恋、できる?!~ピアノ王子の恋はいたって普通(女子)~

奈井

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番外編 再びの夜は仕切りなおしなんだとか・・・⑦

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ずいぶん寝たような気がするけど、身体が今までに無くだるく感じる。

裕は瞼を無理やり引き上げてみたもののいつもより暗い室内に、まだ夜中なのかと首だけであたりをみまわす。

自分の部屋とは違う厚地のカーテンの隙間からわずかな光がさすのが見える。

夜中ではないとわかれば、お腹の上に自分とは違う少し熱い体温が硬く存在している事に気が付く。

その硬さにギョッとしながらも記憶を辿れば、昨夜の事をすぐに思い出す。

そして一瞬にしてこの暗い室内で顔を赤くする。

めちゃくちゃ恥ずかしい・・・。

「初めて結ばれた」とか「あなたのものになれた幸せ」とかそんなドラマや小説で見聞きする感情は沸いてこない。

裸を異性に見られたのも、あんな格好をしたことも、あんな所を・・・、ただただ恥ずかしい気持ちだけが頭の中で渦巻いた。

更に現状として、自分も昊人も裸で密着していることも、付け加えて恥ずかしいのだ。

とにかく一人になりたい。

一人でいろいろ考えさせてくれ~。

この部屋で一人になれるのは・・・浴室!

そう思い当たれば、シャワーを浴びるのは普通の事なんだから、とここから逃げる自分を正当化させる。

にぶく痛みのある下腹部をそーとベッドの端へとずらし足を床につける。

「うっ・・・!」

上体をゆっくり起こし、ベッドに手をついて立とう足に力をこめれば、昨日、昊人と繋がった所に違和感を感じて思わず声が出た。

「裕?・・・どうした?!」

飛び起きて背中から裕に寄り添うように覗き込む昊人。

「・・・ごめんなさい、起こして。」

痛みを我慢したしかめっ面を見られたくないのと、絶賛恥ずかし中の裕はうつむいたまま。

「それより、どこか痛いのか?・・・そうか。答えずらい質問だったね。」

昨夜の事を思い出し、裕の身体の事情を察した。

「どこに行こうとしてた?とりあえずバスローブでも着る?」

そう言って昨夜脱いだバスローブを肩に掛けてやる。

「あ、ありがとう・・・。しゃ、シャワー浴びたいと思ったんだけど・・・。」

腕を通し前を結びながらしどろもどろの裕はぎこちない。

その様子を見ながら、自分もバスローブを羽織り、裕の前に立つ昊人。

「じゃあ、連れて行ってあげるよ。」

裕の膝裏に腕を入れ力強く抱き上げる。

暗闇の中、わずかな光でもすぐ近くにある綺麗な昊人の顔を見ればニッコリと笑っていた。

「お、重いから降ろして・・・。」

至近距離の綺麗な笑みにも照れるし焦る。

「大丈夫!どうせだから俺もシャワー浴びるよ。一緒に入ろう。」

さらに満面の笑みを向けてくるが、裕はそれどころではない。

「え?!い、い、一緒?イヤイヤイヤ、ありえないでしょ!ムリムリムリ・・・!」

ひたすら拒否の言葉を連呼する裕はきしむ身体をバタバタさせる。

「イヤイヤイヤ。大丈夫でしょ~。もう裕の事は裕よりも知ってるし。はい、大人しくして、じゃないと落としちゃうだろ?まあ、裕を落としたりしないから二人で転ぶことになるな。それで、腕の骨が折れればしばらく仕事を休む理由もできるし、裕に看病もしてもらえるだろうから、それはそれでいいかもね。」

昊人の仕事に支障が出ると言われれば、そんな事はさせられないとおとなしくなる裕だが、余裕の答えと態度にちょっとだけムカっときた。

大人しくなった裕を抱えバスルームへと足を進める昊人は機嫌が良さそうだ。

バスマットの上に裕を降ろすとすぐに唇を奪った。

力の入れずらい足の代わりに、昊人の袖につかまるように力を入れて握り、裕は自分の身体を支えた。

昊人の唇の官能を覚ます動きにそのわずかな力さえももっていかれる。

昊人は裕の前で結ばれている紐を解き、肩からバスローブを落とし、腰に腕をまわした。

その一連の流れにも、またまたムカッとする裕は自分から唇を離した。

本当は名残惜しかったことは内緒だ。







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