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3.選択科目
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レースのカーテンが揺れている。
外は汗ばむほどだが、教室の中は涼しいくらい。
ジョエルが目をクリクリさせながら話しかけてくる。
「ねえ、今日どこに行くか決めた?せっかくだから、一緒に行こうよ」
選択科目の話だ。僕は思っていたことを言った。
「実は、行ってみたいところがあるんだ」
「もしかして、魔導機械科じゃない?」
「え、なんで分かったの?」
正に、行きたかったのは魔導機械科だった。動かなくなったマドロイドが治せないか、先生に聞いてみたかったのだ。だから僕は今日、こっそりカバンの中に白猫のパプルを忍ばせてきていたのだ。
「いや、だってさ。アレイシはあのマドロイドを、早く治したいんじゃないかなと思っただけだよ」
ジョエルの言葉に、僕は感心した。この友人は、人の事を思いやれる人なんだと思った。
僕は『そのとおりなんだ』と答えた。
「オッケー!じゃあ午後は、魔導機械科へ行ってみよう!」
「あはは!今頃遅いんじゃねえの?!」
ジョエルの声が聞こえたのか、最前列の派手な男子生徒が言った。確かルシアノとかいったか。
「お前ら知らないのか?魔導機械科のサンジョゼ先生は、あの魔導ロイドを考案した超有名な、名誉教授だぞ」
「!」
あのパプルを作った人がこの学園に?!
こんな偶然があるだろうか?僕は運命と希望を感じた。この学校に入れたおかげで、本当にパプルは直るかもしれない。
しかし、その後に続くルシアノの言葉は衝撃だった。
「名誉教授の授業は人気だからな、今ごろ行ったって予約一杯で入れねえよ!」
「え、予約?」
「だから、遅いって言ったんだよ。ハハッ!」
「今すぐ行ってみよう」
「うん」
僕たちはサンジョゼ教授の教室に、急いで向かった。予約がいるなんて、聞いていない。気持ちが焦っていた。
魔導機械科の教室の前には、一冊のノートがあった。それには大きく『受講予約』と書かれてあり、3日間とも全てぎっしりと生徒の名前で埋め尽くされていた。
「どうしよう?」
困惑した顔でジョエルが、僕を見る。
僕も呆然として、ジョエルの顔を見返すしかなかった。
「…で、相談に来たのね」
クラウジーネ先生が、少し眉を細めて言った。
「確かに昨日、予約の話はしなかった。でもね」
一息ついてから、先生は続けた。
「君たちに配ったプリントには、ちゃんと書いていたはず。よく読んでいれば、こんなことにはならないんだけど」
「どうしても無理ですか?何とかなりませんか?」
僕は食い下がった。サンジョゼ教授に直接会って話を聞く機会を、どうしても失いたくなかったのだ。
グラウジーネ先生はしばしの沈黙のあと、無理ねと言った。
「残念だけど、毎日行ってキャンセルが出るのを待つしかないわね」
「あの…先生!」
喉に引っかかっていた問いを、僕は絞り出すように言った。
「3日後の選択科目ですけど、もし希望者が定員より多かったときは、…どうなるのですか?」
その先生の答えは、僕の心臓を一瞬で凍らせた。
「そうね。この自由授業中の受講回数が多い人から選ぶことになるわね」
終わった。
何ということだろう。そこに大きなチャンスがあったのに、気を抜きすぎて自ら潰してしまった。ちゃんと隅々までプリントを読んでいれば昨日のうちに予約できたはずなのに。
昼休みの残りの時間、気を取り直して一度教室に戻った僕たちは改めて話し合った。
「もしかして、どの科も予約制なのかな」
「わからないよ。行ってみないと」
「手分けして回ってみる?」
「そうだね。一緒に回ろうとか、のんきなこと言ってられないよね」
こうして僕達は、それぞれ別行動することにした。ジョエルはリストの始めから、僕はリストの後ろから回ることに決めたのだった。
リスト最後の科目は、魔導トレード科。
魔導トレード科って何だろう。担当はシモン教授と書いてあった。
トレード?何の勉強なんだろう…
外は汗ばむほどだが、教室の中は涼しいくらい。
ジョエルが目をクリクリさせながら話しかけてくる。
「ねえ、今日どこに行くか決めた?せっかくだから、一緒に行こうよ」
選択科目の話だ。僕は思っていたことを言った。
「実は、行ってみたいところがあるんだ」
「もしかして、魔導機械科じゃない?」
「え、なんで分かったの?」
正に、行きたかったのは魔導機械科だった。動かなくなったマドロイドが治せないか、先生に聞いてみたかったのだ。だから僕は今日、こっそりカバンの中に白猫のパプルを忍ばせてきていたのだ。
「いや、だってさ。アレイシはあのマドロイドを、早く治したいんじゃないかなと思っただけだよ」
ジョエルの言葉に、僕は感心した。この友人は、人の事を思いやれる人なんだと思った。
僕は『そのとおりなんだ』と答えた。
「オッケー!じゃあ午後は、魔導機械科へ行ってみよう!」
「あはは!今頃遅いんじゃねえの?!」
ジョエルの声が聞こえたのか、最前列の派手な男子生徒が言った。確かルシアノとかいったか。
「お前ら知らないのか?魔導機械科のサンジョゼ先生は、あの魔導ロイドを考案した超有名な、名誉教授だぞ」
「!」
あのパプルを作った人がこの学園に?!
こんな偶然があるだろうか?僕は運命と希望を感じた。この学校に入れたおかげで、本当にパプルは直るかもしれない。
しかし、その後に続くルシアノの言葉は衝撃だった。
「名誉教授の授業は人気だからな、今ごろ行ったって予約一杯で入れねえよ!」
「え、予約?」
「だから、遅いって言ったんだよ。ハハッ!」
「今すぐ行ってみよう」
「うん」
僕たちはサンジョゼ教授の教室に、急いで向かった。予約がいるなんて、聞いていない。気持ちが焦っていた。
魔導機械科の教室の前には、一冊のノートがあった。それには大きく『受講予約』と書かれてあり、3日間とも全てぎっしりと生徒の名前で埋め尽くされていた。
「どうしよう?」
困惑した顔でジョエルが、僕を見る。
僕も呆然として、ジョエルの顔を見返すしかなかった。
「…で、相談に来たのね」
クラウジーネ先生が、少し眉を細めて言った。
「確かに昨日、予約の話はしなかった。でもね」
一息ついてから、先生は続けた。
「君たちに配ったプリントには、ちゃんと書いていたはず。よく読んでいれば、こんなことにはならないんだけど」
「どうしても無理ですか?何とかなりませんか?」
僕は食い下がった。サンジョゼ教授に直接会って話を聞く機会を、どうしても失いたくなかったのだ。
グラウジーネ先生はしばしの沈黙のあと、無理ねと言った。
「残念だけど、毎日行ってキャンセルが出るのを待つしかないわね」
「あの…先生!」
喉に引っかかっていた問いを、僕は絞り出すように言った。
「3日後の選択科目ですけど、もし希望者が定員より多かったときは、…どうなるのですか?」
その先生の答えは、僕の心臓を一瞬で凍らせた。
「そうね。この自由授業中の受講回数が多い人から選ぶことになるわね」
終わった。
何ということだろう。そこに大きなチャンスがあったのに、気を抜きすぎて自ら潰してしまった。ちゃんと隅々までプリントを読んでいれば昨日のうちに予約できたはずなのに。
昼休みの残りの時間、気を取り直して一度教室に戻った僕たちは改めて話し合った。
「もしかして、どの科も予約制なのかな」
「わからないよ。行ってみないと」
「手分けして回ってみる?」
「そうだね。一緒に回ろうとか、のんきなこと言ってられないよね」
こうして僕達は、それぞれ別行動することにした。ジョエルはリストの始めから、僕はリストの後ろから回ることに決めたのだった。
リスト最後の科目は、魔導トレード科。
魔導トレード科って何だろう。担当はシモン教授と書いてあった。
トレード?何の勉強なんだろう…
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