・・もう1度言って。」

そっと、ジェラールから身体を離し目を合わせるエルヴィナ。

「ジェラールはきっと来てくれると思って信じてた。・・・だって、ずーと一緒だったもの。おとうさまよりも、おかあさまよりも、おにいさまよりも。だから、絶対って、信じてたの。」

水の膜に覆われた、まっすぐなエルヴィナの目には綺麗で少しだけ強い光が射していた。

目を見開くジェラール。

(胸が熱くなる。この感情は・・・好きという感情よりももっと上の・・・。)

「こんなめには、もう合わせない。僕が守るから。だから、安心して僕の側にいて・・・。」

1度離れた身体をもう1度柔らかく、傷をつけないようにふんわりと抱きしめたジェラール。

ジェラールの細い肩にエルヴィナが頷くのを感じた。

「・・・じゃあ、今までと変わらないね。」

そう言って、エルヴィナは少しだけ笑った。





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