4 / 27
4.魔導トレード科
しおりを挟む
第一印象は『黒い』だった。
カーテンを閉め切った部屋の中は、黒色のパーテーションでいくつも仕切られていた。そのせいで、昼間なのに薄暗い。
人がいるような気配もない。
「シモン教授はいらっしゃいますか?」
恐る恐る呼びかけると、意外にも奥から返事が返ってきた。
「教授はもういない」
「は?…どういうことですか?」
僕は声のした方へ進んでいった。
パーテーションの奥、部屋の一番隅に、巨大なモニターがあった。
そこには、赤と青のグラフ…『ローソク足』が、生き物のように動いている。その光の中に一人の男が座っていた。
男はモニターから目を離さずに言った。
「だから、言った通りだ。教授はいない」
その声には感情の起伏が全くなく、無機質な感じだ。
「どういうことでしょうか?」
「選択科目の受講だろ?教授は追証喰らって消えたから、諦めろ」
教授がいない?おいしょう?どういうこと?僕の頭は混乱していた。こんなに走り回って、まだ一つも受講できないとは思わなかった。
どうしていいかわからず、突っ立っていると奥でデジタル音と同時に女性の声がした。
ピンボーン
「リカーク!」
僕は他にも人がいた事に少し驚いて振り向くと、ドタドタとやってくる音がして、短髪の女子生徒が顔をのぞかせた。
「結構行けたよ今のは!…って…誰?」
「お前、まだいたのか」
「えっと…あの…ここ、魔導トレード科ですよね?」
「そうだけど、さっき言ったよな。シモン教授はいなくなったって。それを聞いてみんな帰ったぞ。悪いことは言わない。ここはやめとけ」
「じゃ教授の代理の方とかは…」
僕は1つでも、受講の実績が欲しかったのだ。何とか教授に話だけでも聞きたい。
女子生徒が、目の前の男子生徒を指さしていた。
「これ。この人が代理人のニッキー」
「え?」
教授の代わりを生徒が?どういうことだろうか?
「ニッキー、いいじゃんやらせてみても」
「だめだ」
ニッキーと呼ばれた男は椅子から立ち上がると、シンクに歩いていってコーヒーをいれ始めた。
「ねぇあんた、なんでここに来たの?」
僕に向き直った女子生徒が、ぶっきらぼうに聞いてきた。僕はこの学校の志願理由を聞かれたものと思った。
「稼げる大人になりたいからです」
スプーンを回していた手を止めて、ニッキーが振り向いた。
「何んだと?」
「ほらー」
短髪女子がにやりと笑いながら言った。
「お前、魔導トレードを知ってるのか?」
「?」
何がなんだか分からずに、僕はポカンとするほかなかった。
テーブルの上は大量の紙が散乱していた。紙には何やらグラフのような、表のようなものがたくさん印刷してあった。
そのテーブルを挟んで、僕はニッキーさんの話を聞いている。
「いいか。この魔導トレード科は、他の教科とは全く違う。下手したらマジで死ぬ」
「は?」
「ビビらせすぎだよー」
「イルダ!シモン教授が飛んた理由、わかってんのか?」
「そうだけど」
「だが、稼げるというのも事実だ。だから本気で稼ぎたいというなら…止めない」
ニッキーは真面目な顔で続けた。
「ここでは全てが実戦で実弾だから、被弾するとリアルに喰らう。当然出血もするし、下手したら死ぬ。それはこれが現実だからだ」
戦争でもしているのだろうか?
僕の脳はニッキーの話が理解できずにいたので、アホな顔をしていたのだろう。
堪りかねたイルダさんが割って入った。
「あんたの説明じゃ何もわっかんないよ。あたしが簡潔に説明すっか?」
イルダさんが椅子にドカッと座って言った。
「で、あんたまだ時間あんの?」
…この時僕が断って次の科へ行っていたら、その後の人生は全然違うものになっていただろう。
だが、僕はこう言ったんだ。
「はい」
カーテンを閉め切った部屋の中は、黒色のパーテーションでいくつも仕切られていた。そのせいで、昼間なのに薄暗い。
人がいるような気配もない。
「シモン教授はいらっしゃいますか?」
恐る恐る呼びかけると、意外にも奥から返事が返ってきた。
「教授はもういない」
「は?…どういうことですか?」
僕は声のした方へ進んでいった。
パーテーションの奥、部屋の一番隅に、巨大なモニターがあった。
そこには、赤と青のグラフ…『ローソク足』が、生き物のように動いている。その光の中に一人の男が座っていた。
男はモニターから目を離さずに言った。
「だから、言った通りだ。教授はいない」
その声には感情の起伏が全くなく、無機質な感じだ。
「どういうことでしょうか?」
「選択科目の受講だろ?教授は追証喰らって消えたから、諦めろ」
教授がいない?おいしょう?どういうこと?僕の頭は混乱していた。こんなに走り回って、まだ一つも受講できないとは思わなかった。
どうしていいかわからず、突っ立っていると奥でデジタル音と同時に女性の声がした。
ピンボーン
「リカーク!」
僕は他にも人がいた事に少し驚いて振り向くと、ドタドタとやってくる音がして、短髪の女子生徒が顔をのぞかせた。
「結構行けたよ今のは!…って…誰?」
「お前、まだいたのか」
「えっと…あの…ここ、魔導トレード科ですよね?」
「そうだけど、さっき言ったよな。シモン教授はいなくなったって。それを聞いてみんな帰ったぞ。悪いことは言わない。ここはやめとけ」
「じゃ教授の代理の方とかは…」
僕は1つでも、受講の実績が欲しかったのだ。何とか教授に話だけでも聞きたい。
女子生徒が、目の前の男子生徒を指さしていた。
「これ。この人が代理人のニッキー」
「え?」
教授の代わりを生徒が?どういうことだろうか?
「ニッキー、いいじゃんやらせてみても」
「だめだ」
ニッキーと呼ばれた男は椅子から立ち上がると、シンクに歩いていってコーヒーをいれ始めた。
「ねぇあんた、なんでここに来たの?」
僕に向き直った女子生徒が、ぶっきらぼうに聞いてきた。僕はこの学校の志願理由を聞かれたものと思った。
「稼げる大人になりたいからです」
スプーンを回していた手を止めて、ニッキーが振り向いた。
「何んだと?」
「ほらー」
短髪女子がにやりと笑いながら言った。
「お前、魔導トレードを知ってるのか?」
「?」
何がなんだか分からずに、僕はポカンとするほかなかった。
テーブルの上は大量の紙が散乱していた。紙には何やらグラフのような、表のようなものがたくさん印刷してあった。
そのテーブルを挟んで、僕はニッキーさんの話を聞いている。
「いいか。この魔導トレード科は、他の教科とは全く違う。下手したらマジで死ぬ」
「は?」
「ビビらせすぎだよー」
「イルダ!シモン教授が飛んた理由、わかってんのか?」
「そうだけど」
「だが、稼げるというのも事実だ。だから本気で稼ぎたいというなら…止めない」
ニッキーは真面目な顔で続けた。
「ここでは全てが実戦で実弾だから、被弾するとリアルに喰らう。当然出血もするし、下手したら死ぬ。それはこれが現実だからだ」
戦争でもしているのだろうか?
僕の脳はニッキーの話が理解できずにいたので、アホな顔をしていたのだろう。
堪りかねたイルダさんが割って入った。
「あんたの説明じゃ何もわっかんないよ。あたしが簡潔に説明すっか?」
イルダさんが椅子にドカッと座って言った。
「で、あんたまだ時間あんの?」
…この時僕が断って次の科へ行っていたら、その後の人生は全然違うものになっていただろう。
だが、僕はこう言ったんだ。
「はい」
0
あなたにおすすめの小説
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる