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20.最終試験
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いつの間にか、イペーの黄色い花は終わり、代わってジャカランダの花が咲き誇り、街中を紫色に染めている。
4月が、早足で過ぎ去ろうとしていた。
僕達「魔導トレード科」のトレード成績は悪くなかったが、初回ほどの大きな好成績は続かなかった。2日程マイナスを記録した日があったので、計画と実績はジワジワと近づいてきていた。
初日にあった9万エネのマージンは、1万になっていた。
早く僕が稼げるようになって、先輩達の役に立たないといけない。
退屈な午前の授業の後、僕達はいつものように急いで昼食を食べていたが、頭の中は学校との約束の500万エネとトレードの事で一杯だった。
「それが本当に面白いんだよ。まだ途中なんだけどね」
僕はジョエルの声で現実に戻り、目の前の友人をた。
ジョエルは、ベストセラーの
『ラストウィザーズ』について話しているのだ。この本は今非常に人気で、なかなか手に入らないことで有名だ。
「よく手に入ったね」
「えへへ。ずいぶん前から予約してたんだ。なんか、今は予約も停止になってるみたいだけど」
「へえ、でもジョエルが読書家だったなんて、なんか君を見る目が変わりそうだな」
「でしょー」
そう言いながら時計を見たジョエルは、『もう行かないと』と言った。
魔導医療科の大事な会議があるのだそうだ。
僕も僕も急いでパンを飲み込んだ。
『魔導医療科』では、大きな拍手と歓声が上がっていた。
「おめでとうございます!ノルマ先輩」
みんなに囲まれているのは、ノルマだった。
「ありがとう」
ジョエルとサンドラも、一緒に拍手をしている。
フェルナンド教授が真ん中に出てくると、手を挙げて言った。
「みんな聞いてくれ。ノルマの研究は、ついに最終試験をパスしたわけだが、これからは臨床試験となる。実用化まであと一息だ。みんなも全力でサポートしてくれよ。ノルマ、みんなに一言言ってやってくれ」
わっと歓声が上がったが、ノルマに注目が集まると教室はシンとなった。
サンドラはまるで天使でも見るように、両手を胸の前で組みノルマを見詰めていた。
「魔導細胞の最終試験が、全てクリアできたことは幸いだったと思う。だが技術というものは、完成して患者のもとに届かなければ意味がない。この技術を待つ人たちに一刻も早く届けられるよう、私は精一杯頑張っていこうと思う。これからもよろしく頼む。ありがとう」
ノルマが話し終えると、一斉に拍手が起こった。そして、それはしばらく鳴り止まなかった。
ジョエルは、祝福を受けるノルマを見ながら、彼女が近所のお姉ちゃんから、手の届かないずいぶん遠いところに行ってしまったような気がしていた。
そんなジョエルの思考を断ち切るように、ドアをノックする音がして、数人の男女が入ってきた。
「いいかね?」
口を開いたのは、その中心にいた理事長だった。
「フェルナンド教授から報告があった、魔導細胞の開発責任者は誰かな」
「私です」
ノルマが名乗り出ると、理事長は満面の笑みを浮かべてノルマに駆け寄った。
「おお、君か。おめでとう!素晴らしい成果じゃないか」
大げさに握手する理事長とメガネ女子を、ついてきていた数人のカメラが撮りまくる。理事長は写真を撮り終えると手を離し、フェルナンド教授に向かって言った。
「これで来年からは、入学志願者が増えるのは間違いない。頼んだよ」
「承知しております」
「…で、今後の予定はどんなだ?」
「準備が整い次第、臨床試験に入っていきます。結果は3年以内には、はっきりするでしょう」
「…3年か、…まあいい」
理事長はまた笑顔になって周りを見渡しながら言った。
「みんなもノルマを見習って、画期的な技術開発、よろしく頼むよ」
それだけいうと、さっさと帰って行く理事長を見送るノルマが、小さく息を吐いた。
ジョエルはノルマが浮かない顔をしているのに気づいてはいたが、それは彼女が疲れているからだろうと思った。
4月が、早足で過ぎ去ろうとしていた。
僕達「魔導トレード科」のトレード成績は悪くなかったが、初回ほどの大きな好成績は続かなかった。2日程マイナスを記録した日があったので、計画と実績はジワジワと近づいてきていた。
初日にあった9万エネのマージンは、1万になっていた。
早く僕が稼げるようになって、先輩達の役に立たないといけない。
退屈な午前の授業の後、僕達はいつものように急いで昼食を食べていたが、頭の中は学校との約束の500万エネとトレードの事で一杯だった。
「それが本当に面白いんだよ。まだ途中なんだけどね」
僕はジョエルの声で現実に戻り、目の前の友人をた。
ジョエルは、ベストセラーの
『ラストウィザーズ』について話しているのだ。この本は今非常に人気で、なかなか手に入らないことで有名だ。
「よく手に入ったね」
「えへへ。ずいぶん前から予約してたんだ。なんか、今は予約も停止になってるみたいだけど」
「へえ、でもジョエルが読書家だったなんて、なんか君を見る目が変わりそうだな」
「でしょー」
そう言いながら時計を見たジョエルは、『もう行かないと』と言った。
魔導医療科の大事な会議があるのだそうだ。
僕も僕も急いでパンを飲み込んだ。
『魔導医療科』では、大きな拍手と歓声が上がっていた。
「おめでとうございます!ノルマ先輩」
みんなに囲まれているのは、ノルマだった。
「ありがとう」
ジョエルとサンドラも、一緒に拍手をしている。
フェルナンド教授が真ん中に出てくると、手を挙げて言った。
「みんな聞いてくれ。ノルマの研究は、ついに最終試験をパスしたわけだが、これからは臨床試験となる。実用化まであと一息だ。みんなも全力でサポートしてくれよ。ノルマ、みんなに一言言ってやってくれ」
わっと歓声が上がったが、ノルマに注目が集まると教室はシンとなった。
サンドラはまるで天使でも見るように、両手を胸の前で組みノルマを見詰めていた。
「魔導細胞の最終試験が、全てクリアできたことは幸いだったと思う。だが技術というものは、完成して患者のもとに届かなければ意味がない。この技術を待つ人たちに一刻も早く届けられるよう、私は精一杯頑張っていこうと思う。これからもよろしく頼む。ありがとう」
ノルマが話し終えると、一斉に拍手が起こった。そして、それはしばらく鳴り止まなかった。
ジョエルは、祝福を受けるノルマを見ながら、彼女が近所のお姉ちゃんから、手の届かないずいぶん遠いところに行ってしまったような気がしていた。
そんなジョエルの思考を断ち切るように、ドアをノックする音がして、数人の男女が入ってきた。
「いいかね?」
口を開いたのは、その中心にいた理事長だった。
「フェルナンド教授から報告があった、魔導細胞の開発責任者は誰かな」
「私です」
ノルマが名乗り出ると、理事長は満面の笑みを浮かべてノルマに駆け寄った。
「おお、君か。おめでとう!素晴らしい成果じゃないか」
大げさに握手する理事長とメガネ女子を、ついてきていた数人のカメラが撮りまくる。理事長は写真を撮り終えると手を離し、フェルナンド教授に向かって言った。
「これで来年からは、入学志願者が増えるのは間違いない。頼んだよ」
「承知しております」
「…で、今後の予定はどんなだ?」
「準備が整い次第、臨床試験に入っていきます。結果は3年以内には、はっきりするでしょう」
「…3年か、…まあいい」
理事長はまた笑顔になって周りを見渡しながら言った。
「みんなもノルマを見習って、画期的な技術開発、よろしく頼むよ」
それだけいうと、さっさと帰って行く理事長を見送るノルマが、小さく息を吐いた。
ジョエルはノルマが浮かない顔をしているのに気づいてはいたが、それは彼女が疲れているからだろうと思った。
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