魔導デイトレード戦記

高根 甲信

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22.やらかし

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サンドラの問いは、僕の心に太い針のように刺さったまま残ってしまった。
そして僕は、あの日以来調子を落とし、すっかりダメダメになってしまった。

「だめだ、また損切り…」

これで昨日から4回連続で損切りだった。
思った方向に行ったと思ったら急に逆に動いてみたり、順調に利益が出ると思った途端ストンと下げて損切りになったり、全くいいところがなかった。

「そんな時もある」

ニッキー先輩がそう言ってくれるのだが、僕の心は落ち着かない。何とかしなくてはという気持ちが空回りして焦りを呼ぶ。
すっかりトレードに自信がなくなってきた僕は、やることなすことがチグハグだった。
今は集中しても、没入感は得られない。

5月26日の月曜日。
1回目のトレードは悪くなかった。しかし利幅が薄く、3000エネくらいしか取れなかった。

「アレイシ、今は無理するときじゃないよ」

パプルは冷静さを求めるが、僕には伝わっていなかった。

『レベルウエィ』は数日前に大きく上昇していて、攻撃のやりとりの数(出来高)が増えていたので、数日僕はこの魔獣を監視していた。
大きな攻撃が連続して歩み値に記録されたのを見て、僕は慌てて買った。数秒後、価格は相手の攻撃が連続して叩き込まれ、一気に急降下していった。 
僕が買った値段は1379だったが一気に1360になっていた。

「損切りはしないの?」

冷静にパプルが聞く。
シモン教授の掟では、損切りは1%と決まっている。つまり、1379エネで買ったら最低でも1365エネでは絶対に売らなくてはならない。しかし、僕は1360でもまだ売らずに持っていたのだ。

「もう少しだけ待つ」

「それって、ルール違反じゃないの?」

損切りした後に上昇していく事が多いから、これまで悔しい思いをしているのだ。
今回だってそうに違いない。

「アレイシ?」

ほら、戻ってくる…
1360.1361.1365.1366.1365…

「…あ!」

1359.1357.1355.1350…1345.1344
顎が抜けたような垂直落下…
しかも、まだ止まりそうにない下落に、僕は慌てて損切りした僕は、青ざめていた。
-14800エネ。
最悪だ! やってしまった。僕は、一瞬で大きなマイナスを作っていた。
それから何をしたのか、よく覚えていない。
気づけば10回以上のトレードをして、合計損失は48500エネになっていた。

「アレイシ?アレイシ?」

「おい!何をやっている!」

「…!?」

パプルとニッキー先輩の声が聞こえた時は、すでに遅かった。
僕は、ボロボロになっていた。

「アレイシ、お前は『鉄の掟』を破ったな」

「どうしたの?」

ニッキー先輩の声を聞いて、イルダ先輩もやってきていた。

「最初に言ったな。掟を破った者は、2日間この教室に入れないと。覚えているか?」

「…はい」

「損益については問わないが、トレード回数をオーバーし、さらに損切りポイントを下に動かした。これは明確な掟破りだ」

「らしくないじゃん…」

「……」

「よって、明日、明後日はこの教室に来ることを禁止する。分かったか?」

「……分かりました」

静かにパプルが、アレイシをみつめていた。
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