『二十六時のアオイヒカリ』

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二十六時のアオイヒカリ

第二十五章 始発までの60秒

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 十二月二十六日未明、針が二十六時で凍った日永駅に始発“ミッドナイト・ブレイク”が臨時停車する。許可された乗客は照人・兄・茅乃の三名。乗り遅れれば次は一年後だ。  

◆ T-60秒 黒点のゆらぎ  
 真黒板が再活性化。黄昏インク噴射で沈静を試みるが白札〈+0.01〉。  

◆ T-45秒 黄昏固定釘  
 赤熱犬釘を打ち込み黒を鎮圧。白札〈収束〉へ。  

◆ T-30秒 心拍同期セット  
 心拍一〇八BPM、シャッター毎秒一.八枚で待機。  

◆ T-15秒 列車接近  
 光跡許容量99%。あと一踏みで漏出限界。  

◆ T-0秒 一枚の露光  
 心拍谷間で0.25秒露光。青白・橙・深黒が干渉し“60S”裂け目を定着。白札〈漏出0〉。  

◆ 乗車と確認  
 時計塔が零時へ跳び、ネガ中央に虹粒子。兄「1分を飲み込んだ」。  

◆ 線路守の贈り物  
 切符〈60秒券 未使用繰越可〉。余秒は未来貯蔵へ。列車は夜明けへ加速。  

◆ 余白のビート  
 心拍を七八へ落とすと列車も揺れを緩め、60秒の残像は遠ざかった。  

---

◆ エピローグ――1秒の贅沢  
 センター掲示板の“60Sネガ”コンタクトに来館者が投票。最多得票は00――シャッターが切られなかった開始点。九条「0は何も無いが何でもある」。兄は01と60の間を線で結び「写真が時間へ食い込む厚み」。茅乃は総票が61と気付き「奇数は未来への繰越」と書き添えた。  
 カフェで脈七六を感じる照人の胸ポケットで切符が虹に脈打つ。60秒の物語は、繰り越された次の1秒を静かに呼吸していた。了
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