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しおりを挟む「さて、ダクワーズさん。君の方はどうかな?」
「私は大丈夫です!むしろ気持ち良かったのに」
「そうだろうね」
座ったままのマリアンヌ様を見下ろす先生の目は、氷のように冷たかった。
この人…怒らせてはいけない人だわ。
「さっき説明したよね?相性が悪いと、体調や魔力に悪い影響が出るって」
「でも、それほど悪くないって」
「魔力の相性だけは、ね?お互いに対する気持ちも影響すると説明したのは聞いていた?君が気持ち良く感じたのは、君が殿下を慕っているから当たり前の事。けど、殿下は君に対していい感情は持っていないと思ったから、その点を説明したんだけど、君に遠回しの牽制は伝わらなかったね。」
呆れたように、1つため息をつく。
「まぁでも、実際に殿下が君の魔力を受け付けないのを目の当たりにすれば、少しは君にも殿下の気持ちが分かるかと思ったんだけど」
「っ!」
「因みにね、相性が良くてお互いを想い合えていたら、彼らみたいに互いの色が出たりするんだ」
先生の目線に促されるようにこちらを見たマリアンヌ様は、悔しそうに顔を歪める。
「余程相性が良くないとこうならないから、珍しいんだけどね」
「なんであんた達がっ…そうなるのは私と殿下のはずでっ」
「それは無理でしょ。仮にお互いが想い合っていたとしても、元々の魔力の相性がそれ程良くないから、ここまではならないよ。どうしてそうなるはずだと思えたのか不思議でならないけど、相性が悪いどころか、拒絶反応出てるからね?そんな相手に、倍以上の魔力を送るなんて…。
いいかい?君の魔力は殿下にとって、毒と同じだ。二度と魔力交換したい等思わない事だね」
…わぁ…アルヴィン先生、こわい。
マリアンヌ様も流石に言い返せないのか、顔を赤くして黙り込んでる。
「あ、それから」
まだ追い討ち!?
「魔力を送る量の調整もできないようだから、君、補習ね。ダンケル先生に頼んでおくから、放課後残るように。いいね?」
「はい…」
魔法を使いこなすには、まず体作りから!なダンケル先生の補習とは…キツイでしょうね。
殿下とメリアローズ様は、先生に伴われて医務室へと向かった。
私も席に戻ろうと思った時、後ろから手首を掴まれた。
驚いて振り向くと、さっきまで俯いていたマリアンヌ様が、鋭い目つきで見上げていた。
「…なにかしら?」
「ちょっと話があるから、後で付き合いなさいよ」
「貴方、先程も先生に注意されてましたけど、もう少し貴族令嬢としてのマナーを学んだ方がいいのでは?」
流石に今の物言いは無い。
「は?」
「まず、候爵令嬢である私に、男爵令嬢の貴方から、許しもないのに話しかける事が非常識です。その上、この様に腕を掴むなど論外ですわ」
「学園では皆平等でしょ!?」
「学ぶ環境は、です。ここは貴族としての常識やマナー、社交も学ぶ場です。いくらクラスメイトとはいえ、無礼講とはなりません」
「そんなのっ…私はヒロインなんだからっ…」
さらに顔を歪めると、手首を握る手に力が加わる。
流石に痛い。どこからこんな力出てるのかしら。
腕を振り払おうとした時、マリアンヌ様の手が離れた。
「何をしてる」
私たちの異変に気付いてくれたのか、グレイシア様がマリアンヌ様の腕を引き剥がしてくれたようだ。
「ちょっとローズベルトさんに話があっただけです」
「それにしては跡が残る程、ローズベルト嬢の腕を掴んでいた様だが?」
ちらっと掴まれていた手の形に赤くなった腕を見て、不貞腐れたように答える。
「私がそんな強い力出るわけないじゃないですか。ローズベルトさんの肌が余程弱いんじゃないですか?」
そう言ってそっぽを向くマリアンヌ様に、もはや呆れる。
「もし仮にそうだとしたら余計に、君は今後ローズベルト嬢に触れるな。アレルギーだといけないから」
氷の瞳でマリアンヌ様を軽く睨みつけてから、パッとこちらを向いた。
「ローズベルト嬢、医務室に行きましょう」
このくらいならすぐ治せるから大丈夫なのに、有無を言わせず腰に回された腕に押され、廊下に出て医務室に向かう。
「あのっ、グレイシア様?」
「僕がそばにいたのに、気付くのが遅れて申し訳ない」
「いえ、ありがとうございました。…ふふ、でも、アレルギーって」
庇ってくれてキュンとしつつも、グレイシア様が放った言葉にずっと笑いを堪えていた。
「いくらなんでも、マリアンヌ様アレルギーではないですわっ」
堪えていた分、1度笑ってしまうと中々止まらない。
「流石に本当には思ってないよ?けど、ダクワーズ嬢の態度にイラッとしてつい。…そんなに可笑しかった?」
くすくすと笑い続けていたのがようやく治まり、息を整えながら滲んだ涙を指で拭う。
「だって、グレイシア様ったらあんなに怖い顔しながら言うから、素敵だった分余計に可笑しくて。笑ってしまってごめんなさい」
「いや、別に謝らなくていいけど。…大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
答えながら、腕に治癒魔法をかけると、綺麗に痕は消えた。
「でも、殿下は本当にアレルギー症状出ちゃうかもしれませんね」
「僕も出そうだよ」
「まぁ!じゃあ、もしマリアンヌ様がグレイシア様に触れたら、私がすぐに浄化しますわね」
「そうしてくれると助かる」
「先程マリアンヌ様に触れた手は大丈夫ですか?」
クスクス笑いながら聞くと、少し考えるように自分の手を見つめた後、何を思ったのかそのまま私の手を握った。
「え?」
「うん、これで大丈夫」
フッと悪戯っぽい笑みを向けられ、一気に顔に熱が集まるのが分かった。
「も、もう授業が始まるから教室に戻りましょ!」
勢いよく顔を背けて、来た道を戻る。
グレイシア様ったら、天然でやってるのかしら!?
心臓がもたないわっ!
赤くなった顔を手で抑えながら、早足で教室に戻った。
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恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。
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