魔導デイトレード戦記

高根 甲信

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24.謹慎

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静かな教室に、チョークの音がやけに大きく聞こえる。
クラウジーネ先生の近代歴史の授業だ。
初代首相のロバーツ氏の施策を、先生が話している。
クラスメートはそれぞれ忙しくノートをとっていたが、僕は途中で書くのをやめてしまっていた。

なぜ、あんなことをしたんだろう…
ルールブレイク。
1回だけのはずが4回、5回となって、正確な判断ができなくなっていた。
自分は冷静な人間だと思っていたのに、今回の事で、自分が信じられなくなった…
しかも大きな損を出して、先輩達の足を引っ張ったことも悔やまれる。
壁のグラフでは、前日まで実績は計画を上回っていたけれど、僕の損がどれだけ影響するんだろうか…。
いずれにしろ、2日間は謹慎しなくてはいけない。
気が滅入る。
そんな事を考えているうちに、教室のざわめきが聞こえた。

「ルシアノ、お前の家の先祖だろ?」

「まあ、な」

「えー!本当ー?」

「マジでぇ!?」

僕は声の方を見た。すると、クラスメートは全員、ルシアノの方を見ていた。
黒板に、歴代首相の5人の名が書かれてあり、どうやらそのなかの1人がルシアノのご先祖だったらしい。
クラウジーネ先生が『静かに』といったが、ざわめきはなかなか収まらなかった。

この国の歴代首相は政界引退後、すべからず財閥を作り、莫大な資産を手に入れている。
ルシアノの家も金持ちなんだなと、僕はぼんやり思った。
目を閉じると、クラスの中は羨望と嫉妬の入り混じった空気が充満しているのが分かった。粘り気のある気持ち悪さが肌にまとわりつくようで、僕は身震いして「羨望」と「嫉妬」から逃れるために外へ意識を飛ばした。

外は、夏のような日差しが照りつける陽気だった。
校舎の脇の白いオルラヤの花の群れが、一斉に風に揺れる。
肌を焼く日差しとさわやかな風を感じて、僕はホッとした。
そして同時に、ちっぽけな自分を感じていた。

午後。
僕は、魔導トレード科には行けなかったので図書館へ行った。そこでもやはり僕は、シモン教授のノートを読み返していた。
目に止まったのはやはり『鉄の掟』だった。

鉄の掟。
①1日のトレード回数は5回まで
②損切りは資金の1%以内
③1日の損切りが2%を超えたらその日は終了
④1%の損切りなら、利確は2%以上の時だけ行って良し
⑤これらを破ったら、2日間仲間はずれにする

なんてことだ。全て破っている…
じわじわと恥ずかしさが込み上げてきて、胸がジンジンする。

「よ」

急に肩を叩かれ振り向くと、セルジオさんが5~6冊の本を抱えて立っていた。

「なんでここにいるんですか?

僕が小さい声で言うと、セルジオさんも小声で答えた。

「見りゃわかるだろ…本借りに来てんだ」

そう言うと受付に貸し出しの受付を済まして、さっさと寮へ向かって歩き出した。
僕も慌ててノートをしまうと、セルジオさんについて図書館を出たのだった。
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