12 / 16
11
しおりを挟む授業が終わり、各々寮へ戻るために支度をする。
「メリアローズ様、私先生に資料整理の手伝いを頼まれておりますので、先に戻ってくださいませ。殿下、申し訳ないのですが、私の代わりにメリアローズ様を寮までお願いします」
「あぁ、元々そのつもりだよ。リリアーナ嬢は1人で大丈夫?」
「はい、問題ありません。お気遣いありがとうございます」
メリアローズ様とグレイシア様は、少し心配そうにしていたけど、言っても学園内なのでそこまで心配しなくても大丈夫なのに。
でもその気持ちは嬉しい。
笑顔を向けて手を振ってから、先生のいる準備室へと向かう。
先生方が使う各自の研究室と準備室は、教室のある棟とは別になっており、寮とは反対側にある。
他の教室等は入っていない為、教員棟にはほぼ生徒の姿はない。
中庭に面する渡り廊下を抜けて、2階にある先生の部屋のドアをノックする。
「アルヴィン先生?ローズベルトです」
「あぁ、入ってー」
ドアを開けて覗くと、机に書類を広げて座っている先生…の前に山積みにされた本と、書類で見えなくなった応接セットと思われるテーブルとソファ。
床にも本や紙が散らばっている。
「…先生、もしかして片付けられないタイプですか?」
「いや、研究に没頭しちゃうと、ついね?」
「これ、先生はどこに何があるのか分かるんですか?」
「いや、わかんない」
「…1番駄目なタイプですわね」
「ははっ、確かに。資料探す度に広がっていくからねぇ」
先生としても、魔術師としても優秀なのに、やはり人には1つくらい欠点があるものなのかしら。
「それで、私はここの片付けをしたらいいのでしょうか?」
「あー…まぁそうなるかな。少し話もしたかったから、片付けながらいいかな?」
「はい」
早速、床に散らばっている紙を拾い集める。
「…先生、てっきり床に落ちているものは書き損じたり必要の無いものと思ったのですが、これ必要ですわよね?」
「さすがローズベルト嬢。ざっと見ただけで分かるとは。そうなんだ、もちろんゴミが大半なんだけど」
「はぁ、分かりましたわ。必要そうだと思ったものはまとめておきますわ。微妙なものは確認致します」
「ありがとう、助かるよ。やっぱりローズベルト嬢に頼んで正解だったな♪」
書類を拾い仕分けしながら、鼻歌を歌っている先生に、軽く呆れながら視線を向ける。
「それで先生。話とは何ですか?」
「えっとね、ほらダクワーズさんのノート直したでしょ?あの魔法、どうやって習得したのかなって」
「あぁ、あれは祖母から教えていただきました。私の魔法の先生は祖母でしたから」
「ローズベルト嬢のお祖母様…っあー!なるほどね!『稀代の魔女』なら納得!」
「稀代の魔女?」
「あれ?知らない?君のお祖母様、めちゃくちゃ凄い魔術師だったんだよ」
「そうなんですね。確かに祖母の魔法の腕は、桁違いです」
「是非お会いしてみたいなぁ。でも、色々納得したよ。ローズベルト嬢の魔力って凄く洗練されてるから。相当訓練したんだなーって」
「まぁ、お祖母様は厳しいですからね」
その後も整理をしつつ、先生からの質問に答えていると、だいぶ日も傾いてきた。
「あ、もうこんな時間か。ローズベルト嬢、ありがとう。そろそろ切り上げよう」
「はい。とりあえず本はタイトル順に並べておきました。書類はこちらの方が必要なものです」
「すっかり綺麗になって、助かったよ」
「定期的にお手伝いに来ますね」
「ありがとう。そうしてくれると、本当助かる」
「先生にはお世話になってますから。…では、失礼します」
「あ、寮まで送るよ」
「大丈夫ですわ。学園内を横切るだけなので」
ペコッと頭を下げてから準備室を出て、寮に向かう。
ちょうど渡り廊下を歩いている時、中庭の方へ強く腕を引っ張られた。
「きゃっ!」
驚いて引っ張られた腕の先を見ると、私を睨みつけるマリアンヌ様がいた。
そのまま無理やり中庭の奥の方へと連れていかれた。
「ちょっとあんた、後で付き合いなさいよって言ったじゃない!探したのよ!?」
「約束はしていませんし、私は先生に呼ばれていたので。マリアンヌ様も補習だったのでは?」
「そうだけど、普通待ってるでしょ!?」
「なぜ私がわざわざ、貴方を待たなくてはいけないのかしら?」
「話があるって言ったじゃない!」
「私にはありません。いい加減、手を離していただけるかしら?」
顔を歪めながら、乱暴に手を振り払われた。
「はぁ、貴方は淑女教育は受けていないのかしら」
「いちいちうるさいわね!今関係ないでしょ!?」
「なら、さっさと話してください。私も暇ではないんです」
「あーもう、ムカつく!!モブの癖に!」
「モブ?」
「あんたもどうせ転生者なんでしょ!?」
「転生…?何の話かしら。意味が分からないのだけど」
いや、こんな風に聞かれて、明らかに嫌われてる相手に教えないでしょ。
「だから!ここは『 夢を叶えて』っていう乙女ゲームの世界で、私はヒロイン!あんたはモブ!それに気付いて、私の邪魔してるんでしょ!?」
「…は?ゲーム?って何ですか?ボードゲームみたいなものですか?マリアンヌ様がヒロイン…?よく分かりませんが、マリアンヌ様に対して、何か邪魔をした覚えはありませんけど」
どちらかと言うと自滅では?
「は?…え、もしかして本当に分からない?…っでも、だったらなんで上手くいかないのよ!クリストフだって今頃私にべったりの筈だし、先生だって味方だったのに!おかしいじゃない!だってヒロインなのよ!?みんな私の事好きなはずでしょ!?私はちゃんとゲーム通りに動いてたのに、全然好感度上がらないし!」
「…言っている意味はよく分かりませんが、要するに私が何かしらの邪魔をしたせいで、マリアンヌ様は殿下や先生から好かれていないと仰りたいんですか?」
0
あなたにおすすめの小説
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】
いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。
陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々
だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い
何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが
侑子
恋愛
十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。
しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。
「どうして!? 一体どうしてなの~!?」
いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
モブの声がうるさい
ぴぴみ
恋愛
公爵令嬢ソフィアには、幼い頃より決まった婚約者がいる。
第一王子のリアムだ。
いつの頃からか、ソフィアは自身の感情を隠しがちになり、リアム王子は常に愛想笑い。
そんなとき、馬から落ちて、変な声が聞こえるようになってしまって…。
ざまぁされるための努力とかしたくない
こうやさい
ファンタジー
ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。
けどなんか環境違いすぎるんだけど?
例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。
作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる