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幕間-⑨
しおりを挟むエルヴィナを攫った輩たちは、警備騎士団に見つかり、追われたいる時もエルヴィナを連れてはいたが、足手まといになると思った。
売れる金になる者を持ち帰らない選択肢は無い。
警備騎士団を撒いた後に取りもどろうと、逃げる途中に見つけた岩の隙間に、麻袋に詰めて、隠して置き去りにしたのだった。
2人でクレアスに乗り、帰路についたが、安堵したエルヴィナは、ジェラールの腕の中で気を失ったように眠った。
さらに極度の緊張のせいで帰宅後も高熱を出し、目覚めたのは発見された3日後だった。
そして、エルヴィナは、攫われた事も、ジェラールの別荘に来ていた事も、ここ1年ほどの記憶が、熱と一緒に無くなってしまっていたのだった。
この頃のジェラールは、誰にも打ち明ける事のできない闇を抱えていた。
それを隠すため、14歳のジェラールは人前ではいい子、いい家族を演じていた。
しかし本当の所は、裏では他の女性を側に置く父と、それを知りながら知らない振りを続け、伯爵家を守ろうとする母の姿にうんざりしていたのだった。
貴族とはそいうもの、家族とはそういうもの、と思い込もうとしても、少年から大人へと成長しようとしているジェラールには、受け入れがたい考えだった。
その家族の暗闇に、今回の事件で、自分だけを信じて待っていたと言うエルヴィナの言葉が響いた。
そして、ジェラールの心を救い、新たな目標を持つことで、一すじの光を見つける事ができたのだ。
それは、どんな事をしてでも、自分の両親とは違う、本当の温かい家族をエルヴィナと作りたい。
この事件を切欠にジェラールが心に決めたことだった。
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