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ゲームと話
ゲームと話1
しおりを挟む公園では大福とよもぎちゃんが元気に駆け回って、終始楽しそうだった。
途中でよその犬がじゃれついてきたけど、犬同士の喧嘩になる事もなく、平和な時間を過ごせた。
帰り道も二匹はご機嫌で、先頭を仲良く並んで歩いていた。
人間だったら鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気だった。
家に帰ると、ルイスさんとマリアンネさんが昼食を作って待っていた。
時刻はちょうど十二時である。
マリアさん曰く、予定より早く仕事が片付いたらしい。
昼食のメニューはミートソースパスタとサラダ、オニオンスープ、デザートはフルーツゼリーで、どれも美味しかった。
昨日と同様、ルイスさんと僕とで後片付けをする。
シェルアさんはマリアンネさんに話があると言われてリビングを出ていったけど、きっと仕事の話だろう。
後片付けが終わると、ルイスさんは昨日みたいにゲームをしようと僕を誘ってくれた。
ルイスさんが選んだゲームはゾンビを倒すという結構前に流行ったものだった。
ルイスさんが言うには最近また流行っているらしい。
FPSが好きなのか聞くと、ルイスさんは複数プレイで僕と一緒に出来そうなのを選んだそうだった。
——自分の好きなゲームじゃなくて、僕に合わせてゲームを選んでくれたんだ。
僕はルイスさんのさりげない優しさに胸が温かくなった。
ゲームはグラフィックがとにかく綺麗で、且つリアルだった。
このゲームはストーリーモードもあるけど、今回やるのはバトルモードらしく、バトルモードはとにかく敵が多くて油断していたら一撃死もあるとルイスさんが教えてくれた。
バトルモードではオンラインで遠くにいる人とも一緒にプレイ出来るらしい。
称号やレアアイテムが欲しい人は、有志を募って団体でプレイしているとの事だった。
オープニングのムービーが終わって、プレイヤーのキャラクター選択画面へ切り替わる。
僕は初心者だから比較的使いやすそうな、全体のバランスが取れた男キャラを選択した。
「ルイスさんは誰にするんですか?」
「あー……こいつにする」
「女キャラですか?」
「こいつが一番攻撃速いんだよ」
「へえー」
キャラクターの選択画面からモードの選択画面へと移る。
ルイスさんの操作でバトルモードが選択されると、本日のミッションが表示された。
場所は廃都市で、最後の方に書かれていたミッションはゾンビを一万人倒せというものだった。桁が違いすぎる。
ロビーみたいな所に飛ばされると、周りにはたくさんのキャラクターがいた。
チャットで交流している人もいれば、ミッションクリアのために有志を募る人もいて、それぞれが自由に過ごしている。
物珍しさに色々見ていると、一人の男キャラが近付いてきて、僕達の周りをぐるぐる回り始めた。
「???」
「……あ、知り合いだこいつ」
「あ、そうなんですか? ちょっとびっくりしました」
「たまにふざけた事やるからな」
こんにちは、とチャットで元気な挨拶が飛んでくる。
でもルイスさんは返事をせずに無言でそのキャラを殴った。
——このゲームのシステムって人間にも攻撃出来るんだ!?
衝撃を受けながらも、僕は一応こんにちはとチャットで挨拶を返した。
すると奥の方から大柄な男キャラがこっちに向かって歩いてきた。
「この人も知り合いですか?」
「おう。でもこいつら夜にしかやってねぇはずなんだけど……」
ルイスさんはそう言うとチャットで長文を打ち始めた。
流れていく会話を見ていると、いつの間にか初心者の僕込みでチームを結成する事になっていた。
チャット欄は何故か盛り上がっている。
二人は僕がチームに加わる事を歓迎しているみたいで、今はイベント期間で初心者を連れているチームはポイントが倍貰えるのだと詳細を教えてくれた。
歓迎される理由はわかったけど、初心者だから周りに迷惑をかけてしまわないか心配だ。
「あの、迷惑かけたらごめんなさい……」
「いいんだよ迷惑かけても。そういうのは経験者がフォローするしな。ゲームは楽しむためにある物なんだから一緒に楽しもうぜ」
「そ、うですね……頑張ります!」
「おー。フォローは任せろ」
よろしくお願いしますとチャットに文字を打つ。
二人からこちらこそという返事きたところで、ゲームが始まった。
さっきのロビーから、赤い空が広がる廃都市へと場所が移される。
プレイヤーは僕達しかいないみたいだった。
「操作は昨日やったのとそんなに変わんねぇからわかりやすいと思う。先に回復薬渡しとくわ」
「あ、ありがとうございます」
ルイスさんは一気に二十個くらい回復薬をくれた。
多い。ルイスさんは使わないのだろうか。
「回復薬使うのはLボタンで武器の切り替えはRボタンな」
「わかりました」
「序盤は敵も弱いからそんなに気ぃ張らなくていいぞ」
「いや、でも緊張しますよ……」
「あー……まあ、初めてだし知らねぇ奴とだもんな。ごめんな」
ルイスさんに気を遣わせて謝らせてしまった。
僕はすぐルイスさんに謝ろうとしたけど、タイミング悪くゾンビが登場した。
「お、来た来た」
僕は咄嗟にボタンを押すと、目の前のゾンビを撃った。
撃った弾はゾンビの足に当たったようで、ゾンビは足を引きずりながらこっちに向かってくる。
「頭狙うと一撃で死ぬぞ」
「うわ、わわっ」
「落ち着け落ち着け。頭じゃなくてもいいからそのまま何発か撃ってみろ」
「は、はい」
ルイスさんに言われた通り、三発ほど撃ってみるとゾンビは黒い塵になって消えた。
「倒せました!」
「おーいいじゃん。その調子で次な」
「はいっ」
「死にそうになったら蘇生も出来るから安心して戦えよ」
僕が一人で慌てている間にルイスさん達は確実に敵を撃破していたようで、活躍を見れなかったのが悔やまれた。
チャットではナイスとかやるじゃんとか書き込まれていて、少し照れくさくなる。
僕はそんな事ないですと返事をしようとしたけど、否定するのもなんだか違う気がして、もっと頑張りますと文字を打ち直した。
「ルイスさん、これってどのくらいのペースで敵が来るんですか?」
「最初は十人で、後になるにつれて十人ずつ増えてく」
「うわぁ」
「動かないで籠城すんのもありだけど、探索しながら倒した方がイベント限定のアイテムやレアなアイテムは手に入る確立が高いな。弾とか回復薬とかも落ちてるし」
「……弾切れになったりしません?」
「そうならないようにある程度の数は持ってるから、なかったらそん時渡すよ」
「お願いします」
弾がない状態でゾンビが襲ってくるなんて、考えただけで怖すぎる。
出来れば弾切れになる前に弾を補充しておきたいところだ。
慎重にルイスさん達について行くと、アイテムがたくさん落ちている場所に辿り着いた。
キラキラと光るエフェクトが眩しい。
「拾っていいぞ」
「え。いいんですか?」
「俺達はまだ余裕あるから」
「ありがとうございます!」
「ちなみにそれ全部拾ったら一気に百人来るから」
「え゛っ」
余す事なく全部拾った瞬間、ゾンビ達が雄叫びを上げながら押し寄せてきた。
チャットではゾンビがゴミのようだとかなんとか言って盛り上がっている。こっちはそれどころじゃない。
「もしかしてわざと僕に拾わせました!?」
「うん」
「うん、って! うん、って!」
「アイテムは全回収したいよな」
「それはそうですけど! 聞いてないですよこんなの!」
僕は焦る気持ちを抑えて、必死に照準を合わせて撃った。
しばらくそうして攻撃を続けていると、あれだけいたゾンビ達は綺麗さっぱりいなくなった。
僕は目の前のゾンビしか対処出来なかったけど、他はルイスさん達が全部倒してくれたらしい。
……強い、強すぎる。
でも大事な事はもっと早めに言ってほしかった。
昨日もそうだったけど、ルイスさんは僕の反応を面白がっている節がある。
その証拠にルイスさんは楽しそうに今も笑っていた。
「悪い悪い。次からはちゃんと言うから」
「もー……約束ですよ」
「おう。じゃあ次はあそこの壁壊すぞ」
「壁?」
「壊したら千人来襲する」
「だからなんでハードモードにしようとするんですか! 言えばいいって問題でもないですよ! それに僕初心者です!!」
ルイスさんの恐ろしい発言に、僕は思わずゲームの中の壁を殴った。
ルイスさんは声を上げて笑っている。
みんなで壁の破壊活動に勤しむと、壁は崩れて砂になった。
砂の中から無敵薬というアイテムが光を放って人数分出てくる。
「中盤以降にそれ使うと楽だぞ」
「へー」
「敵も強くなるからな。攻撃を受けてもひるんだりよろけたりするのがなくなる」
ルイスさんの笑いは引いたようで、僕にアイテムについて丁寧に説明をした。
アイテムの使い方の理解は出来たけど、自分が使いこなせる自信はない。
僕はそっと息をつくと、次の戦闘に備えた。
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