誤召喚!~お仕事、ください。~

奈井

文字の大きさ
7 / 19

しおりを挟む

「この国ではいくつかの大きな儀式が決められている。」

デフの話は長かったが小さく頷きながら穂乃香は聞いた。



10年に1度、月と地の力が満ちる時にこの国の最高に力がある魔力者が知恵女神(ソフィア)を呼び出す。
ソフィアは、この国より知恵の多き所からやってくる。
かつて、この国だけではなく周辺諸国まで巻き込んだ暗黒の時代があった。
戦を繰り返し、侵略、殺戮、略奪、破壊をなんの疑いも無く続く日々。
人の命だけでなく、心も奪った時代。
気がつけば、世の中は何も無くなっていた。
命を奪う意味も目的も、残された少人数の頭ではわからなかった。
このままでは最後の1人になるまで戦いが続く。
そこに意味がないことはわかっていた。
そこで、国など関係なく、残されて者同士で話し合った。
戦ではなく、自分たちが生き、自分たちの子孫が幸せになる未来を。
その中にいた数名の魔力者が、以前戦いの中、行った禁断の魔力”召喚”で呼び寄せた者は、驚くほどの知力を持っていた事を記憶していた。
禁断の魔力だけあって、残された魔力者には使える者がいなかった。
何度かの挑戦ののち、月と地の力が満ちる時に、その力を借りて成功に導く事ができたのだ。
そして、そのソフィアの知力を借り徐々に平和を取り戻した。


現在、どの国も安定していて、知恵を借りなければいけない状況ではない。
だが、いつ何時、過去のような危機に合うかわからない。
その時の為に魔力者の腕を磨く意味でもこの儀式は必要とされている。
そして、ソフィアが持つ知恵も進化していてこれも必要な知識だった。
決まって女性だったこともあり、知恵女神(ソフィア)と呼ばれるようになる。
そして、呼ばれる前に住んでいた場所も”日本”という共通の場所だった。
そこは、ありがたい事に言葉はこの世界と同じ、お互い不自由なく会話ができた。
しかし、書く文字は似ても似つかぬ物。
選ばれるソフィアは魔力者が言うに光輝く魂を持っているのですぐにわかるという。
輝いているだけあって、召喚された後も堂々とした人格者でカリスマ性が有り勤勉者ばかりだった。
召喚された直後は混乱しているソフィアだが、勤勉者の気質なのかこちらの世界に興味を抱き研究機関に属し仕事を始めこちらに馴染むのも早い。

ソフィアの選出の方法は、まず、透視の魔力を持つ者がソフィアとなる者決める。
あらかじめ念写などの方法でその姿はこちらの知るところとなる。
それを元に禁断の魔力”召喚”が行われる。
しかし、寸分の狂いもなくソフィアの位置に魔力を送らなければ失敗する。
召還が発動されるとソフィアに到達するまで、少々の時間がかかる。
空間を歪ませ、無理やり捩るのでズレが生じるのだろう。
1つ、2つ、3つ、4つ、5つ・・・。
失敗はその5つ数える間に起こる事がほとんどだ。
例えば、直前にソフィアが動いてしまい場所がずれた場合…。
こちらの魔力者がフラついたりすれば魔力の送る場所がずれる…。
どちらにしても、ずれた所にソフィアがいなければ召喚できずに失敗となる。
でも、ずれた場所に他の人がいれば、ソフィアではない者の召喚成功となる。
ソフィアでなければ儀式は失敗に代わりはない。
次のチャンスは月と地の力が満ちる10年後。
10年に1度の儀式。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

氷弾の魔術師

カタナヅキ
ファンタジー
――上級魔法なんか必要ない、下級魔法一つだけで魔導士を目指す少年の物語―― 平民でありながら魔法が扱う才能がある事が判明した少年「コオリ」は魔法学園に入学する事が決まった。彼の国では魔法の適性がある人間は魔法学園に入学する決まりがあり、急遽コオリは魔法学園が存在する王都へ向かう事になった。しかし、王都に辿り着く前に彼は自分と同世代の魔術師と比べて圧倒的に魔力量が少ない事が発覚した。 しかし、魔力が少ないからこそ利点がある事を知ったコオリは決意した。他の者は一日でも早く上級魔法の習得に励む中、コオリは自分が扱える下級魔法だけを極め、一流の魔術師の証である「魔導士」の称号を得る事を誓う。そして他の魔術師は少年が強くなる事で気づかされていく。魔力が少ないというのは欠点とは限らず、むしろ優れた才能になり得る事を―― ※旧作「下級魔導士と呼ばれた少年」のリメイクとなりますが、設定と物語の内容が大きく変わります。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」  ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...