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5.魔導
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「あのね」
青いモニターが反射して、真面目な顔をしたイルダ先輩の顔が半分青い。
「『魔導』って、他所の世界とつながる技術じゃん。あたしらが繋げてんのが、魔獣戦争の魔導」
そんでと続ける。
「その魔導戦争の活用方法として確立されたのが、魔導トレード。どう、簡潔でしょ」
イルダさんは「端折りすぎたかな?あはは」と笑っている。
一気に空気が抜けたように、ふんにゃりしたイルダさんがお茶を飲む。
ぶっ飛んでいる。
二ッキーさんがつぶやくように言った。
「戦争だとか、そんなことはどうでもいい。問題はどうやって金を稼ぐかということだ」
イルダさんが補足する。
「うん。核心はね、こちらのお金で魔獣を売ったり買ったりできることね」
「そうだ」
「…まだ、ピンときてないみたいだにゃ」
チラッと僕を見てイルダさんが真顔で言う。
「魔獣を安く買って、強く売ったらどうなると思う?」
「…利益が出ます」
「それをトレードっていうの」
おぼろげだが、頭の中のモヤが晴れ「魔導トレード」の輪郭が見えた気がした。
二ッキーさんが立ち上がった。
「イルダ、見せてやれ。魔導トレードを」
「え?、あたし?」
しょうがないなあといいながら、ノリノリでイルダさんは自分の席についた。
くちびるを舐めながら、イルダさんが魔導コンピュータを操作する。
「オープン!」
振動と同時に、目の前の大きなモニターが光り始める。
眠りから目覚めた黒い画面には、沢山のカラフルなチャートが浮かび上がる。赤と緑の棒のような図形(ローソク足チャート)は、まるで生き物のように上へ下へピクピク動いている。赤いラインは、ローソク足を追いかけるようについてくる。右上には赤と緑の四角形がたくさん並び、なかの数字が目まぐるしく動いている。
腕組みした先輩が、短く指示を出す。
「イルダ、蜜蜂獣甲だ」
「オッケ」
イルダさんが素早く操作する。
するとモニターに「蜜蜂獣甲」のチャートが大きく表示され、赤色の小さなローソク足がピクピクと上がり始めていた。
ニッキーさんが画面を見据えたまま、説明をする。
「見ろ。この赤と緑のローソク足チャートが魔獣の力であり魔獣の今の価値なんだが、面白いことに俺たちはお金でこいつらを売り買いできる」
魔獣というから、モンスターを想像していた僕は混乱した。そこに魔獣の形はなかった。だがチャートをじっくり見ていると、上がったり下がったりと、それは確かに生き物そのものだった。
「エントリー!」
ピンポーン
ローソク足が上に伸びて、赤いラインを抜けたところで、イルダ先輩が叫んだ。
「行けっ」
イルダさんが何か操作すると、電子音が鳴った。そしてしばらくすると、ローソク足は勢いよく上昇していく。
「見てみろあれを」
二ッキーさんが指さすところに数字が表示されているのだが、その数字がものすごい勢いで増えて行く。
2000、3000、3200、3400、3500、3800、4200…
「イグジーーッ!」
ピンポーン
イルダさんの目が血走っていた。
「っしゃ!」
「お前、わかったか?今ので、およそ4500エネくらいの利益が出た」
「え?いまのが4500エネ!1分も経ってないのに」
僕の頭の中で、思考がスパークする。4500エネあったら豪華な夕食が食べられる!4500エネあったら、本が3冊は買える!
「4500エネあったら…パプルの修理に…」
思わず声に出てしまった。
「そういうものだ」
二ッキーさんはニコリともせず、真顔で僕に聞いた。
「お前、名前は?」
「アレイシです」
「俺は3年の二ッキー、そしてあいつは2年のイルダ。おまえを正式に魔導トレード科に受け入れてやろう」
二ッキー先輩は腕組みしたままそう言った。
成り行きとはいえ、選択科目は決まってしまった。何やら稼げそうだし面白そう。
僕はポケットから出したプリントを、『お願いします』と二ッキー先輩に渡した。
僕はさっき見たチャートの、神秘的な動きに魅入られていた。
もう一度良く見たい。
「モニタ前のに座ってもいいですか?」
「いいが、今日は何も触るなよ」
僕は、イルダ先輩の席に座らせてもらった。目の前に大きなモニターがあって、そこにカラフルなチャートが表示されていて、目を奪われる。
「凄い」
「これが魔導コンピューターでね、こうしてチャンネルを合わせると……」
ヴゥゥム!
振動とともに目の前が暗くなり、耳鳴りがした。視界がぼやける中で、遠くから人の声が聞こえたような気がした。
「…更新プログラムがあります。…ダウ…ロード開始します…」
「おい、アレイシ!しっかりしろ!」
「…アシスタントプログラムのダウンロードを開始します…80% 90% . 100% 完了しました。…続いてSMTSのダウンロードを開始…」
遠くの声を聞きながら、僕は意識を失っていった。
僕は夢を見た。
夢の中で巨大な町を見た。町の中に町があった。その中に、人が何千人も何万人も暮していた。数百、数千、数万の魔導車が走り回っていた。
巨大なモニターに数千の魔獣が表示され、売買が行われていた。
圧倒的な技術力…圧倒的な資金量…圧倒的な軍事力…小さいものは踏み潰される…数の暴力…数の正義……
僕は恐ろしくて震えていた。
青いモニターが反射して、真面目な顔をしたイルダ先輩の顔が半分青い。
「『魔導』って、他所の世界とつながる技術じゃん。あたしらが繋げてんのが、魔獣戦争の魔導」
そんでと続ける。
「その魔導戦争の活用方法として確立されたのが、魔導トレード。どう、簡潔でしょ」
イルダさんは「端折りすぎたかな?あはは」と笑っている。
一気に空気が抜けたように、ふんにゃりしたイルダさんがお茶を飲む。
ぶっ飛んでいる。
二ッキーさんがつぶやくように言った。
「戦争だとか、そんなことはどうでもいい。問題はどうやって金を稼ぐかということだ」
イルダさんが補足する。
「うん。核心はね、こちらのお金で魔獣を売ったり買ったりできることね」
「そうだ」
「…まだ、ピンときてないみたいだにゃ」
チラッと僕を見てイルダさんが真顔で言う。
「魔獣を安く買って、強く売ったらどうなると思う?」
「…利益が出ます」
「それをトレードっていうの」
おぼろげだが、頭の中のモヤが晴れ「魔導トレード」の輪郭が見えた気がした。
二ッキーさんが立ち上がった。
「イルダ、見せてやれ。魔導トレードを」
「え?、あたし?」
しょうがないなあといいながら、ノリノリでイルダさんは自分の席についた。
くちびるを舐めながら、イルダさんが魔導コンピュータを操作する。
「オープン!」
振動と同時に、目の前の大きなモニターが光り始める。
眠りから目覚めた黒い画面には、沢山のカラフルなチャートが浮かび上がる。赤と緑の棒のような図形(ローソク足チャート)は、まるで生き物のように上へ下へピクピク動いている。赤いラインは、ローソク足を追いかけるようについてくる。右上には赤と緑の四角形がたくさん並び、なかの数字が目まぐるしく動いている。
腕組みした先輩が、短く指示を出す。
「イルダ、蜜蜂獣甲だ」
「オッケ」
イルダさんが素早く操作する。
するとモニターに「蜜蜂獣甲」のチャートが大きく表示され、赤色の小さなローソク足がピクピクと上がり始めていた。
ニッキーさんが画面を見据えたまま、説明をする。
「見ろ。この赤と緑のローソク足チャートが魔獣の力であり魔獣の今の価値なんだが、面白いことに俺たちはお金でこいつらを売り買いできる」
魔獣というから、モンスターを想像していた僕は混乱した。そこに魔獣の形はなかった。だがチャートをじっくり見ていると、上がったり下がったりと、それは確かに生き物そのものだった。
「エントリー!」
ピンポーン
ローソク足が上に伸びて、赤いラインを抜けたところで、イルダ先輩が叫んだ。
「行けっ」
イルダさんが何か操作すると、電子音が鳴った。そしてしばらくすると、ローソク足は勢いよく上昇していく。
「見てみろあれを」
二ッキーさんが指さすところに数字が表示されているのだが、その数字がものすごい勢いで増えて行く。
2000、3000、3200、3400、3500、3800、4200…
「イグジーーッ!」
ピンポーン
イルダさんの目が血走っていた。
「っしゃ!」
「お前、わかったか?今ので、およそ4500エネくらいの利益が出た」
「え?いまのが4500エネ!1分も経ってないのに」
僕の頭の中で、思考がスパークする。4500エネあったら豪華な夕食が食べられる!4500エネあったら、本が3冊は買える!
「4500エネあったら…パプルの修理に…」
思わず声に出てしまった。
「そういうものだ」
二ッキーさんはニコリともせず、真顔で僕に聞いた。
「お前、名前は?」
「アレイシです」
「俺は3年の二ッキー、そしてあいつは2年のイルダ。おまえを正式に魔導トレード科に受け入れてやろう」
二ッキー先輩は腕組みしたままそう言った。
成り行きとはいえ、選択科目は決まってしまった。何やら稼げそうだし面白そう。
僕はポケットから出したプリントを、『お願いします』と二ッキー先輩に渡した。
僕はさっき見たチャートの、神秘的な動きに魅入られていた。
もう一度良く見たい。
「モニタ前のに座ってもいいですか?」
「いいが、今日は何も触るなよ」
僕は、イルダ先輩の席に座らせてもらった。目の前に大きなモニターがあって、そこにカラフルなチャートが表示されていて、目を奪われる。
「凄い」
「これが魔導コンピューターでね、こうしてチャンネルを合わせると……」
ヴゥゥム!
振動とともに目の前が暗くなり、耳鳴りがした。視界がぼやける中で、遠くから人の声が聞こえたような気がした。
「…更新プログラムがあります。…ダウ…ロード開始します…」
「おい、アレイシ!しっかりしろ!」
「…アシスタントプログラムのダウンロードを開始します…80% 90% . 100% 完了しました。…続いてSMTSのダウンロードを開始…」
遠くの声を聞きながら、僕は意識を失っていった。
僕は夢を見た。
夢の中で巨大な町を見た。町の中に町があった。その中に、人が何千人も何万人も暮していた。数百、数千、数万の魔導車が走り回っていた。
巨大なモニターに数千の魔獣が表示され、売買が行われていた。
圧倒的な技術力…圧倒的な資金量…圧倒的な軍事力…小さいものは踏み潰される…数の暴力…数の正義……
僕は恐ろしくて震えていた。
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