6 / 20
6話 語らう
しおりを挟む
「ベネディクト様、昨夜もまた夜ふかししたんですか?」
一緒に星を眺めた日から数週間後。
いつものように朝食を持って塔を訪れたジェシカは、眠そうなベネディクトの顔を見て、そう尋ねた。
ベネディクトは少し気まずそうに視線を逸らした。
「少しだけ。昨日は流れ星が多かったからな」
「確かに綺麗でしたが……夜はちゃんと寝ませんと。不健康ですよ」
やんわりと注意をすると、ベネディクトはしぶしぶ頷いた。
この様子ではまた夜更かしをするだろう。だが、日の出まで起きているのが当たり前だった頃と比べれば、生活習慣はかなり改善したほうだ。
「顔色もくまも、だいぶ良くなりましたね」
「ああ。君が、しっかり寝ないとダメだという割に、日中に寝ていると叩き起こしてくれるからな。おかげで夜に気絶するように眠る習慣がついたよ」
嫌味を口にしながら、ベネディクトがじとりとジェシカを睨む。以前ならば竦んでいただろうが、彼と打ち解けた今は全く怖くはなかった。
「申し訳ございません。ですが、ベネディクト様が健康で快適に過ごせるように気を配るのも、私の大事な役目なので」
「……優秀な侍女がついてくれて嬉しいよ。エリザベスに感謝しないとな」
ベネディクトは肩をすくめて観念したように笑うと、定位置である椅子に座った。
ジェシカは彼の前に食事を並べる。
「今日のデザートも美味しそうだな」
ベネディクトの声が弾む。星を見ているのと同じように、彼の目が輝いている。
毒を盛られたことを知ってからデザートを出すのはやめようとした。
だが、ベネディクトが「君なら信頼できるからデザートはこれからも出してほしい」と希望したため、時折朝食にデザートがつくようになった。
「リンゴがたくさん手に入ったそうなので、パイにしたそうです」
「それは楽しみだ。この間のデザートも美味かったからな」
仲良くなってから知ったが、ベネディクトは大の甘いもの好きだった。
これまではジェシカを含めて全ての侍女を警戒していたため、好物が出ても一切顔に出すことをしなかったらしい。
ベネディクトの好みを知ってからは、間食としてお菓子を出すようにした。毒が入ってないと信頼できたからか食事の量も増え、彼の痩せこけていた頬は少しだけ健康的になった。
以前は近寄りがたい雰囲気を醸し出していたが、今は病弱なだけの貴族に見える。もう少しだけ筋肉をつければ、彼を悪魔付きだと恐れる者も減るのではないだろうか。
「ベネディクト様、剣に興味ありませんか?」
ベネディクトが食事を終えたのを見計らって、ジェシカはそう声をかけた。
突然の誘いに、ベネディクトは胡乱げにジェシカを見やる。
「藪から棒だね」
「じっとしているのも退屈ではないかと思いまして。体を動かすといい気分転換にもなりますよ」
「別に、今のままでいいよ。興味ないし。気分転換なら、僕にはこれがある」
ベネディクトは近くにあった本を手に取る。彼の愛読書である哲学書だ。
「ベネディクト様、哲学がお好きなんですね」
「……ああ。これは、違うんだ」
ベネディクトは首を振り、本を開いてジェシカに見せた。
「! これは……」
「帝王学の本だよ」
「何故、表紙と中身が違うんですか?」
「ここに届けられた時から偽装されていたから憶測でしかないけど……王妃の監視の目をごまかすためだろうね。僕が治水学や経済学の本を読んでいるのを知ったら、うるさいだろうから」
王妃はベネディクトが文字を学ぶことすら嫌ったと聞いたことがある。政治的な本を読んでいると知れば、王位を狙っているのだと騒いだのかもしれない。
ジェシカは本棚に目をやった。哲学書だけでなく、詩集や冒険小説なども並んでいる。
「もしかして、これらの本も……?」
「全部、カモフラージュで表紙を変えているんだ」
ぱっと見では偽の表紙であることがわからないほど、それらの本は作り込まれていた。
これだけ手をかけてでもベネディクトに知識を与えたかったのだろう。
国王は文字だけでもベネディクトに教えようとしていたと聞いたが、影ではもっとたくさん教育をうけさせようとしていたのか。
「嬉しい差し入れですね」
「……ああ。僕にとって、とても大切な本なんだ」
ベネディクトは言葉通り大事そうに本を手に取り、めくった。
「治水学の本も読まれるんですね」
「ちらっと見ただけでわかるのか?」
「はい。幼い頃に父の勧めで読んだことがあるので」
「令嬢がこれを読んでいるとは珍しいな。大概は家を継ぐ令息か、そのスペアくらいしか読まないものだろう?」
「……父が、大変教育熱心でしたので。私は王太子殿下にお仕えすることが決まっていたので、多少の知識はあったほうがいいと言われたんです」
「なるほど」
ベネディクトは納得したように頷いた。
「なら、こっちの本は読んだことがある?」
ベネディクトは本棚から次々と本を取り出した。
ジェシカが読んだことのあるものが多く、話は大いに弾んだ。
「こちらはかなり新し目の本ですね」
ベネディクトはチラリとその表紙を見て、頷いた。
「ああ。これは最近また届いたんだ」
ベネディクトは本棚から取り出して、ジェシカに渡した。
貴族大鑑だった。国内の貴族の情報が書かれている本だ。あの本を読んでいたからジェシカの家のことなどを知っていたのだと合点がいった。
「数年に一度、定期的に届いているんだ。ところどころ送り主が追記した部分があるんだけど、結構私情が見えて面白いよ。ジェシカも読んでみる?」
書き手はおそらく国王だろう。そのようなものを自分が見るのは申し訳ないと、ジェシカは首を横に降った。
「そっか。それなら、こっちの本はどう? 星の位置や瞬き具合から今後の天候や災害を推測するんだ」
「異国の星読みですね。聞いたことはあります」
食事を下げるのも忘れて、ベネディクトと語らうのは楽しかった。それと同時に、ジェシカは後ろめたさを覚える。
ベネディクトの今後の選択次第では、彼の未来は閉ざされることになるだろうから。
一緒に星を眺めた日から数週間後。
いつものように朝食を持って塔を訪れたジェシカは、眠そうなベネディクトの顔を見て、そう尋ねた。
ベネディクトは少し気まずそうに視線を逸らした。
「少しだけ。昨日は流れ星が多かったからな」
「確かに綺麗でしたが……夜はちゃんと寝ませんと。不健康ですよ」
やんわりと注意をすると、ベネディクトはしぶしぶ頷いた。
この様子ではまた夜更かしをするだろう。だが、日の出まで起きているのが当たり前だった頃と比べれば、生活習慣はかなり改善したほうだ。
「顔色もくまも、だいぶ良くなりましたね」
「ああ。君が、しっかり寝ないとダメだという割に、日中に寝ていると叩き起こしてくれるからな。おかげで夜に気絶するように眠る習慣がついたよ」
嫌味を口にしながら、ベネディクトがじとりとジェシカを睨む。以前ならば竦んでいただろうが、彼と打ち解けた今は全く怖くはなかった。
「申し訳ございません。ですが、ベネディクト様が健康で快適に過ごせるように気を配るのも、私の大事な役目なので」
「……優秀な侍女がついてくれて嬉しいよ。エリザベスに感謝しないとな」
ベネディクトは肩をすくめて観念したように笑うと、定位置である椅子に座った。
ジェシカは彼の前に食事を並べる。
「今日のデザートも美味しそうだな」
ベネディクトの声が弾む。星を見ているのと同じように、彼の目が輝いている。
毒を盛られたことを知ってからデザートを出すのはやめようとした。
だが、ベネディクトが「君なら信頼できるからデザートはこれからも出してほしい」と希望したため、時折朝食にデザートがつくようになった。
「リンゴがたくさん手に入ったそうなので、パイにしたそうです」
「それは楽しみだ。この間のデザートも美味かったからな」
仲良くなってから知ったが、ベネディクトは大の甘いもの好きだった。
これまではジェシカを含めて全ての侍女を警戒していたため、好物が出ても一切顔に出すことをしなかったらしい。
ベネディクトの好みを知ってからは、間食としてお菓子を出すようにした。毒が入ってないと信頼できたからか食事の量も増え、彼の痩せこけていた頬は少しだけ健康的になった。
以前は近寄りがたい雰囲気を醸し出していたが、今は病弱なだけの貴族に見える。もう少しだけ筋肉をつければ、彼を悪魔付きだと恐れる者も減るのではないだろうか。
「ベネディクト様、剣に興味ありませんか?」
ベネディクトが食事を終えたのを見計らって、ジェシカはそう声をかけた。
突然の誘いに、ベネディクトは胡乱げにジェシカを見やる。
「藪から棒だね」
「じっとしているのも退屈ではないかと思いまして。体を動かすといい気分転換にもなりますよ」
「別に、今のままでいいよ。興味ないし。気分転換なら、僕にはこれがある」
ベネディクトは近くにあった本を手に取る。彼の愛読書である哲学書だ。
「ベネディクト様、哲学がお好きなんですね」
「……ああ。これは、違うんだ」
ベネディクトは首を振り、本を開いてジェシカに見せた。
「! これは……」
「帝王学の本だよ」
「何故、表紙と中身が違うんですか?」
「ここに届けられた時から偽装されていたから憶測でしかないけど……王妃の監視の目をごまかすためだろうね。僕が治水学や経済学の本を読んでいるのを知ったら、うるさいだろうから」
王妃はベネディクトが文字を学ぶことすら嫌ったと聞いたことがある。政治的な本を読んでいると知れば、王位を狙っているのだと騒いだのかもしれない。
ジェシカは本棚に目をやった。哲学書だけでなく、詩集や冒険小説なども並んでいる。
「もしかして、これらの本も……?」
「全部、カモフラージュで表紙を変えているんだ」
ぱっと見では偽の表紙であることがわからないほど、それらの本は作り込まれていた。
これだけ手をかけてでもベネディクトに知識を与えたかったのだろう。
国王は文字だけでもベネディクトに教えようとしていたと聞いたが、影ではもっとたくさん教育をうけさせようとしていたのか。
「嬉しい差し入れですね」
「……ああ。僕にとって、とても大切な本なんだ」
ベネディクトは言葉通り大事そうに本を手に取り、めくった。
「治水学の本も読まれるんですね」
「ちらっと見ただけでわかるのか?」
「はい。幼い頃に父の勧めで読んだことがあるので」
「令嬢がこれを読んでいるとは珍しいな。大概は家を継ぐ令息か、そのスペアくらいしか読まないものだろう?」
「……父が、大変教育熱心でしたので。私は王太子殿下にお仕えすることが決まっていたので、多少の知識はあったほうがいいと言われたんです」
「なるほど」
ベネディクトは納得したように頷いた。
「なら、こっちの本は読んだことがある?」
ベネディクトは本棚から次々と本を取り出した。
ジェシカが読んだことのあるものが多く、話は大いに弾んだ。
「こちらはかなり新し目の本ですね」
ベネディクトはチラリとその表紙を見て、頷いた。
「ああ。これは最近また届いたんだ」
ベネディクトは本棚から取り出して、ジェシカに渡した。
貴族大鑑だった。国内の貴族の情報が書かれている本だ。あの本を読んでいたからジェシカの家のことなどを知っていたのだと合点がいった。
「数年に一度、定期的に届いているんだ。ところどころ送り主が追記した部分があるんだけど、結構私情が見えて面白いよ。ジェシカも読んでみる?」
書き手はおそらく国王だろう。そのようなものを自分が見るのは申し訳ないと、ジェシカは首を横に降った。
「そっか。それなら、こっちの本はどう? 星の位置や瞬き具合から今後の天候や災害を推測するんだ」
「異国の星読みですね。聞いたことはあります」
食事を下げるのも忘れて、ベネディクトと語らうのは楽しかった。それと同時に、ジェシカは後ろめたさを覚える。
ベネディクトの今後の選択次第では、彼の未来は閉ざされることになるだろうから。
9
あなたにおすすめの小説
異世界育ちの侯爵令嬢と呪いをかけられた完璧王子
冬野月子
恋愛
突然日本から異世界に召喚されたリリヤ。
けれど実は、リリヤはこの世界で生まれた侯爵令嬢で、呪いをかけられ異世界(日本)へ飛ばされていたのだ。
魔力量も多く家柄の良いリリヤは王太子ラウリの婚約者候補となる。
「完璧王子」と呼ばれていたが、リリヤと同じく呪いのせいで魔力と片目の視力を失っていたラウリ。
彼との出会いの印象はあまり良いものではなかった。
酔っぱらい令嬢の英雄譚 ~チョコレートを食べていたら、いつの間にか第三王子を救っていたようです!~
ゆずこしょう
恋愛
婚約者と共に参加するはずだった、
夜会当日──
婚約者は「馬車の予約ができなかった」という理由で、
迎えに来ることはなかった。
そして王宮で彼女が目にしたのは、
婚約者と、見知らぬ女性が寄り添う姿。
領地存続のために婿が必要だったエヴァンジェリンは、
感情に流されることもなく、
淡々と婚約破棄の算段を立て始める。
目の前にあった美味しいチョコレートをつまみながら、
頭の中で、今後の算段を考えていると
別の修羅場が始まって──!?
その夜、ほんの少しお酒を口にしたことで、
エヴァンジェリンの評価と人生は、
思いもよらぬ方向へ転がり始める──
男に間違えられる私は女嫌いの冷徹若社長に溺愛される
山口三
恋愛
「俺と結婚してほしい」
出会ってまだ何時間も経っていない相手から沙耶(さや)は告白された・・・のでは無く契約結婚の提案だった。旅先で危ない所を助けられた沙耶は契約結婚を申し出られたのだ。相手は五瀬馨(いつせかおる)彼は国内でも有数の巨大企業、五瀬グループの若き社長だった。沙耶は自分の夢を追いかける資金を得る為、養女として窮屈な暮らしを強いられている今の家から脱出する為にもこの提案を受ける事にする。
冷酷で女嫌いの社長とお人好しの沙耶。二人の契約結婚の行方は?
英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です
氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。
英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。
竜王に嫁いだら、推しの半竜皇子の継母になりました〜冷酷な夫には興味ありませんが、闇落ち予定の皇子は私が全力で幸せにします!〜
せりもも
恋愛
転生したのは、web小説の世界だった。物語が始まる前の時間、隣国の竜王へ嫁ぐ薄幸の王女、デジレに。
結婚相手である竜王ワッツァは、冷酷非道で人間を蔑む恐ろしい竜人だ。彼はデジレを、半竜(半分竜で半分人間)である息子の養育係としかみていない。けれどその息子バートラフこそ、前世の「わたし」の最オシ」だった。
この世界のバートラフはまだ5歳。懸命に悪ガキぶっているけど、なんてかわいいの!? 小説のバートラフは、闇落ちして仲間の騎士たちに殺されてしまうけど、そんな未来は、絶対に許さないんだから!
幼いバートラフに対する、愛情いっぱいの子育ての日々が始まる。やがて彼の成竜への通過儀礼を経て、父の竜王は、デジレに対して執着を見せ始める。
ところが、竜と人間の戦争が始まってしまう。おとなになったバートラフは人間側につき、聖女の騎士団に入った。人と竜の間で下される彼の決断は? そして、転生者デジレに与えられたスキル「プロットを破断する者」を、彼女はどう発動させるのか。
溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~
紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。
ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。
邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。
「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」
そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
病弱な第四皇子は屈強な皇帝となって、兎耳宮廷薬師に求愛する
藤原 秋
恋愛
大規模な自然災害により絶滅寸前となった兎耳族の生き残りは、大帝国の皇帝の計らいにより宮廷で保護という名目の軟禁下に置かれている。
彼らは宮廷内の仕事に従事しながら、一切の外出を許可されず、婚姻は同族間のみと定義づけられ、宮廷内の籠の鳥と化していた。
そんな中、宮廷薬師となった兎耳族のユーファは、帝国に滅ぼされたアズール王国の王子で今は皇宮の側用人となったスレンツェと共に、生まれつき病弱で両親から次期皇帝候補になることはないと見限られた五歳の第四皇子フラムアーク付きとなり、皇子という地位にありながら冷遇された彼を献身的に支えてきた。
フラムアークはユーファに懐き、スレンツェを慕い、成長と共に少しずつ丈夫になっていく。
だがそれは、彼が現実という名の壁に直面し、自らの境遇に立ち向かっていかねばならないことを意味していた―――。
柔和な性格ながら確たる覚悟を内に秘め、男としての牙を隠す第四皇子と、高潔で侠気に富み、自らの過去と戦いながら彼を補佐する亡国の王子、彼らの心の支えとなり、国の制約と湧き起こる感情の狭間で葛藤する亜人の宮廷薬師。
三者三様の立ち位置にある彼らが手を携え合い、ひとつひとつ困難を乗り越えて掴み取る、思慕と軌跡の逆転劇。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる