◆青海くんを振り向かせたいっ〜水野泉の恋愛事情

青海

文字の大きさ
39 / 70

真実の決意と青海くんの入院生活

しおりを挟む
 「透は多分もう大丈夫だ。俺……今日から学校行くから」
 
 翌朝早朝に帰ってきた真実は私に言った。
 
 「透のこれからの事を考えたら……俺はきちんとした大学行って、父さんの会社継いだ方がいいと思うんだ。ちゃんと稼げる場所作って、お前らを守れるようになりたいんだ」
 
 「私は……もう少し青海くんのそばにいるね」
 そう言うと真実は頷いた。
 
 3学期はもう始まっていた。
 難関の大学への進学を希望していた真実にとっては学校を休むのは良くないことだろう。
 
 私の希望する大学はそれほど厳しいわけでもなく、学力も今のところ問題ないと言われていたのでもう少しくらいなら休んでいても問題なさそうだった。

 もう二、三日だけ……そばにいてあげてもいいだろう。

 壁に掛けられたカレンダーを見る。
 一月もそろそろ中盤だ。
 私たちは約一年で高校卒業である。

 

 ★



 いつものように病室に行くが診察か何かの時間だったらしく、青海くんはいなかった。

 仕方がないのでそのまま病室で待つことにし、ベッドの脇に置かれた椅子に座る。

 待っている間暇だったのでベッド脇のテーブルに置かれた雑誌をなんとなく眺める。

 ……アルバイト情報誌……青海くんはまた何かアルバイトをする気なのだろうか?
 
 まだ怪我も治ってないのに……

 そう思っているとゆっくりとした足音が聞こえてきて、病室のドアが開いた。 

 「水野さん……またきてくれたんだ」

 そう言いながら微笑んでくれた青海くんは、ゆっくりとだが歩けるようになっていた。

 パジャマ姿に先日持ってきた真実のカーディガンを羽織った青海くん。

 「もう歩いて大丈夫なの?」

 そう聞くと青海くんは困ったように笑う。

 「いつまでも入院もしてられないし、早く身体戻さないとね」
 
 まだ身体が痛むのか青海くんはベッドの脇までゆっくりと歩き、座ろうとして声を漏らす。

 「っ……!!……まいったな……」

 慌てて手を貸そうとしたら青海くんに止められる。

 「ごめん……でも一人でこれくらいできないと……」

 痛みを堪えるかのように目を閉じた青海くんは足をそっと上げた。

 そのままベッドにゆっくり横たわった青海くんは、ゆっくりと息を吐く。

 「あ、そうだ水野さん、真実の上着……借りてきてくれてありがとね。コレなかったら寒かったから助かったよ」

 青海くんにそう言われて、気になっていたことを聞くことにした。

 「青海くん今残ってる服少ないんだね。クローゼット見させて貰ったんだけど持ってこれるものなかったから……」

 「ああ……服買うようにってお金貰ってたんだけど、そんなに必要ないから元々買ってなかったんだ。たくさん持ってても仕方ないし」

 そう言いながら青海くんは苦笑する。

 「本当ごめんね。こんな事ならもう何枚か買っておけば真実の服借りないで済んだのに……退院したら買わなきゃな……」

 なんとなくその場の空気が和らいだ気がしたので更に気になっていたことを聞く。

 「青海くん……この本……またバイトするの?もう少し……せめて怪我が治ってからにした方がいいんじゃない?」

 そう言うと青海くんはアルバイト情報誌を見つめた。

 「……一人になったんだから働かなきゃ食ってけないだろ。ここにいるのだってタダじゃないんだし」

 その言葉に私はハッとした。
 ……青海くんにはもう家族と呼べる人はいない……
 無責任なことを言ってしまったのではないだろうか……

 「水野さん……オレはもう大丈夫だからちゃんと学校に行った方がいいよ。学校休むと進学にも響くでしょ。本当ありがとね」

 青海くんはそう言いながら微笑んだ。

 


 
 なんだか気まずくなったところで病室のドアがノックされる。

 入ってきたのは担任の教師だった。

 担任の教師は青海くんに話があったらしく、少しの間席を外してくれと言われて私は家に帰ることにした。

 

 病院からの帰り道、ぼんやりと考える。

 勝手に青海くんとこのまま暮らせると思っていたけれど……

 考えてみれば青海くんはまだ未成年。

 学校に通い続けるためにも生活をするのにもお金がかかる。

 それは一体どのくらいの金額がかかるのか自分では検討もつかない。  

 青海くんはこれからどうなってしまうんだろう……

 

 不意に青海くんが痛みを堪えながら歩いている姿を思い出し、胸がぎゅうっと締め付けられるような気持ちになった。


 
 

 
 
 
 

 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなパン屋の恋物語

あさの紅茶
ライト文芸
住宅地にひっそりと佇む小さなパン屋さん。 毎日美味しいパンを心を込めて焼いている。 一人でお店を切り盛りしてがむしゃらに働いている、そんな毎日に何の疑問も感じていなかった。 いつもの日常。 いつものルーチンワーク。 ◆小さなパン屋minamiのオーナー◆ 南部琴葉(ナンブコトハ) 25 早瀬設計事務所の御曹司にして若き副社長。 自分の仕事に誇りを持ち、建築士としてもバリバリ働く。 この先もずっと仕事人間なんだろう。 別にそれで構わない。 そんな風に思っていた。 ◆早瀬設計事務所 副社長◆ 早瀬雄大(ハヤセユウダイ) 27 二人の出会いはたったひとつのパンだった。 ********** 作中に出てきます三浦杏奈のスピンオフ【そんな恋もありかなって。】もどうぞよろしくお願い致します。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された皇后を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる

若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ! 数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。 跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。 両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。 ――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう! エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。 彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。 ――結婚の約束、しただろう? 昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。 (わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?) 記憶がない。記憶にない。 姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない! 都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。 若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。 後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。 (そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?) ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。 エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。 だから。 この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し? 弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに? ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

処理中です...