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しおりを挟む「この国ではいくつかの大きな儀式が決められている。」
デフの話は長かったが小さく頷きながら穂乃香は聞いた。
10年に1度、月と地の力が満ちる時にこの国の最高に力がある魔力者が知恵女神(ソフィア)を呼び出す。
ソフィアは、この国より知恵の多き所からやってくる。
かつて、この国だけではなく周辺諸国まで巻き込んだ暗黒の時代があった。
戦を繰り返し、侵略、殺戮、略奪、破壊をなんの疑いも無く続く日々。
人の命だけでなく、心も奪った時代。
気がつけば、世の中は何も無くなっていた。
命を奪う意味も目的も、残された少人数の頭ではわからなかった。
このままでは最後の1人になるまで戦いが続く。
そこに意味がないことはわかっていた。
そこで、国など関係なく、残されて者同士で話し合った。
戦ではなく、自分たちが生き、自分たちの子孫が幸せになる未来を。
その中にいた数名の魔力者が、以前戦いの中、行った禁断の魔力”召喚”で呼び寄せた者は、驚くほどの知力を持っていた事を記憶していた。
禁断の魔力だけあって、残された魔力者には使える者がいなかった。
何度かの挑戦ののち、月と地の力が満ちる時に、その力を借りて成功に導く事ができたのだ。
そして、そのソフィアの知力を借り徐々に平和を取り戻した。
現在、どの国も安定していて、知恵を借りなければいけない状況ではない。
だが、いつ何時、過去のような危機に合うかわからない。
その時の為に魔力者の腕を磨く意味でもこの儀式は必要とされている。
そして、ソフィアが持つ知恵も進化していてこれも必要な知識だった。
決まって女性だったこともあり、知恵女神(ソフィア)と呼ばれるようになる。
そして、呼ばれる前に住んでいた場所も”日本”という共通の場所だった。
そこは、ありがたい事に言葉はこの世界と同じ、お互い不自由なく会話ができた。
しかし、書く文字は似ても似つかぬ物。
選ばれるソフィアは魔力者が言うに光輝く魂を持っているのですぐにわかるという。
輝いているだけあって、召喚された後も堂々とした人格者でカリスマ性が有り勤勉者ばかりだった。
召喚された直後は混乱しているソフィアだが、勤勉者の気質なのかこちらの世界に興味を抱き研究機関に属し仕事を始めこちらに馴染むのも早い。
ソフィアの選出の方法は、まず、透視の魔力を持つ者がソフィアとなる者決める。
あらかじめ念写などの方法でその姿はこちらの知るところとなる。
それを元に禁断の魔力”召喚”が行われる。
しかし、寸分の狂いもなくソフィアの位置に魔力を送らなければ失敗する。
召還が発動されるとソフィアに到達するまで、少々の時間がかかる。
空間を歪ませ、無理やり捩るのでズレが生じるのだろう。
1つ、2つ、3つ、4つ、5つ・・・。
失敗はその5つ数える間に起こる事がほとんどだ。
例えば、直前にソフィアが動いてしまい場所がずれた場合…。
こちらの魔力者がフラついたりすれば魔力の送る場所がずれる…。
どちらにしても、ずれた所にソフィアがいなければ召喚できずに失敗となる。
でも、ずれた場所に他の人がいれば、ソフィアではない者の召喚成功となる。
ソフィアでなければ儀式は失敗に代わりはない。
次のチャンスは月と地の力が満ちる10年後。
10年に1度の儀式。
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