『二十六時のアオイヒカリ』

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二十六時のアオイヒカリ

第二十四章 シャッター音と心拍

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 立秋を越えた十月半ば、時間現像センターに〈パルス―シャッター・レゾネーター〉が導入された。被写体の心拍を直接駆動源とし、鼓動が鳴るたびカメラが切れる「生体同期シャッター」だ。兄が安全管理、九条がチューニング、茅乃が映像監修、照人が被験者第一号。  

◆ 心拍=シャッター  

 安静時七二BPMで毎分七十二枚。心拍はフィードバックで水平に安定し、ネガは等間隔の静物列。  

◆ 緊張と二重露光  

 茅乃の質問で心拍急上昇。一一五BPMが二重露光を引き起こし、白札〈位相衝突〇・〇三〉。一四〇BPM目前で緊急停止、深呼吸で復旧。  

◆ ハート・ガンダム制御  

 平均心拍の二〇%超過時にシャッターを減速する逆転アルゴリズムを実装。走後心拍一二〇でも連写は七十五枚に抑え、白札は良好判定。  

◆ 公開セッション  

 子どもはリズミカル連写、大人は落ち着いたテンポ。恋人二人で触れるとシャッターは三拍子。作品には固有の脈が焼かれ、再現再生で写真が脈動する錯覚を誘う。  

◆ 暴走と制御  

 過呼吸一八〇BPMで共振。背景が未来プラットホームへ歪むが兄が物理ロックし停止。白札〈危険閾値到達 停止成功〉。  

◆ 鼓動シンフォニー  

 暴走ログのパルス列は黄金比間隔。九条は「臨界美的リズム」と解析、茅乃は心音とシャッター音を重ねたオーディオ作品に仕立てる計画。  

◆ 余韻  

 夜、照人は胸の内側でシャッターを聞き星空を露光しないまま感じ取った。兄と鼓動を二拍合わせ、シャッター音は合図となった。  

 報告書には「シャッターは外部心臓、心臓は内部シャッター」と記され、秋夜の空気が静かに共振した。
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