恋、できる?!~ピアノ王子の恋はいたって普通(女子)~

奈井

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「仕事でピアノ弾いてるんだよ。」

「ピアノ?弾いてる?」

「そう・・・。」

そうなんだ。

だから、ラテアートが音符なんだ。

そう言われて昊人の指先を見る。

細くて長い、そして綺麗。

爪も短く切りそろえてあってお手入れされている感じがした。

しばらくお手入れをサボっていた自分の指先を手で覆い膝上で隠す裕にだって乙女の羞恥心がある。

可愛いかった音符をグルグルとかき混ぜ一口ラテを飲む昊人。

喉仏が動くのを見ると、男性なんだなあ、と改めて感じた。

自分はもう少しこのミルクでできた熊を見ていたい。

視線をミルク熊に置いたまま裕は、どこまで尋ねていいのか思案する。

高い時計をしているくらいだから、自分は知らないが有名なピアニストなのかな?

裕はクラシックなどぜんぜんわからない。

裕が聞く音楽は流行のポップスくらい。

それさえ、最近の流行など詳しくない。

スマホの入れているアプリが薦めてくれる曲を昼休みや通勤電車内で聞くくらいだ。

さっきの言い出し難そうな昊人の態度が気にかかる。

顔を出さない覆面ミュージシャンとか?

実家はお金持ちで道楽でその辺のお店で弾いているだけとか?

これでは疑われた理由も検討がつかない。

いろいろ考えていても仕方が無い。

会話も続かないし・・・。

「どんな曲を弾いてるんですか?」

この質問なら当たり障りないかな。

そう選んで口にした質問。

どうして自分が気を使わなければいけないのか!と思う部分もあるが、昊人が纏う柔らかい空気感がそうさせる。

「クラシックが多いけど、自分たちで作ったのもやるよ。」

「自分たち?・・・1人では・・・ないの?」

裕のピアニストのイメージは、舞台の上で1人でグランドピアノに向かって弾いている事しか思い浮かべられない。

「あ~、4人でやってる。俺はピアノだけど他はヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ。本当はコントラバスも加えたかったけど仲が良い人がいなくてね・・・。みんな、音楽大学の時の友達なんだ。」

「友達同士って、なんだか楽しそうですね。」

「楽しいよ。みんな、小さいときから同じように音楽をやってきているからね。楽しいことも、辛いこともお互い理解できるから。男同士だから気兼ねもないね。」

「じゃあ、付き合いも長いんですね。」

「そーでも無いかな。楽器が違うから、教えてもらう先生も違うし、コンクールでも部門が違うからね。お互い顔と名前は知っているけど、ちゃんと話して友達ってお互いが認識できたのは大学に入ってからだった。」

例え同じ楽器でも、同じ先生に教えてもらっていても、同じコンクールに出場していても、ライバルにはなるが友達になるのは難しそうだな、と裕は思った。

「私、クラシックとかぜんぜん聞かないからわからないけど・・・もしかして、昊人さんって有名な方ですか?」

裕は、失礼かな?て思ったから、クラシックを知らない言い訳を前置きした。






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