確実にモブだけど、好きにさせていただきます!

万李

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丁度そのタイミングで先生が来た為、すぐに授業になったけど、私何かマズイ事したのかしら。


そんな疑問を持ちながら、魔力を練る訓練の為、小さい訓練用の個室へと移動した。

魔力を上げるためのこの授業は、魔法の相性のいいクラスメイトとペアになって行う。

私のペアはグレイシア様で、2人で小さな机を挟んで向かい合って座った。



「ローズベルト嬢、聞きたい事があるんだけど」



「はい、なんでしょうか?」



「先程の魔法、あれは一体」



「修復魔法ですか?あれは治癒や清浄魔法の原理の応用で」



「治癒…ローズベルト嬢の適正は光と水でしたよね?基本属性は適正でなくてもある程度使えますが、聖魔法は使えないのでは?」



「はい、聖魔法は使えません。なので、聖魔法で行う治癒とは異なりますが、水魔法と土魔法を掛け合わせれば、似たような事は可能です」



「つまり、水魔法で清浄して土魔法で欠損部の修復?」



「その通りです。なので、骨折や切り傷等の治癒なら可能です。火傷や擦り傷等の復元が必要な場合は、光魔法を加える事である程度は対応できます。聖魔法の治癒ほど万能ではないのですけどね」



「んー...なるほど、原理は分かるけどそれを実際に成功させるのは難しくないですか?少なくとも学生のうちにできる人はいないかと」



「確かにコツは必要ですけれど、練習すればグレイシア様もできますわ。やってみます?」



「是非。魔法自体は先程実際に見たのと、ローズベルト嬢の説明で理解したが、どのような割合で掛け合わせてるのかが知りたい。そうだな…」



制服の内ポケットに手を入れると、小さなナイフを取り出し、止める間もなく自身の掌を切りつけた。

そこまで深くは切れていないものの、傷口から血が滴る。




「グレイシア様!」



「ん?」



「ん?じゃありません!なんて事をっ!もう!」



「いや、実際にやってもらうのが1番だと思って」



「例えそうでも、これはダメです!…はぁ、すぐに治しますから」



「うん」



お説教は後にしよう。
とにかくまずこの痛そうな傷を治さないと。



片手でそっとグレイシア様の手に触れ、傷口に手をかざす。

すぐに掌から淡い光が放たれる。

じわじわと傷が浅いところから塞がっていき、光が消える頃には綺麗に無くなった。



「なるほど。水魔法で土魔法を挟む感じか。しかし、中々調整は」



「グレイシア様」



「…ん?」



先程まで傷のあった手を、両手でぎゅっと握る。



「私が治癒魔法を使うのを実際に見ていないのにも関わらず、信じてくれた点については嬉しいです。新しい事への関心の強さや、学ぶ事への意欲が高いのも素敵です。でも、これはダメです!もし、私がちゃんと治癒出来なかったらどうするんですか?」



「これくらいの怪我なら大丈夫ですよ」



「グレイシア様が大丈夫でも、私が大丈夫じゃないです!グレイシア様が傷付くのは、例え小さな怪我だとしても嫌です!お願いですから、もう簡単に自分を傷付けないでください…」



「っ…ごめん。今後は気を付ける」



「私も大きな声を出して、すみません」



「いや…」



しんと気まずい空気が漂い、視線が自然と机の上に落ちる。


……



「っあ!すみません!私ったらいつまでもっ」



握ったままになっていた手に気付いて、慌てて離すと、その手を追いかけるようにグレイシア様の手に掴まれる。



「え…?」



「…魔力アップの訓練、今日は魔力交換してみませんか?」



「魔力交換…ですか?」



「はい。お互いに同じ量の魔力を送り合えば、少しずつですが魔力も上がりますし、お互いの適正魔法の影響も出るので、相手の適正魔法が使いやすくなります。ただ、相性が良くないとかなり不快で、耐えられるものではないのですが、僕達は相性がいいようなので、試してみませんか?」



「はい、グレイシア様がいいのなら」



「ではやってみましょう」



そう言うと、お互いの両手の掌が合わさるように指を絡める。
いわゆる恋人繋ぎだ。



こんな風に男性と手を繋いだ事などなかったのもあり、僅かに顔に熱が集まる。



「では、繋いでいる手から僕が魔力を送るので、なるべく同じ量の魔力を僕に送ってください」



「はい」



ふぅと1つ息を吐いて、目を瞑って手元に集中する。



グレイシア様の手から、温かいものが流れ込んでくるのが分かる。

ん…この位…かな?


同じ位の魔力をグレイシア様の方に流すと、お互いの魔力が混ざりあったように温かさを増し、段々と全身に回っていく。


気持ちいい…

まるで温かいお湯の中にぷかぷかと浸かっているような


温かい魔力が全身に回った後、ふわっと頭の方から抜けていった。



ゆっくりと目を開けると、同じ様に目を開けたグレイシア様と目が合う。



「どこか不快に感じたりはしませんでしたか?」



「大丈夫です。むしろ温かくて、気持ち良かったです。グレイシア様は大丈夫ですか?」



「うん、僕も」



そう言って微笑んだグレイシア様の瞳はどこかとろんとしていて…


ん?



「グレイシア様、あの、瞳の色が少し薄くなっていません?」



「え?」



よく見ようと身を乗り出して、瞳を覗き込む。



「っ、ローズベルト嬢っ」



「んー…あ、薄くなっているんじゃなくて、虹彩に薄い紫が少し混ざっていて…星空みたいで綺麗…」



「紫…?ローズベルト嬢の瞳にも、縁取るように濃い藍色が…これって」



コンコン



ノックの音に、お互いの瞳を覗き込んでいた近過ぎる距離に気付き、パッと離れる。



「失礼するよ。調子はどうかな?」



「はい。あの、魔力交換をしていたんですが…」



「ん?もしかしてダメだった?君たちは相性良いはずだけど」



「いや、それは大丈夫だったのですが、瞳の色が…」



「色?…あぁ、本当だ。お互いの色が混ざってるね。」



「お互いの?」



言われてみれば、グレイシア様の瞳に混じった紫は、私の瞳の色だ。



「うん。良いとは思っていたけど、ここまでとはね。中々無いんだよ、色が出る程相性が良いのって。今後も時々やるといいよ。ただ、魔力の与え過ぎには注意してね。暴走しちゃうから」



「はい…」



満足そうに頷きながら部屋を出ていった。



「ふぅ…まぁ、変な事になった訳じゃなくて良かったね」



「はい。確かにあの位の量でも、いつもより魔力が満ちている感じがするので、やり過ぎたら危ないですね」



「そうだね。そこは慎重にしないと。でも、ただ1人で魔力を練るより、かなり効果があるから、また時々お願いしてもいいかな?」



「はい、勿論です」



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