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sideブラッド
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レイラの寝顔を見つめながら、胸に膨れ上がる狂おしい感情に、もう戻れない道へ足を踏み入れてしまったことを実感する。
この国の王族には竜の血が流れているとされ、その愛はあまりに重く、一生にただ一人だけを愛する――そう伝え聞いていた。
万が一裏切られれば妬心に狂い、喪えば身を滅ぼす……そんな重すぎる愛で愛しい人を縛るなどあってはならない。
だから俺は生涯独身を貫こうと思っていた。
レイラがマシューと婚約をしたあの日あの瞬間から――
マシューは昔からレイラのことが好きだった。
懸命に気を引こうと餓鬼らしく嫌がらせや悪戯ばかりしていたが、全てが逆効果だった。
レイラのマシューを見る目はいつだって冷ややかだったし、それは大人になっても変わらなかった。
マシューの強い意向で二人の婚約は決まったのだが、レイラはそれを知らないようだ。
浮気三昧も全てレイラの気を引きたいがため。
バカなマシュー。
あいつのすることはいつだって斜め上で裏目に出る。
俺はあんな奴のためにレイラを諦めたのかと、怒りに震えたことなど数えきれない。
だが……愚かなマシューのお陰で、俺にもこうしてチャンスが巡ってきた。
浮気? 悪いなレイラ。
俺は君に対してはいつだって本気だった。
浮ついたものなど何一つない。
自らこの手に落ちてきてくれたんだ、もう決して逃さない、離さない。
生まれてこの方初めてマシューに感謝した。
お前が愚かで本当に良かった。
あとのことは心配するな、俺が生涯かけて必ずレイラを幸せにする。
「レイラ……愛してるよ」
音を立てて下唇を吸うと、レイラは薄っすらと目を開いた。
「……ブラッド?」
「ん、気分はどう?」
レイラはパチパチと目を瞬かせ、自分が裸であることに気づき恥ずかしそうに目を伏せた。
「えと……ちょっと怠い、かな?」
「そうか、ごめん……無理させすぎたな」
「でも……浮気の良さはすごくよく分かったわ」
恥ずかしそうに笑うレイラがあまりに可愛すぎて、心臓がバカみたいに暴れ出す。
「浮気じゃなくて、本気になってみない?」
「え?」
「浮気より、本気の恋のほうがずっといい」
「で、でも……私とブラッドは……」
「俺は……君と本気の恋がしてみたいんだけど」
そう言って微笑むと、レイラは真っ赤になってシーツの下に隠れてしまった。
悪くない手応えに俺は満足し、シーツごとレイラを抱きしめる。
「ねえレイラ、返事は?」
「じゅ……十八回まであと何回残ってる?」
レイラがこの重すぎる愛を受け入れてくれる日も、そう遠くはないかもしれない――
この国の王族には竜の血が流れているとされ、その愛はあまりに重く、一生にただ一人だけを愛する――そう伝え聞いていた。
万が一裏切られれば妬心に狂い、喪えば身を滅ぼす……そんな重すぎる愛で愛しい人を縛るなどあってはならない。
だから俺は生涯独身を貫こうと思っていた。
レイラがマシューと婚約をしたあの日あの瞬間から――
マシューは昔からレイラのことが好きだった。
懸命に気を引こうと餓鬼らしく嫌がらせや悪戯ばかりしていたが、全てが逆効果だった。
レイラのマシューを見る目はいつだって冷ややかだったし、それは大人になっても変わらなかった。
マシューの強い意向で二人の婚約は決まったのだが、レイラはそれを知らないようだ。
浮気三昧も全てレイラの気を引きたいがため。
バカなマシュー。
あいつのすることはいつだって斜め上で裏目に出る。
俺はあんな奴のためにレイラを諦めたのかと、怒りに震えたことなど数えきれない。
だが……愚かなマシューのお陰で、俺にもこうしてチャンスが巡ってきた。
浮気? 悪いなレイラ。
俺は君に対してはいつだって本気だった。
浮ついたものなど何一つない。
自らこの手に落ちてきてくれたんだ、もう決して逃さない、離さない。
生まれてこの方初めてマシューに感謝した。
お前が愚かで本当に良かった。
あとのことは心配するな、俺が生涯かけて必ずレイラを幸せにする。
「レイラ……愛してるよ」
音を立てて下唇を吸うと、レイラは薄っすらと目を開いた。
「……ブラッド?」
「ん、気分はどう?」
レイラはパチパチと目を瞬かせ、自分が裸であることに気づき恥ずかしそうに目を伏せた。
「えと……ちょっと怠い、かな?」
「そうか、ごめん……無理させすぎたな」
「でも……浮気の良さはすごくよく分かったわ」
恥ずかしそうに笑うレイラがあまりに可愛すぎて、心臓がバカみたいに暴れ出す。
「浮気じゃなくて、本気になってみない?」
「え?」
「浮気より、本気の恋のほうがずっといい」
「で、でも……私とブラッドは……」
「俺は……君と本気の恋がしてみたいんだけど」
そう言って微笑むと、レイラは真っ赤になってシーツの下に隠れてしまった。
悪くない手応えに俺は満足し、シーツごとレイラを抱きしめる。
「ねえレイラ、返事は?」
「じゅ……十八回まであと何回残ってる?」
レイラがこの重すぎる愛を受け入れてくれる日も、そう遠くはないかもしれない――
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