なの

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 最近、眠れなくなった。
 この前、最愛の友人が死んだ。幼稚園からの幼馴染であり、親友だった子が死んだ。名前は立川さくら。よく笑う子だった。可愛かった。顔の話だけではない。性格、しぐさなにもかも可愛い子だった。十四年の付き合いだった。小さいころから仲が良かったから、さくらの家族とも仲が良かった。さくらのお兄ちゃんは小さい頃は怖くて、さくらの家に遊びに行くたびに怖いから今日はお兄ちゃんいませんように、、と願っていた。でも私が中学生になるときにそんな気持ちは消え、さくらとさくらのお兄ちゃんと私で話したりするようになっていた。さくらのお兄ちゃんはよく見たら、いつも優しい顔をしていた。眼鏡をかけており、顔も普通にかっこよくて温厚な人だ。中学になるまではさくらのお兄ちゃんはただただでかくて怖い人と思っていた。だが違った、私が立川家にお邪魔するときは必ず声をかけてくれて、毎回自分の眼鏡の自慢をしてくる。さくらのお兄ちゃんの眼鏡はすごくいいものらしい。必ず眼鏡をクイッとして「この眼鏡を持っている人はこの町にいない、この眼鏡はマジでレアだから」と会うたびに自慢するのが癖で面白い人でもある。でも実際にさくらのお母さんも言うようにその眼鏡はさくらたちのお父さんがわざわざオーダーメイドをして作ったらしく本当にいいものらしい。一度さくらのお兄ちゃんの眼鏡を近くで見せてもらったことがある。確かに眼鏡の耳にかける横の部分に、さくらのお兄ちゃんが好きな惑星のようなパーツが付いていた。その上、銀河のような柄になっていて凄く可愛い。しかもさくらのお兄ちゃんが頭を動かす度に銀河と惑星がキラキラと煌めきとても可愛い。そのような眼鏡を私は見たことがなかったので、さくらのお兄ちゃんの自慢を聞く度に肯定をしていた。普通にしゃべるようになった今ではさくらもさくらのお兄ちゃんも私は大好きだった。
 夏休み初日には、さくらの家でお昼ご飯をごちそうになった。おばあちゃんから貰ったすいかたちをおすそ分けに行ったら、お昼ご飯食べていきなよと声をかけてくれたのでごちそうになった。その日はさくらのお兄ちゃんが作ってくれた冷やし中華だった。さくらのお兄ちゃんは料理ができないらしい。きゅうりの切り方が下手すぎて、太かったりつながってたりしていた。それを見たさくらと私は笑い散らしたり、さくらのお兄ちゃんにちょっかいをかけたりしていた。さくらのお兄ちゃんは、ばかにすんなっ!って拗ね始めてそれを見た私たちの笑い声は外まで響いていた。苦手な料理をしてくれる上に、こんなに笑われてもしっかり私たちのお昼ご飯の準備をしてくれて失敗したのは自分の分にして綺麗にできているのを私たちになににも言わずにくれた。こういった小さな気遣いができるところはやっぱりさくらと一緒だ。そして、三人で私が持って行ったすいかを使いすいか割りをした。三人で騒ぎながら、見事さくらがすいかを割り切った。すいかを割った瞬間、すいかの汁がそれぞれの顔に飛び散った。みんなが一斉に目をつぶり顔から赤い汁を垂らした。顔を見合った瞬間、三人同時にふきだした。この間まで元気だったさくら。死など考える暇もないぐらいにさくらは毎日笑い、明るく接してくれていた。そんなさくらがこの前この世から消えた。幼稚園の頃に一緒に埋めたタイムカプセルを開ける前だったのに。あと三年かあ、まだまだ長いなあって言ってたのに。どうして。
 夏休みも中間頃。私はさくらと遊ぶ約束をしていた。最近公開になった映画を見に近くのショッピングモールに行こうと言っていた。朝早い映画を見て、その後買い物でもしようと話していた。この約束をしたのが遊びに行く一週間前だ。約束をした次の日、さくらからLINEがきた。
『昨日映画の約束したじゃん?その前の日うちに泊まり来ない?朝起きてそのまま一緒に映画行くってのはどう?お母さんは泊まり来ていいって言ってるから美紅次第だよ!』
 このLINEを見た私の返信は一択だった。
『いいの!?じゃあ泊り行く!!!うれしい~ありがとう!楽しみ!』
『おっけー!決まりね!さくらも楽しみ!昼前にうち来て!お母さんがお昼ご飯美紅の分も用意しよって張り切ってるから!ちなみに、夜ご飯も張り切ってるよ笑 美紅ちゃんにまずいものは食べさせてはならないとか言ってるからね笑』
『夜ご飯ごちそうになるのに昼ごはんまで?!ありがとう~!お言葉に甘えてごちそうなる~!じゃあまた家出るときLINEする~!』
『おっけー!』
 一緒にショッピングモールに行けるだけでも楽しみで仕方なかったのに、お泊りまで一緒となると待ちきれない。早く時間が進んでほしい。こういう時に限って時間がたつのが遅い。
 約束の日になった。楽しみすぎて昨日すぐに寝れなかった。修学旅行前日の小学生とまるで同じだ。無駄に早く起きてしまった。いつもなら目覚ましが鳴っても起きれないが今日は目覚ましの一時間前に起きてしまった。メイクをして、髪も巻いて準備は完了。さくらの家に行く前に手土産を買っていきたかったので少し早めに出た。近所のケーキ屋さんに寄り、立川家兄妹が本当に美味しいから一回食べてと熱弁していたシュークリームを買ってさくらにLINEをした。
『今から出るよ~!大丈夫?』
『おっけー!待ってるよ!』
 LINEを確認し、さくらの家へと向かった。さくらの家まで徒歩圏内にあって便利はいいが、夏はどうしても汗だくになってしまう。この日ももちろん汗だくになった。汗を拭いて、さくらの家のインターホンを押した。
「はーい!」
「美紅です!」
「はーい!ちょっと待ってね!」
 少し待つとさくらが出てきた。
「いらっしゃい!あっちいね!ありがとね~来てくれて!もうお昼ご飯できるってさ!」
「嬉しい~ありがとう!お邪魔しまーーす!お土産持ってきた!お母さんは?」
「ほんとに?!さっすがぁ!台所いると思う!いこ!お母さーーん!美紅来たよ~!」
「美紅ちゃんいらっしゃ~い!暑かったでしょ~?」
「はい、暑かったです!これシュークリームです!お世話になります!」
「あらいいのに!ありがとうね!もうご飯できるから座ってて~」
「はーい!」
 私は言われるまま座って待った。さくらは箸やコップを準備し、その後私の向かいに座った。
「さくら、今日お兄ちゃんは?」
 いつもだったらさくらのお兄ちゃんの明るく少しうるさい声が家のどこにいても聞こえてくるのに今日は聞こえなかった。
「なんかね、ちょっと外出てくるとか言って朝から出かけて行ったのよ~!」
 さくらのお母さんが答えてくれた。
「もしかしてデートとかですか?」
 少しにやにやして聞いた。
「まっさか~!!」
 さくらとさくらのお母さんの声が同時に聞こえた。
「お兄ちゃんに彼女なんかいないでしょ~!ねぇお母さん?」
「うん~いないでしょうね!」
 立川家のなかではさくらのお兄ちゃんは、そこまでイケてる感じではないらしく笑ってしまった。
「財布とか持ってる感じだったからきっとお買い物でも行ったんでしょうね~。あ、もしかしたら眼鏡屋さんに行ったのかも!昨日メガネの高さが少し合わないとか、ブルーライトカットのレンズに変えたい~とか言ってたからねえ。」
「ああ!確かにお兄ちゃんそんなこと言ってたね。お兄ちゃんになんか用でもあった?」
「ううん!ただ今日泊めてもらうからお兄ちゃんにも挨拶しとこうかなって思っただけ!」
「あらいいのよ~別に!自分家だと思ってゆっくりしてね~。」
「はい!ありがとうございます!」
 雑談を少ししていると、さくらのお母さんがお昼ご飯を出してくれた。お昼ご飯は冷やし中華と餃子を作ってくれた。冷やし中華を食べながら私は夏休み初日のことを思い出した。さくらのお兄ちゃんが作ってくれた冷やし中華はきゅうりが上手く切れていなかったが、今日のはしっかり綺麗に切れていたので思い出し笑いを1人こっそりしてしまった。さくらのお母さんは料理が上手でとても美味しかった。さくらもお母さんのご飯が大好きと常日頃言っているので、にこにこしながら食べていた。こういう姿を見ると、友達になれて本当に良かったと実感する。こういう何気ない幸せを感じ、表情にしそれを見た私までも同じ気持ちにさせてくれるような子だ。
「ご馳走様でした!美味しかったです!」
「ほんと~?良かった!夜ご飯も楽しみにしててね!なにかリクエストとかはある?」
「さくらのお母さんのご飯全部美味しいのでなんでも楽しみです!」
「あら嬉しいこと言ってくれるね!さくらは?なんかある?」
「じゃあからあげ!」
「おっけー!じゃあからあげにしよっか!美紅ちゃんもいい?」
「はい!大丈夫です!」
「じゃあ美紅!さくらの部屋行こ!」
「うん!」
 お昼ご飯を食べた後さくらの部屋で私たちはゆっくりしていた。1時間ほどさくらと話したら玄関の方から
「ただいま!」
 と声が聞こえた。さくらのお兄ちゃんだろう。ちょうどいい、私は挨拶をしようと思いさくらに
「さくら、私お兄ちゃんに挨拶したいしお兄ちゃんのとこ行かない?」
「いいよ!じゃ行こっか!」
 私たちはリビングへ向かった。さくらのお兄ちゃんは白い袋を片手に帰ってきたようだ。中身は何かは分からなかったが、長方形のようなものが入っていた。さくらのお兄ちゃんはよく本を読んでいるのでまた小説を買ってきたのかもしれない。
「お兄ちゃんおかえり~。どっか行ってたの?その袋は?」
「ああちょっと買い物に。」
 さくらのお兄ちゃんはこっちを見ずにそういった。いつもなら誰相手にも目を見て話す人なのになと不思議に思ったが私は
「お邪魔してます。今日お世話になります!」
 とお兄ちゃんに挨拶した。すると勢いよくさくらのお兄ちゃんはこちらを振り返った。一瞬びっくりしたような青ざめたような顔をしたような気がしたが笑顔で
「美紅ちゃん!この前ぶりやね、ゆっくりしてってな。でもあんまり遅くならんようにな、家近いとは言っても帰り危ないからな。」
「あれ?お兄ちゃん言ってなかったっけ?今日美紅家に泊まるんだよ?明日一緒に映画行くから!」
「え、あ、そうなん。じゃあ楽しんで。じゃあ俺部屋行くわ。」
「 はーい!ありがとうございます!ねえさくら、お兄ちゃんなんか具合悪かった?」
「 ええ、そう?分かんなかったけどなんで?」
「 いやんーん!私の気のせいかも!ごめん!」
「 そんなことより私達も部屋戻ろ!」
「 うんそうしよっか、明日の計画たてよ!」
 私達は明日の映画の計画を立てた。お昼前に出て、ご飯を食べ映画を見てその後買い物をし解散。いつも軽く計画を立てるが上手くいった試しがない。私達は時間配分が苦手なのか、いつも時間ぎりぎりになったりしてしまう。いつもどっかしらで走ったり、何かを諦めるなどして釣り合わせている。だがそれもいつもの事なので今更どうこう思うような2人ではなかった。だから、あの時も時間に追われてて、周りが見れていなかったのかもしれない。
 次の日の朝、予定では9時に起きるつもりが私達は10時に起きてしまった。まあいつもの事だ。準備の時間を巻きでやれば問題ない、2人はそれぞれ同じことを心で思っていたであろう。だから家を出発する時間は前日立てた予定より5分遅れでいけた。ショッピングモールに着いた私達は昼食をとった。だが、そこでついつい長話をしてしまって映画の時間ぎりぎりになってしまった。急いで店を出たところでさくらが映画の前にトイレに行っておきたいと言い出した。だから、私達は映画の時間に追われながらも足早でトイレに向かった。さくらが行きたいと言い出したが、私もついでに行っておくことにした。さくらは少しお腹を壊していたようでトイレに時間がかかってしまった。私はトイレの入口に近い方の手洗い場で待っていた。私はさくらを待つ間、映画の時間が気になって仕方がなかった。だがさくらがトイレに入っている間は、何を言っても変わらない。そうは分かっているが気持ちが焦るばかりだった。だが、さくらも同じ気持ちだったようだ。さくらは慌ててトイレから出てきて、私に謝った。だが、生理現象なので私も別に責めるつもりはない。それに映画の時間にもぎりぎり間に合いそうだったから。映画館の近くのトイレに入ったからか、人の出入りがまあまああった。さくらは手を洗い、行こといい私より先にトイレを出ようとした。その時だった。さくらはトイレに入ってきた人にぶつかってしまった。その人はフードを被っており私達より背が高く、さくらとぶつかった後に少し後ろにふらついたが直ぐに方向を変えトイレから出ていった。顔の辺りでなにか煌めくものが見えた気がした。一瞬の出来事でこんな建物内でフードを被っているのに違和感を感じ、さくらよりその人の方に目がいってしまっていた。だからさくらが倒れていることにすぐに気が付かなかった。たださくらがあの人とぶつかって倒れているだけならまだ良かった。さくらの服には血が滲み出ていた。何が起こったのかが理解出来ずに声も出なかった。すると同じトイレにいた客が叫び、店員、救急車を呼び始めた。私は未だになぜさくらが自分の前で血を流しているのか理解ができていない。そこからの記憶はもうないに等しい。気づいたら病院に私の家族とさくらの家族がいた。そこでの空気は最悪だった。私は俯いたまま声が出せなかった。私だけではない、全員がそうだった。そんな中さくらの家族が呼びだされた。さくらの家族は1度私達の元を離れ、医者の元へ行った。そしてさくらのお父さんが私達に
「さくらは助かりませんでした。」
と言った。目の前が霞みなにがなんだか分からなかった。
「すみませんでした。私がさくらを助けられたのに、何も出来ずにすみません。」
私は咄嗟に言葉が出た。さくらのお母さんはそんなこと言わないで、誰もそんなこと思っていないと言ってくれた。私は泣くのを我慢し俯いたままだった。
「顔あげて。ここにいる誰も悪くないよ。」
そう言ってくれたのはさくらのお兄ちゃんだった。さくらのお兄ちゃんは穏やかな顔をしていた。さくらの家族は私達に深々と頭をさげ、その場を立ち去った。
 私達家族も家へと向かった。私は直ぐに寝ようと思い、ベッドに入った。しかしすぐには眠れずに、夜空を眺めていた。星が煌めく空を見ながら何か違和感を覚えた。あのトイレで見たものと先程病院で見た何かに既視感があるような気がする。なんだろうか。その日から毎晩毎晩、その違和感が私を蝕み続けた。 毎晩さくらとの日々を思い出しては、犯人が捕まるのを祈ることしかできない。そんな時ふと私は違和感の正体に気がついた気がした。だが、それは私自身が1番考えたくないことだった。その考えを捨てようとしても脳にへばりついてくる。私はそんな自分への嫌気や不甲斐なさ、そして恐怖に今日も眠れない。
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