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第1章 ミントの香りがした
第1話 夜風とフェスとミントの記憶
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ミントの香りが、風にまぎれて鼻をかすめた。
思わず足を止めて、立ち並ぶ屋台の隙間を見渡す。
――まさか。
でも、その香りは間違いなく、記憶の奥に沈んでいたあの味を呼び起こしていた。
ライムの鋭い酸味と、ラムのほのかな甘さ。炭酸が弾ける音さえ、耳の奥に蘇ってくる。
地元の夏祭りにふらりと立ち寄ったのは、ほんの気まぐれだった。
仕事帰りの帰省で、実家に寄る前に少しだけ歩こうと思っただけ。浴衣姿の高校生たちがはしゃぐ中、大人になった私だけが、少し場違いな顔をして歩いていた。
視線の先、小さなカウンターが屋台の一角に組まれていた。
ミントの葉とライムを並べた木の台に、ひときわ目を引く琥珀色のボトル――「HAVANA CLUB」。
その背後で、ひとりの男性がグラスを手にしている。
長い指先がミントを手のひらで軽く叩き、クラッシュアイスの上に添えている。
その所作に、私は心臓を強く打たれた。
――嘘、でしょ。
瀬川律希。
高校時代、初めて好きになった人。
卒業式のあと、言葉を飲み込んだまま、会わなくなった彼が、そこにいた。
彼は気づいたように顔を上げ、私と目が合った。
氷の音が、グラスの中で静かに鳴った。
「……奏?」
その声が、名前の呼び方が、あの夏の続きを連れてきた気がした。
止まっていた何かが、ミントの香りとともに動き出す――そんな予感がした。
思わず足を止めて、立ち並ぶ屋台の隙間を見渡す。
――まさか。
でも、その香りは間違いなく、記憶の奥に沈んでいたあの味を呼び起こしていた。
ライムの鋭い酸味と、ラムのほのかな甘さ。炭酸が弾ける音さえ、耳の奥に蘇ってくる。
地元の夏祭りにふらりと立ち寄ったのは、ほんの気まぐれだった。
仕事帰りの帰省で、実家に寄る前に少しだけ歩こうと思っただけ。浴衣姿の高校生たちがはしゃぐ中、大人になった私だけが、少し場違いな顔をして歩いていた。
視線の先、小さなカウンターが屋台の一角に組まれていた。
ミントの葉とライムを並べた木の台に、ひときわ目を引く琥珀色のボトル――「HAVANA CLUB」。
その背後で、ひとりの男性がグラスを手にしている。
長い指先がミントを手のひらで軽く叩き、クラッシュアイスの上に添えている。
その所作に、私は心臓を強く打たれた。
――嘘、でしょ。
瀬川律希。
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卒業式のあと、言葉を飲み込んだまま、会わなくなった彼が、そこにいた。
彼は気づいたように顔を上げ、私と目が合った。
氷の音が、グラスの中で静かに鳴った。
「……奏?」
その声が、名前の呼び方が、あの夏の続きを連れてきた気がした。
止まっていた何かが、ミントの香りとともに動き出す――そんな予感がした。
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