◆妻が好きすぎてガマンできないっ★

青海

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忙しい日

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 「透、行ってきます。ご飯作っておいたからちゃんと食べてね?」

 泉がそう言いながら部屋に入ってきた。

 「あっ!!もうそんな時間だった!?ごめんご飯の用意できなくって!!」

 たったさっき泉におやすみの挨拶をしたばかりだったと思うのだが、時計を見るともう朝だった。

 慌てて立ち上がり泉を玄関まで送り出そうと思ったのだが……

 「お仕事忙しいんでしょ?わかってるから大丈夫。このままでいいから……でも抱きしめてっ」

 泉がそう言いながら抱きついてくる。

 「泉……ごめんね。夕飯はちゃんと用意するから……」

 泉を抱きしめながらそう言うと泉は微笑む。

 「ううん、透はお仕事優先して?私の方は今ちょうど余裕あるから。わたしにもたまには料理させてっ!今日はちょっと作りたいものがあるし。楽しみにしててねっ!」

泉は嬉しそうにオレの胸に顔を押し当て、ぎゅっと抱きついているので泉をできる限り優しく抱きしめた。

 ……スーツ姿の泉もキリッとしていて、たまらないな……

 そう思いながら泉のサラサラとした髪にそっと口づけする。

 「いずみ……愛してるよ」

 腕の中の泉の身体から少しだけ力が抜けていくのがわかった。

 「うん、私も透のこと愛してる……」

 泉の声を聞きながら、泉の体温を感じていた。

 


 もうしばらくそうしていたかったが、泉はそっと身体を離し、鞄を背負った。

 「透、じゃああそろそろ行ってきます。ゴミは私が持って降りるからそのままお仕事続けてねっ」

 ニコニコしながら泉は部屋を出て行ってしまう。

 「泉……気をつけて行ってきてね」

 泉に声を掛ける。

 泉はそのまま玄関の鍵を掛け、出勤して行った。



 ★



 たまたま仕事が重なってしまって、今週はだいぶ忙しかった。

 明日は土曜だと言うのに仕事はまだまだ時間がかかりそうである。

 せっかく泉はお休みだと言うのに一緒に過ごせそうには無い。

 「はあ……」

 1人ため息をつく。

 仕事は無いよりは有難いが……。

 泉の朝ご飯を作ってあげられる時間も取れないなんて……

 

 1人になった部屋でパソコンに向かっているといつの間にかに時間が過ぎていく。

 ……やっと半分か……

 そろそろ昼時……なんだかお腹も空いたし、泉がご飯作ってくれたって言ってたな……



 ★
 


 ニャンっ!!
 
 作業部屋兼寝室を出るとすずしろが待ってましたとばかりに走り寄ってきた。

 真っ白な毛皮をまとった小さく、ふわふわの身体を優しく抱き上げて頬擦りする。

 「すず、ごめんね。忙しくって構ってやれなくて」

 足元にすずしろお気に入りの猫じゃらしが落ちているのに気がついた。

 ……遊んでほしくてすずしろが部屋の前まで持ってきたのだろう。

 そんなすずしろが愛おしくてたまらなくなる。

 「……ご飯ついでにちょっと遊ぼうか」

 リビングに移動してすずしろと少しの間だったが遊んだ。

 猫じゃらしの先っぽをほんの少しだけ振ってやるとすずしろは目の色を変えてお尻をフリフリとして狙いを定め始める。

 後ろ足を交互に足踏みする様に動かし、タイミングを見計らって……ジャンプした。

 身体の大きさの割には大きなジャンプだ。

 着地と同時に猫じゃらしを捕まえて、ガブリと噛みつき、興奮した様子で尻尾を振る。

 「すずしろ上手くなったねえ。今度は少し早くしようねっ!」

 
 そのまましばらくすずしろが飽きるまで一緒に遊んだ。

 




 「……うわあ、これって……お弁当って作って貰ったの久しぶりだなあ……」

 思わず声を漏らしてしまう。

 泉はわざわざ弁当を作って行ってくれた。

 いつの間に用意したのか可愛らしい弁当箱におにぎりと卵焼き、ミートボールにタコさんウインナーなんかが入っている。

 いつも泉に作ってあげる側だった。

 家で仕事をすることが多かったので弁当を持っていくなんてことも無かったし……誰かがオレに弁当作ってくれるなんてことは久しぶりだった。
 
 

 義両親に引き取られて数回弁当を作ってもらえたことがあった。

 高校に上がって泉も何度かオレに弁当を作ってくれたこともあったし……それ以来だ。

 数年ぶりのお弁当……

 何だか胸がドキドキしたし、ものすごく嬉しい。

 
 泉ったらちゃんとお箸箱まで用意してくれて、何だか外で食事をしている気分だ。

 

 ただ食べてしまうのがもったいなくて、携帯で写真を残す。

 それから泉にありがとうとメールを送った。

 朝の忙しい時間にわざわざ作ってくれて……本当にありがたいな。

 温かい気持ちで泉の作ってくれたお弁当を平らげた。

 ……すっごく美味しかったな。

 
 ほんの20分くらいの時間だったが物凄く癒されたし元気が出た。

 泉の用意してくれた弁当箱を洗い、お茶を飲んだ。

 
 ……午後も頑張らないとなっ!!

 やる気に満ちてきたので仕事再開!!

 
 ……できることなら日曜くらいは泉とのんびりしたい!!

 そう思いながら手を動かす。

 


 ★



 「透、ご飯にしようっ」

 再び泉の声にハッとして頭をあげる。

 「いずみっ、いつの間に帰ってきてたの!?ごめんね気づかなくて、ああっ!オレってば不甲斐ない……」

 慌てて立ち上がる。

 泉はすっかり部屋着に着替えていて、おまけにエプロンをつけている。

 ……エプロン姿の泉もまた……いいっ!!

 見惚れていると泉はにっこりと笑う。

 「透が忙しいの分かってるから本当に気にしないでっ。それより夕飯……食べれる?」

 泉が少し心配そうな顔でオレの顔を見つめてくる。

 「ああっ、うんもちろんだよっ!何作ってくれたの?楽しみだなっ!」

 そう言うと嬉しそうに微笑んでくれた。

 泉と一緒に寝室を出ながらお弁当のお礼を伝える。

 弁当を久しぶりに食べたことや美味しかった事などを伝えると泉はものすごく喜んでくれた。

 「いつも透がお弁当作ってくれてるでしょ?だからたまには……私も透に作ってあげたかったんだ。一緒には食べれなかったけど、おんなじ物食べてるって思うと私も嬉しかったよ★」

 ニコニコと微笑む泉を見ているだけで幸せだと思った。

 改めて泉のことが大好きだと思った。




 
 
 
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