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24、基準
しおりを挟む車を停めた地下駐車場も広かった。
そこから、いったん1階のエントランスにエレベーターで上がった事を順に思い出す。
1階のエントランスも広く、受付けのカウンターのところにコンシェルジュがいた。
それを見たとき、ホテルかな?と思った。
どこかの会社かホテルかマンションか、裕には車を降りた時点で区別がつかなかった。
もうすぐ次の日になってしまうこんな時間なのに、おかえりなさいませ、とさわやかに挨拶する彼らを見て、ここは住居を目的とするマンションの可能性が高いと思った。
1階よりさらに上へと上がるエレベーターは駐車場のエレベーターより更に広く落ち着いた色合いのものだった。
昊人の部屋の階についてからも廊下には毛足の長い絨毯、部屋の前には控えめなプレートに番号が付けられていたがポストのようなものはなかったので、まだホテルという選択肢を捨てる事ができなかった。
昊人に鍵を開けてもらい招き入れられた所で最高級マンションなんだとやっとわかった。
このようなところに来た事が無い裕にとって判断材料など何一つ無かったから仕方が無い。
自分の1人暮らしのマンションとあまりにも違う事に気分が落ち込む。
昊人の生活をある程度予想はしていたが思い知らされた事実に、ここへ来た事を後悔させる。
「・・・この前もそんな顔していたね。何を考えているの?」
気がつけば昊人がこっちをみていた。
「・・・別に、何も」
裕は目をそらし伏せた。
「そう?」
昊人の視線を感じはするが、返事だけは素っ気なかった。
考えていた事を誤魔化すにも、もっと可愛くできなかったのかと後悔する裕。
無邪気な梨奈のようにできれば、昊人に好きになってもらえなくても、嫌われないのにと思う。
そうしたら、またあのカフェで一緒に話くらいはできる関係が続けられるかもしれない・・・。
その時、頬に昊人の掌を感じた。
それに驚いた瞬間、近づいてくる昊人の顔が見えた。
電車のホームの時みたいにキスされる・・・
咄嗟にそう思ったが、拒む気持ちが起こらなかった。
予想に反して、昊人の唇が裕の頬ではなく、唇にふれた。
とても自然にふわんわりと柔らかく。
そして、すぐに離れた。
2人は目を閉じる事もせず、成り行きを見つめた。
裕は驚きと期待で目を反らす事なんてできないし、思い浮かばなかった。
それを了承と取ったのか、再び昊人の唇が裕のそれに近づく。
触れる寸前。
裕の唇から言葉がポロっとこぼれた。
「・・・気持ち悪くない。」
「え?」
裕の発言に一瞬にして眉を寄せる昊人。
「・・・”ない”ていう否定の意味は嬉しいけど、”気持ちが悪い”という表現はこっちの気分が悪くなる。ムードぶち壊しなんだけど。そう思わない?」
疑問系だけど、強い肯定に近い言い方に自分は失言したんだと、またまた後悔する。
「・・・ごめんなさい。でも、私にとってすごく大切な基準なんです。」
怒られた子供のように下を向く。
それを聞いて何か思い出すように何も無い天井を仰ぎ見る昊人。
「ああ~異性に触れられるのが苦手なんだったね。・・・ラテも入ったみたいだしソファに移動しようか。」
2人分のカップを持ち少しだけ微笑む昊人に安心した。
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