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しおりを挟む森の中に馬を進ませると、慌ただしい音とせかすような怒声、馬のいななき、鎧を外す金属がすれる音、曲がった剣を直す為鉄を打ち付ける音。
あちらこちらでは地位の低い兵士達が野営の為にテントを立て、獣を寄せ付けないように火を焚き煙を上げる
国は没落したとはいえ愛国心の強い残党はまだまだ残っている。わざと防御の低い外に拠点を置き狙わせて一掃するのだ
バントレンは馬を常歩にさせ手綱を引き降りた。 すぐさま兵士がやってきて手綱を預かり、連れて行こうとするが馬は主に甘えるようにマントを口で食み、鼻を鳴らす。その鼻っ面を軽く片手で抑え、早く行けと尻を叩いてやるとおとなしく引かれた手綱に従った。
「隊長!こちらをお使いください」
若い兵士がやってきてひと際大きく立派な天幕に促され、バントレンは腕の中で未だ意識の無い青年と共に中に入った。見かけを裏切らず広く、外とは打って変わって美しい柄の敷物やテーブル、大の男が三人は眠れそうな広々とした寝具。二重天幕になっていて音を多少遮断するのか外の喧騒は少し和らいだ。
寝具に青年を寝かすと、水差しの色を確認し匂いを嗅ぐ。毒に脅かされる生活に慣れているためもしこれに毒が盛られていてもバントレン自身には恐らくほぼ影響が無いが、青年は違うだろう。
問題ないと口に含み、青年の頭を手でゆっくりと持ち上げる。
「ん、」
唇を合わせ水を流し込むと、その冷たさに脳が刺激を受けたのか青年が少し眉を寄せた。
体は水分を欲して無意識だろう、移し終わり唇を放すともっとと求めるように追いかけるような仕草を見せる。バントレンは水を含みもう一度唇を合わせた。
潤った唇は酷く甘く感じる。欲しがるように熱く小さな舌がバントレンの唇に触れた時、はじけたように青年の口内に舌をもぐりこませた
「ふ、んぅ、ん」
狭い口内を舌で荒らしてやると鼻から抜ける声が子犬のように愛らしい。子犬に愛らしいなどと感情を抱いたことはないが、
とバントレンは厄介なことになったと己を冷静に分析する
この名も知らぬただの青年に振り回されるつもりは無いと唇を放した。が、青年は何かを求めるように、夢を見ているようにゆるりと腕を動かし、離れていったぬくもりを追いかけるように揺らめかせる。
その様子を冷たいアイスブルーの瞳で眺めていると、青年の濡れた唇が薄く開いた。
「へ、…か」
バントレンは全身の気が逆立ったような感覚に襲われた。
結局何も掴めずシーツに落ちた腕。
青年の身体は寝具に上にしどけなく、女のように胸と腰に膨らみがあるわけではないのに緩やかな曲線を描いており、それは青年らしからぬ色気を放っている
だがやや赤くなった瞼を閉じる表情は幼く、その隠された瞳はどこまでも清廉に澄んでいるのを知っている。バントレンは言いようのない感情に苛立ちを感じ眉間に皺を寄せた。
青年のややめくりあがった服の裾に指先を忍ばせ、白く細い脚を爪でなぞるように撫でる
柔らかな肌が露出していき、そのままゆるりと裏腿を持ち上げ小さなまろい尻に触れる。
太ももには手触りのいいベルトが付けられていた。
それを自身の小刀で切り落とす。傷付けない様にも出来たが、さっさとこのベルトを青年の肌から外したかった。何も纏わない青年を見たいと心が逸る。ナイフを当てた際柔い肌は簡単に傷つき、糸のように流血した
それを指で塗り広げるようにして青年の太腿を赤く染める。
バントレンは自ら愛撫など滅多にしない。いつもは見目麗しい女や男が勝手にバントレンの肉棒を使って腰を振りたくるだけ。溜まったものを吐き出す為に無駄な労力は使わなかった
だがこの青年の肌には唇が引き寄せられる。それは酷く抗い難くものだった。
自分らしくない行いにバントレンは何処か観念したように含み笑い、布の擦れる音と共に青年に覆い被さった。
青年は深く沈んだ意識の中で、夢を見ていた。
「あら、陛下の雛鳥ですわ」
女性らしい曲線を強調するドレスは決して男の為でない。自身が満足するドレスで着飾ることが、嫁いできた時子をもうけないと宣言されたこの国での唯一の楽しみだと言う王妃。
雅な庭園で自身の夫となる男と外面だけの散歩をしていた時花の咲く茂みが揺れたのを確認し、思わず口元が綻ぶ
王にひっそりと扇で口元を隠しながら伝えると、王はその厳しいが歳を重ねた色気を伴う整った顔で目を閉じ軽いため息をつく。
まぁ、と王妃は珍しいものを見るように目を丸くする。戦神と恐れられこの強大国の王として君臨しながら、齢50半ばで若造に振り回されているようだ。
「そこの、出てこい」
形だけは叱るような声音を出す王に王妃は笑いが抑えられない。王不機嫌そうに一瞥されたので慌てて取り繕う。
ガザガサと葉の揺れる音と共に、細く頼りない青年がその平凡な顔に 叱らないで と書いたように出てくる。
王は大股で隙のない歩みで青年に近付き、抱き上げる
「午前はいかんと言っただろう」
「…申し訳ありません。お邪魔するつもりは無くて、ただ一目お姿が見たかったのです…」
子犬のように眉を下げる青年に王は早速絆され柔らかな髪を指で梳く。
「王妃との時間を過ごす。お前は部屋で待っていろ」
髪についている葉を払ってやり、言い聞かせる
2人の背後で王妃は扇を音を鳴らして閉じ、注意を自身に向けさせる。
「お、王妃様、本日も麗しく…!」
「えぇ、ありがとう」
明らかに真っ青になりながら、抱き上げられながら挨拶など不敬、だが自分を叱る王に下ろしてくださいと言えない。だが不敬。と考えている事が手に取るように分かる青年は王妃の数少ない暇潰しだ。
そろそろ17歳になるこの青年は1年前に王が見初めて後宮に入った。女も男も既に多くいる後宮に今更1人増えたところで何の関心もなかったが、この青年は違ったのだ。誰もが恐れ多いと頭を垂れ、戦神と称えられる王に甘える事ができる人間などこの青年以外存在しない。
そしてまた王も自身に馴れ馴れしく擦り寄るものをこの青年以外許しはしない。
「陛下、私は下がらせて頂きますわ。恐れ多くも貴重なお時間を頂戴するのが心苦しいのです」
本音は特に会話の無いこの時間を自身の美貌を磨く為に使いたい。そして部屋にお気に入りの男や女を呼ぶのだ。正妃である妃が妊娠するのは王が望まぬので、伽を申し付けられることもない。
王妃として厳しい教育を受けてきた者がこのような扱い、普通は侮辱的だと怒り狂うだろうが、なんせこの国は強大国。それも今は戦神が率いているのだ、文句を言った所で首を跳ねられるのがオチだ
それならば責務から逃れられると思って好き勝手に金を湯水のように使って過ごしてやればよい。と王妃はそれなりに今の生活を楽しんでいる。王もこれを黙認しているようだ
「王妃様!下がるべきはぼ、私です!すぐに、」
「ふふ、よくってよ雛鳥。陛下はお疲れです。お慰めなさい」
途端顔を赤くして戸惑う青年に王妃は扇を平げて顔を半分隠す。その口元は楽しそうに弧を描いていた。
この青年、見初められて連れてこられた時恐怖で縮こまって居たというのに、いつの間にか王の後を雛鳥のようについてまわる様になった。その様には王も手を焼いている、というのは恐らく建前で
そもそも王自ら見初めて城に連れ込むなど1度も聞いた事が無かったので、王はさながら、その歳にして初恋とでも言おうか。
「王妃よ、」
「陛下、それでは私はこれにて」
何か言いたげな王に恭しくお辞儀をして妃が下がる。
青年はやってしまった とこの世の終わりのような表情を浮かべながら王を見た。
「へ、へい…か」
これは相当怒られると覚悟するが、王の顔はいつも厳しいので常に怒っているようにも見える。青年は安易に謝罪するのでさえ恐れ多くなってしまう
「よい」
王は一言。
そもそも体裁上一応設けた時間だった
この青年がこの城に来て1年。もはや体裁など周囲には無駄なものだろう
王妃とて好きにやっていると王は知っている。
「慰めてくれるのだろう」
王は抱き上げたままの青年の服の裾に手を忍ばせる。途端顔を真っ赤に戻すと、俯いて王の白髪混じりの髭に口付ける青年。
擽ったいのか自分を支える体が揺れ、王が笑ったことに気付いた青年は嬉しくて何度も唇を押し付ける
王は一応誘ったつもりなのだが、艶っぽさを滲ませない何とも愛らしい子犬がじゃれるような口付けに少し苦笑いをする。
その笑いさえ青年は王が楽しんでいると、クスクスと無邪気に笑いながら顔を擦り寄せる。
頬にあたる髭の感触が好きなようで、青年は時折こうして王に甘えるように擦り寄る
犬か猫か分からんな。と王はこのじゃれあいを終いにする。
「んぅっ、ふぅ…ぁ」
楽しそうに笑う小さな唇を奪い、舌を潜り込ませると青年の体がびくりと震えた。
必死について行こうと小さな舌を絡ませるが、経験豊富な王に敵うはずもなく、翻弄される。
唇を離され、互いの唇を1本の唾液が繋ぐ。
それが酷く淫らに見えて青年は働かない逆上せた頭でこれから起こる事に身体をじわりと疼かせた
「もらうぞ」
「…はい、」
「あ、あっあっ」
まだ日の出ている明るい寝室は、情事を鮮明にし背徳感が増す。
大きな寝台で、王は衰えを感じさせない逞しく傷が至る所に残る肉体で、まだ未発達の白い身体を組み敷く。
青年の後孔は精一杯広がり、王の猛々しいモノを咥えこんでいる。初めの頃は指ですらまともに入らず、夜伽を申し付けられた時は準備の段階で泣いたものだ。
「あっ!あぁっ、へぇか へーかっ」
舌っ足らずに呼ばれ、手を伸ばされる。
王は応えるように上体を低くしてやった
細い指が王の顔を指で優しく擦り、耳に触れる
近くなった王の顔に首を伸ばして啄むように口付けを落とす。
「はぁっう、へぇかぁっ」
青年のその行動はいつも王を精力的にさせる
腰を少し強く突き上げられ背を反らせて喘ぐ青年。王は腰を動かしたまま弄られて赤く腫れぼったくなってしまった乳首に唇を寄せ舌で愛撫する。
青年は王の頭を抱え込むようにして快感をやり過ごそうとするが止まらぬ律動に口からはだらしなく涎が垂れる。
二人の情事は体格差もあって、王が青年の身体を気遣い基本緩やかだ。
青年は王と体を繋げることが幸福でならなかった。大きく、暖かい体も 自分を呼ぶ低く深みのある声も。王の元に来て何度も身体を繋げたが未だに恥ずかしく、慣れない。
王は今まで女も男もよりどりみどりだったはずだ。性に疎く拙い自分で王を満足させられているか常に不安で、本で勉強したり後宮の人間に手練手管を聞いたりしたものだ。中には実演して見せようとする者がいて、それが王にばれて大変なことになったの今では苦い思い出だ。気を散らしている青年に気付いたのか、王は下手すると片手で半分以上回ってしまう腰を掴んだ
「余裕か」
「ひっ、あっ!、やです!陛下そこは…!」
王の怒張が青年の行き止まりを叩く。その先があると後宮の男に聞いた時青年は信じられなかった。
何度が王が試したがその度怖いと泣くので未だその先に進んだことはない
王は青年に無理を強いた事がない為、青年も安心しきって身を任せる
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「あっ!?」
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だが、王は止まらない。それどころか足を抱え上げられ更に深く入るように身体を折り曲げられる。
青年はもはや悲鳴をあげ、抵抗する。
おかしい、王はこんな無体な真似絶対しない
自分が愛するお方はこんなことしない。
青年は涙をポロポロと溢す。
「私を見ろ。」
青年は首を振って王の言葉に反く。それと同時に足を掴んでる手の力が強まり骨が軋む。
痛みに呻くと男はもう一度言う
「私を 見るんだ」
青年は一気に水面から上がったように現実に引き戻される。
匂いは慣れ親しんだ王の香ではなく、シーツの質感ですら違う。ぼやけた視界に入るのは浅黒い肌。
一気に入ってきた情報に脳が混乱している青年は、時々聞こえる猫の鳴くような声を不思議に思う
「起きろ」
「あっ!ひっぁ、」
男の低い声が鮮明に聞こえたかと思うと突然体が劇的な快感に襲われる。グチュグチュとした音と肌を打つような軽い音。視界が揺れている、揺さぶられている事に気付いて青年は今自分が何をされているのか、鮮明になった思考で認識した
「う、そ!やだっ!は、ぁあ、!んぁっ」
男のペニスが王の侵入しか許したことが無い場所を我が物顔で荒らしている。青年は抵抗すらまともに出来ず、翻弄される。奥を突き上げられ引き攣った声を出した
「やめっ!奥、無理ぃ、あっあっぁっ」
「どうした、こうやってあの王に足を開いていたんだろう」
青年は王と幾度となく身体を交えたが、このような手荒な扱いは受けた事がない。快感を逃す暇さえ与えられず、ひたすらに中を擦り上げられる、恐ろしくて足を暴れさすが簡単に掴まれてしまい抵抗するなと強く突き上げられる。それだけで中はビクビクと痙攣し、青年は射精を伴わずにいってしまう
「はっ、喰らいついてくるな」
「ちがぁ…!っうぁ、あっ、へーか、へいかぁっ」
快感を感じてしまっている自身の体に耐えられ無い、国を蹂躙し王を殺した国の男の手で。
青年は死んだ方がマシだった あの時さっさと自分で喉を掻っ切って死んでしまえばよかったのだ
そしてバントレンは自身の腕の中で王を呼ぶ青年を不服に思い、眉間に唸る狼のように皺を寄せた。
「黙れ」
「ひっっ、ぃ…!」
分からせるようにグリグリと奥の行き止まりを抉ると青年の体は強ばり、その事にバントレンは目敏く気付いた。
「なんだ、ここは初めてか」
鮮やかな翠の瞳を開き絶えず涙を零す青年に、バントレンは自身も知らぬうちに口角が上がった。
グリ、と腰をねじ込むように動かすと明らかに抵抗の力を強めた非力な腕に核心を得たバントレンは、何度も奥の窄まりを自身の熱いペニスで突く。
「うぁっ!や、ら、ひん!」
「開けろ、私を ここに入れろ」
青年の赤くなった耳元に口を寄せて出した自身の声にバントレンは内心驚いた。酷く興奮したその声音は、何処か懇願すら含まれているのだ
「やめ、やめてぇ…!はいらなっ、で、ぁあっ!あっあっ…!」
懲りずに役に立たぬ抵抗を続ける青年に、手荒な行為とは裏腹のキスを首すじに落とす。
そして青年の細腰を掴み、一気に貫いた
「ーーーッ!!」
背を反らせて声も出せずに衝撃を受け止める青年。
中は熱く、今ので達したのかうねるように動きでバントレンのモノを強く締め付けた。
思わず息を詰めたバントレンは自身も達しそうになるが、こんな事は初めてだ。深く挿入しただけで射精するなどまるで性行為を覚えたばかりの子供では無いか、と必死に立て直し荒い呼吸を続ける青年の喉を舐め上げて落ち着かせる。
「ひっ、ぅ…こわ、こわい、やだぁ」
傍で聞こえてくる啜り泣きに、バントレンは自身がより熱く大きくなるのが分かった。宥めるように シー、と耳朶にキスを落とす。
「あぅっ、やっ!なん、でぇ…!」
「…貴様、名は」
「…ッ、言わ、ない…!、ひっぁ!やだ、あっぁっ止まって、まってぇ…!」
「言え。」
「や、めぇっんぁっ!」
律動を始めた力強い腰に青年は口から溢れる喘ぎを抑えることが出来ない。屈辱的で、殺してやりたいほど憎い相手が目の前に居て自身を犯しているというのに、身体は言うことを聞かないのだ。
バントレンは喘ぐ青年の唇に指の背で撫でるように触れたと思うと、少し乱暴に掌で口元を覆う。愛撫するかのようにそこから首や耳につたった。
熱い口内に親指を入れると小さな舌が触れる。
くぐもった声ながら変わらず喘ぎ声を洩らす青年は苦しげにバントレンの手首を掴んだ。やめさせようと無骨な指に細い指を絡ませて退けようとする。
バントレンはその様子を見つめていた。それは何処か恍惚とした。とも言えるかもしれない
そのまま何かに突き動かされたように絡んだ指をそのままに寝具に縫い付け、唾液で濡れた小さな唇に噛み付く。
「んむぅ!んっ、ぁ、ひんっ」
「、はっ、名を…名を言え」
「も、やめ、てぇっ!んっひぃっ、んんっ、っ」
強まる腰と早くなる律動に青年は頭を振りかぶり襲い来る快感を逃がそうとするが、バントレンは痙攣したように揺れる腰すら許さないと言わんばかりに押さえつける。
青年の小さなペニスはもはや立ち上がってすらいないが、鈴口からはダラダラと透明な粘液が垂れ続けている。
バントレンはわざとそこには一切触れずに青年の中に自身を叩き付ける。
いつまでも名を言わぬ青年にイラついたように舌打ちし、未発達な二の腕を掴み一気に引き上げた。青年は肩が抜けそうな程無理に引っ張られ、その痛みにか細い悲鳴をあげた。
胡座をかいた自身の膝の上で対面座位にさせ、すぐさま細い腰を押さえつける。
「ひぐっ、ぁ゛、けほっ…!」
あまりの深さに内臓が押し上げられる。
衝撃に目をチカチカとさせる青年をバントレンは待ちはしない。
「やぁあっ!ひっぅうッ、む、りぃっやめ、てぇッ!
あっはあっ!くるっし、ケホッ、ぁ、ゃらあっ」
激しい水音をさせながら腕の力だけで容易く律動させる。不安定な体制で掴まる所は目の前のバントレンしかいない青年はもはや何も考えられず逞しい体に縋り、快楽が辛いのだろう、首に回された腕はそのままバントレンの髪の襟足を梳くように掴む。
「、」
バントレンはたったそれだけで名を言わぬ強情な青年への苛立ちが吹き飛んだような感覚に襲われる。
だが自身の感情に戸惑うばかりだった。
「……私はどうかしている、」
「ひゃぁ、ぁっあ!んむっ、ぅんんっ」
唇を噛み付くように奪われながらも止まらぬ律動は、更に激しさを増す。バントレン自身も限界を迎え己を高めた。
その動きに、青年は王との情事をまともに働かない脳から引っ張り出す。強まる腰の動きは王が青年の中で達する時だったのだ
王のもので自身の中から満たされるようなあの幸福感は何物にも代えがたいものだった。
それが、今塗り替えられようとしている
「はぁうっ、らめ、だめぇっ中は!ナカに出さなッ!ひぅっん!」
「黙れ…孕むほど奥に出してやる。もっと奥を開け」
尻を叱咤するように叩かれ、ビクビクと体が震え、中を締め付ける青年に持っていかれる。バントレンは今までで1番深くまでペニスを捩じ込み、射精した。
「やぁああっ!」
「ーーッ」
熱い飛沫を腹の中に感じて青年は少しずつ意識が遠のくのを感じた。
バントレンは戦闘時ですら滅多にしない荒い呼吸のまま、青年の耳元に顔を寄せ柔らかな髪の匂いを嗅ぐ。
ゆっくりと脱力し自身の胸元に全身を預けてくる体を大きな手で撫で、耳を齧る。耳の穴に舌を差し込み抜き差しすると、次第にいやらしい音が鳴った。気を失った青年は意識が無いにも関わらず体をビクビクと跳ねさせる。
小さな耳朶にキスを落とし、そのまま青年を寝台に押し倒す。無抵抗の身体をまるで酔ったかのような表情で甘く噛み、匂いを嗅ぐ。バントレンは己が獣にでもなったような錯覚に陥った
この青年は一体なんだ。あの場所で、一目見た時から何時もの自分には無い何かに突き動かされる。
こんな風に誰かの体を貪った事など無い、名を知りたいなどと思ったことは無い、名を呼ばせたいとも、思ったことは無い。
バントレンは髪をかきあげ、そのまま青年が触れた自身の襟足へと触れる。
必死にすがりついてきた腕と、細い指が急所である後頭部に柔く触れる感触を思い出し肌が粟立った。
「隊長、失礼しても宜しいですか」
「…待て」
天幕の外から声を張った兵士が呼びかける。
バントレンはシーツで青年の身体を包もうとするが、手に取る前に自身のらしくない行動に眉を寄せた。
「隊長」
怪訝な部下の声に舌打ちをして構わずシーツで青年の身体を覆った。入室を許可すると兵士は寝台にはだけた服で腰掛けるバントレンと、その向こうにはシーツをかけられている青年に軽く目を丸くする。いくら二重天幕も言えど青年の艶やかな声は外に聞こえたはずだが、外は外で騒音だったのだ。まともに聞こえた者は少ないだろう。兵士は直ぐに思考を正し、口を開いた。
「東の要塞で2班が残党50名余りを捕らえました。見る限り殆どが貴族のようです。男は数名残して殺しましたが女子供は」
「残らず殺せ。捕虜は要らん」
「は、はい。承知しました」
兵士は簡潔なバントレン判断に少しの怯えを残し敬礼して天幕から下がろうとする。
「待て、王妃を捕らえたのは7班だったな。」
「は、はい!」
「私は7班と合流する。半日で戻るがお前はこの青年を見張れ、必要以上に触れるな話すな聞くな。」
「しょ、しょうちしました!」
兵士は真っ青な顔で背筋を伸ばした。
この男は妻子持ちで、馬鹿な真似はしないとバントレンはふんだ。
振り向くと汗を滲ませた額に髪を張り付かせながら、疲れた表情で眠るように目を閉じる青年。何度も荒らされた唇はぽってりと赤くやや腫れている。
まつ毛は涙で湿り、頬には涙の跡が残っている
その姿を温度を感じさせない目で見つめると、バントレンは念を押すように兵士に告げた。
「変な気を起こしたら家族諸共命は無いと思え」
「ひっ、はいっ!」
硬直した兵士をそのままに、ゆっくりと青年へと顔を近付け囁く。
「私の名はバントレン、お前の王を殺した男だ。
…次に目が覚めた時、今度こそお前の名を吐かせてやる」
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