Rasanz‼︎ーラザンツー

池代智美

文字の大きさ
24 / 133
ゲームと話

ゲームと話1

しおりを挟む

 公園では大福とよもぎちゃんが元気に駆け回って、終始楽しそうだった。
 途中でよその犬がじゃれついてきたけど、犬同士の喧嘩になる事もなく、平和な時間を過ごせた。
 帰り道も二匹はご機嫌で、先頭を仲良く並んで歩いていた。
人間だったら鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気だった。

 家に帰ると、ルイスさんとマリアンネさんが昼食を作って待っていた。
 時刻はちょうど十二時である。
 マリアさん曰く、予定より早く仕事が片付いたらしい。
 昼食のメニューはミートソースパスタとサラダ、オニオンスープ、デザートはフルーツゼリーで、どれも美味しかった。
 昨日と同様、ルイスさんと僕とで後片付けをする。
 シェルアさんはマリアンネさんに話があると言われてリビングを出ていったけど、きっと仕事の話だろう。

 後片付けが終わると、ルイスさんは昨日みたいにゲームをしようと僕を誘ってくれた。
 ルイスさんが選んだゲームはゾンビを倒すという結構前に流行ったものだった。
 ルイスさんが言うには最近また流行っているらしい。
 FPSが好きなのか聞くと、ルイスさんは複数プレイで僕と一緒に出来そうなのを選んだそうだった。

——自分の好きなゲームじゃなくて、僕に合わせてゲームを選んでくれたんだ。

 僕はルイスさんのさりげない優しさに胸が温かくなった。

 ゲームはグラフィックがとにかく綺麗で、つリアルだった。
 このゲームはストーリーモードもあるけど、今回やるのはバトルモードらしく、バトルモードはとにかく敵が多くて油断していたら一撃死もあるとルイスさんが教えてくれた。
バトルモードではオンラインで遠くにいる人とも一緒にプレイ出来るらしい。
称号やレアアイテムが欲しい人は、有志を募って団体でプレイしているとの事だった。

 オープニングのムービーが終わって、プレイヤーのキャラクター選択画面へ切り替わる。
 僕は初心者だから比較的使いやすそうな、全体のバランスが取れた男キャラを選択した。

「ルイスさんは誰にするんですか?」
「あー……こいつにする」
「女キャラですか?」
「こいつが一番攻撃速いんだよ」
「へえー」

 キャラクターの選択画面からモードの選択画面へと移る。
 ルイスさんの操作でバトルモードが選択されると、本日のミッションが表示された。
場所は廃都市で、最後の方に書かれていたミッションはゾンビを一万人倒せというものだった。桁が違いすぎる。

 ロビーみたいな所に飛ばされると、周りにはたくさんのキャラクターがいた。
 チャットで交流している人もいれば、ミッションクリアのために有志を募る人もいて、それぞれが自由に過ごしている。
 物珍しさに色々見ていると、一人の男キャラが近付いてきて、僕達の周りをぐるぐる回り始めた。

「???」
「……あ、知り合いだこいつ」
「あ、そうなんですか? ちょっとびっくりしました」
「たまにふざけた事やるからな」

 こんにちは、とチャットで元気な挨拶が飛んでくる。
でもルイスさんは返事をせずに無言でそのキャラを殴った。

——このゲームのシステムって人間にも攻撃出来るんだ!?

 衝撃を受けながらも、僕は一応こんにちはとチャットで挨拶を返した。
すると奥の方から大柄な男キャラがこっちに向かって歩いてきた。

「この人も知り合いですか?」
「おう。でもこいつら夜にしかやってねぇはずなんだけど……」

 ルイスさんはそう言うとチャットで長文を打ち始めた。
 流れていく会話を見ていると、いつの間にか初心者の僕込みでチームを結成する事になっていた。
 チャット欄は何故か盛り上がっている。
 二人は僕がチームに加わる事を歓迎しているみたいで、今はイベント期間で初心者を連れているチームはポイントが倍貰えるのだと詳細を教えてくれた。
 歓迎される理由はわかったけど、初心者だから周りに迷惑をかけてしまわないか心配だ。

「あの、迷惑かけたらごめんなさい……」
「いいんだよ迷惑かけても。そういうのは経験者がフォローするしな。ゲームは楽しむためにある物なんだから一緒に楽しもうぜ」
「そ、うですね……頑張ります!」
「おー。フォローは任せろ」

 よろしくお願いしますとチャットに文字を打つ。
 二人からこちらこそという返事きたところで、ゲームが始まった。
 さっきのロビーから、赤い空が広がる廃都市へと場所が移される。
 プレイヤーは僕達しかいないみたいだった。

「操作は昨日やったのとそんなに変わんねぇからわかりやすいと思う。先に回復薬渡しとくわ」
「あ、ありがとうございます」

 ルイスさんは一気に二十個くらい回復薬をくれた。
 多い。ルイスさんは使わないのだろうか。
 
「回復薬使うのはLボタンで武器の切り替えはRボタンな」
「わかりました」
「序盤は敵も弱いからそんなに気ぃ張らなくていいぞ」
「いや、でも緊張しますよ……」
「あー……まあ、初めてだし知らねぇ奴とだもんな。ごめんな」

 ルイスさんに気を遣わせて謝らせてしまった。
 僕はすぐルイスさんに謝ろうとしたけど、タイミング悪くゾンビが登場した。

「お、来た来た」

 僕は咄嗟とっさにボタンを押すと、目の前のゾンビを撃った。
 撃った弾はゾンビの足に当たったようで、ゾンビは足を引きずりながらこっちに向かってくる。

「頭狙うと一撃で死ぬぞ」
「うわ、わわっ」
「落ち着け落ち着け。頭じゃなくてもいいからそのまま何発か撃ってみろ」
「は、はい」
 
 ルイスさんに言われた通り、三発ほど撃ってみるとゾンビは黒いちりになって消えた。

「倒せました!」
「おーいいじゃん。その調子で次な」
「はいっ」
「死にそうになったら蘇生そせいも出来るから安心して戦えよ」

 僕が一人で慌てている間にルイスさん達は確実に敵を撃破していたようで、活躍を見れなかったのが悔やまれた。  
 チャットではナイスとかやるじゃんとか書き込まれていて、少し照れくさくなる。
 僕はそんな事ないですと返事をしようとしたけど、否定するのもなんだか違う気がして、もっと頑張りますと文字を打ち直した。

「ルイスさん、これってどのくらいのペースで敵が来るんですか?」
「最初は十人で、後になるにつれて十人ずつ増えてく」
「うわぁ」
「動かないで籠城ろうじょうすんのもありだけど、探索しながら倒した方がイベント限定のアイテムやレアなアイテムは手に入る確立が高いな。弾とか回復薬とかも落ちてるし」
「……弾切れになったりしません?」
「そうならないようにある程度の数は持ってるから、なかったらそん時渡すよ」
「お願いします」

 弾がない状態でゾンビが襲ってくるなんて、考えただけで怖すぎる。
 出来れば弾切れになる前に弾を補充しておきたいところだ。
 慎重にルイスさん達について行くと、アイテムがたくさん落ちている場所に辿り着いた。
 キラキラと光るエフェクトが眩しい。

「拾っていいぞ」
「え。いいんですか?」
「俺達はまだ余裕あるから」
「ありがとうございます!」
「ちなみにそれ全部拾ったら一気に百人来るから」
「え゛っ」

 余す事なく全部拾った瞬間、ゾンビ達が雄叫びを上げながら押し寄せてきた。
 チャットではゾンビがゴミのようだとかなんとか言って盛り上がっている。こっちはそれどころじゃない。

「もしかしてわざと僕に拾わせました!?」
「うん」
「うん、って! うん、って!」
「アイテムは全回収したいよな」
「それはそうですけど! 聞いてないですよこんなの!」

 僕は焦る気持ちを抑えて、必死に照準を合わせて撃った。
 しばらくそうして攻撃を続けていると、あれだけいたゾンビ達は綺麗さっぱりいなくなった。
 僕は目の前のゾンビしか対処出来なかったけど、他はルイスさん達が全部倒してくれたらしい。

……強い、強すぎる。

 でも大事な事はもっと早めに言ってほしかった。
昨日もそうだったけど、ルイスさんは僕の反応を面白がっているふしがある。
その証拠にルイスさんは楽しそうに今も笑っていた。

「悪い悪い。次からはちゃんと言うから」
「もー……約束ですよ」
「おう。じゃあ次はあそこの壁壊すぞ」
「壁?」
「壊したら千人来襲する」
「だからなんでハードモードにしようとするんですか! 言えばいいって問題でもないですよ! それに僕初心者です!!」

 ルイスさんの恐ろしい発言に、僕は思わずゲームの中の壁を殴った。
 ルイスさんは声を上げて笑っている。
 みんなで壁の破壊活動にいそしむと、壁は崩れて砂になった。
砂の中から無敵薬というアイテムが光を放って人数分出てくる。

「中盤以降にそれ使うと楽だぞ」
「へー」
「敵も強くなるからな。攻撃を受けてもひるんだりよろけたりするのがなくなる」

 ルイスさんの笑いは引いたようで、僕にアイテムについて丁寧に説明をした。
 アイテムの使い方の理解は出来たけど、自分が使いこなせる自信はない。
 僕はそっと息をつくと、次の戦闘に備えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

清楚な執事長、常駐位置が“お嬢様の隣”に確定しました

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話・後日談12話⭐︎ 清楚で完璧、屋敷の秩序そのもの——そんな執事長ユリウスの“常駐位置”が、なぜか私の隣に確定しました。 膝掛けは標準装備、角砂糖は二つ、そして「隣にいます」が口癖に。 さらに恐ろしいことに、私が小声で“要求”すると、清楚な笑顔で「承知しました」と甘く返事をしてくるのです。 社交は上品に、恋心は必死に隠したい。 なのに執事長は、恋を“業務改善”みたいに制度化して逃がしてくれない——! むっつり令嬢の乙女心臓が限界を迎える、甘々コメディ恋愛譚。 清楚な顔の執事長が、あなたの心臓まで囲い込みにきます。

死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。

みゅー
恋愛
異世界へ転生していると気づいたアザレアは、このままだと自分が死んでしまう運命だと知った。 同時にチート能力に目覚めたアザレアは、自身の死を回避するために奮闘していた。するとなぜか自分に興味なさそうだった王太子殿下に溺愛され、聖女をざまぁし、チート能力で世界を救うことになり、国民に愛される存在となっていた。 そんなお話です。 以前書いたものを大幅改稿したものです。 フランツファンだった方、フランツフラグはへし折られています。申し訳ありません。 六十話程度あるので改稿しつつできれば一日二話ずつ投稿しようと思います。 また、他シリーズのサイデューム王国とは別次元のお話です。 丹家栞奈は『モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します』に出てくる人物と同一人物です。 写真の花はリアトリスです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...