反抗機 モノノフ

ウイルス

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乱される平和

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王政国家ガルス帝国が国を築き、1年が経過した。各地の残党たちを、次々に制圧していくあまりの戦力差に、各国の抵抗も次第に弱まっていった。そんな中、富士の麓にある方舟は、とても平和で退屈な日々を送っていたのである。
「各班の様子はどうだ?多少のメンタルケアが、必要そうな者も出てきているように思えるが?」
青井中佐は、それぞれの班が提出した健康管理表と、勤怠状態管理表に目を通しながら、各分隊長に話を聞いていた。
「第1番隊から第10番隊までの分隊長を勤めています。見島一等軍曹であります。物資の運搬や畑作業は問題なく活動できていますが、戦闘訓練の調子はあまり良いものとは言えません。理由を求める者に、我々もし軍が戦えなくなったとき、君達が戦うようにと説明しているのですが、そんな日は来ないと思っているそうです。しかし中には、目まぐるしい成果を上げている者もいます。まず西宮遥という女性は、20歳という年齢で、西宮流という剣道を習得しており、竹刀を使わせれば並の隊員では勝てません。」
そう話している途中、青井中佐は興味が出たのか、話を遮って問いかけたのだ。
「並の兵士では勝てないのか!では君も負けるのかね?」
嬉しそうに聞いてくる青井中佐を尻目に見島一等軍曹は話を続けた
「次に東陽平です。18歳らしい若々しい動きが特徴的で瞬発性、俊敏性がかなりあります。過去に拳法をしていたらしく勢いもありますね。怠け癖と、人をバカにしている節がありますが、教育のしがいがあるので問題はないです。」
また青井中佐は興味を示しながら訪ねた。
「本当か!ところで君はその子に勝てるのかい?」
再度無視しして見島一等軍曹は話を続けた
「最後に彼ですね。真田勝頼、年齢は18歳ですが、彼は対人戦闘では大した記録は出していないのですが、自分は彼だけは勝てないと思いますね。」
青井中佐は、見島一等軍曹が勝てないと発言したことに驚いたようで、手元の真田勝頼についての書類に目を通しながら話し始めた
「君が勝てないと言う相手がいるんだね、真田くんの戦績は10戦中に…2敗8引き分け?どうゆうことだ?」
青井中佐は目を点にしながら、見島一等軍曹に説明を求めた
「はい、彼は訓練であっても、無闇に人に暴力を振るうのは好まないと言って聞かなくてですね…相手が何をしようと、何を使おうと、ひたすら攻撃を受けるだけなんです。引き分けは全て時間いっぱい耐えきった時でして、残りの2敗は西宮に愚弄するなと怒られながら竹刀で打たれて気絶、その次の戦闘訓練に出れず不戦敗といった形です。」
青井中佐は、鳩に豆鉄砲を食らわせられたような顔をしていた。
「か、変わった子もいるんだね…次の活動だが、君たちに運んでほしい物がある。中身は詳しくはわからないんだが、何せ重くてね。第95番隊の研究室の前に置いていてくれてればいい。搬入口にある時黒い鉄の箱なんだが、ここを出たらすぐに始めてくれ」
先程までの少し弾んだトーンではなく、厳格な声色で命令をした。
「了解しました。失礼します。」
報告を済ませ、青井中佐の部屋を出ると、見島一等軍曹は、近くにあった第7番隊の部屋に向かうことにした。コンコンと第7番隊の部屋のドアを叩くと、中から「どうぞ」という声が聞こえた。
「失礼する。これから物資の運搬をする。島岡は第7番隊以外の、第1番隊から第10番隊までに搬入口に集まるように指示してくれ、それ以外はこのまま私についてこい。」
それを聞いた島岡伍長は見島一等軍曹に、一礼し部屋を去っていく。
「えぇ~休憩時間すよー?あとでいいじゃないですか~」
文句を垂れたのは怠け癖のある東だった。それに対して、見島一等軍曹は少し厳し目に発言した
「どうやら元気なようだな、全員駆け足用意!遅れたものは罰則があると思え!」
全員が少し嫌そうな顔をした後で東を睨みつけた
「わ、わりぃな皆…頑張ろうぜ!」
見島一等軍曹を先頭に、第7番隊は一列に並びながら駆け足で部屋を出ていく。搬入口があるのは地下1層目となっている。
「どうだ?この施設には慣れたか?」
駆け足とは言っているが実際は走っていると言う方が正しい、そんな中、質問されても答えられる余裕がある者は、ほとんどいない。
「そうっすね!1層目と2層目と3層目を行き来するばかりですがね!ほとんどの居住スペースが2層で物資搬入口や医療、娯楽が1層、3層が農林ってなんでなんすか?いちいち物資を3層までの持ってくの面倒ですよ!無駄に道幅は広いですし!トラックが通るにしても天井高くないっすか?」
広い道幅はトラック2台が通っても余裕があるほどの幅、天井は10メートルほど上にある。東は叫びながら答える、それに対して見島は答える
「地熱の問題らしい!道幅の問題は緊急時に多くの人間が一斉に出ても通れるようにだ!今回行くのは4層で研究室と発電施設がある、基本的に行くことは無いが一応覚えておけ、ついでに2層は居住スペースだけでなく、司令室とかダメージコントロールとかあるからな!」
見島の返答に対し、東はあまり興味なさそうに返事をした
「うぃーす」
東の気の抜けた返事に、真田はこいつは何故興味も無いのに理由を聞いたのだろう?と疑問で仕方なかった
「無駄口を叩いてる間についたぞ、黒い鉄の箱が今回の物資だ、結構な量があるので、運搬用のトラックを用意して積み込みを行う。中山二等兵はトラックを頼んだ、我々は準備に取り掛かる。」
喋り終わったタイミングで、放送が流れた
「一等軍曹以上の隊員は至急、2層の青井中佐の部屋に招集、繰り返す、一等軍曹以上の隊員は至急、2層の青井中佐の部屋に招集」
少し焦った声にも聞こえる女性の声が施設に広がる。
「…この場は後で来るだろう島岡伍長に任せる、東はサボらないように!真田は東の事を見ながら作業しておいてくれ、真田が一番力持ちだからな、頼んだぞ」
放送から少しの間をおいて、2層に向かって走っていく、すれ違いになるタイミングで島岡伍長に出会い指示している姿が見えた。その後真田達はトラックに荷物を積み込み、各隊員達はトラックに乗って、4層に向かった
「失礼します!見島一等軍曹です!入室します。」
見島は青井中佐の部屋に入った
「よく来た見島、これで全員だな、話を始める。」
部屋に入った一等軍曹が10名、少佐が3名、中佐1名、大佐1名と少将1名がいた。この施設に居る指揮官達だ、話し始めたのは青井中佐だった。ほとんどの隊員が立ってる中、真ん中のテーブルに座っている金髪の女性がいた、彼女は汚れていて少し痩せていた
「今回、私の部屋に集まってもらったのは、非隊員の混乱を避けるためだ。まず彼女はアメリカ人で、戦争の生き残りらしい、彼女から聞いた話では、やはり抵抗虚しく全ての国が壊滅、ガルス帝国が統一を始め、残党狩りに移っているらしい。」
重い空気が流れた、その時彼女が話し始めた
「日本の皆さん、私はアメリヤ・ジャースです。戦いは無意味デス、降伏しまセンか?アメリカも抵抗しましたが勝てませんでシタ。私もたまたま、ココに逃げてきました!」
彼女が話すと周りも、そうしよう、降伏しようと言い出したが、見島は異を唱えた
「すいません、少しいいですか?まずは貴女はどうやってここへ?たまたま来れる場所ではありません、それにアメリカの敗北が予想より早かった、それと貴女日本語上手すぎますよ?」
その発言に頷く青井中佐、少しガッカリそうにするアメリヤ。
「…はぁ。日本人は単純だと、聞いていたのですが、中には想像よりも賢い奴もいるんですね。リーパー!目当ての物は地下5層にあります!搬入口用のエレベーターから突入してください!」
掛け声とともに爆音が鳴り響く、赤いランプが点滅すると同時に、アメリヤは所持していた発煙手榴弾を起爆する、部屋の中は煙に満たされ何も見えなくなる。
「くっそ!やられた!怪我をさせてもいい!部屋から出させるな!」
その場にいた隊員が取り押さえようとしたが、アメリヤはするりと掻い潜り抜けていった。
「goodbye!」
そう言い残しアメリヤは部屋から颯爽と抜けていった。
「「待て!」」
そのアメリヤに反応し、部屋から飛び出したのは青井中佐と見島一等軍曹だけだった。その瞬間、先程まで居た部屋は爆発した。黒煙を上げながら燃える部屋の中では、悲鳴と燃える音がする。
「嘘でしょ…この施設にいる隊員の指揮官達が…」
青井中佐は絶句する、爆音を聞き駆けつけた隊員達も、その現場を見て絶句する
「今すぐに現状を確認しなければならない!私はダメージコントロールに向かう。今来た隊員達は、この部屋の救助活動!青井中佐!しっかりしてください!現状の最高司令官はあなたです!司令室に向かって指示をしてください!」
見島の言葉を聞き青井はハッとする
「…そうだな、見島一等軍曹!ダメージコントロールから司令室に随時状況を報告するように指示を、私は司令室から各隊員に指示を促す。」
その発言を待っていたかのように見島は指示を聞いた後、敬礼し走り出した。それを見たあと青井中佐も司令室に走り出した。
「ダメージコントロール!被害報告!」
見島はダメージコントロールの報告を受ける
「はい!被害報告します!搬入口を爆破し、謎の二足型兵器が3機侵入してきました!搬入用エレベーターを使い4層まで降下中です!途中で医療機関に火を着けて行きました!その他にも道中の兵士、民間人を関係なく射殺!死者の数は不明です!」
想像以上の被害に頭を抱えるが、まずはその被害を司令室に報告した。返答したのは司令室にいた青井中佐だ
「こちら了解した。見島は万が一を考えて、その場に待機していてくれ。各隊員に継ぐ!敵対勢力に対しての戦闘を許可する!非隊員は自分の身は自分で守るように!隊員は周りの非隊員を守ってやれ!敵は4層の物資を狙って搬入用のエレベーターから降下中だ!4層の隊員は今すぐに迎撃体制!」

施設内に響く戦闘開始の合図、隊員達はトラックから降りて、慌てながらも隊員は近くの壁にカードキーを当て始める
「4層の物資?これじゃん!やばいやばいよ!逃げようよ!カードキーを壁に当てても一緒だよ!」
東は逃げるように促す。物資輸送中の第1番隊から第10番隊の非隊員達は混乱している。しかし隊員達が触れた壁が開き、様々な重火器が姿を表す
「非隊員はこのまま物資を奥に運びきれ!上に逃げるよりは安全だろう!真田勝頼!そちらの指揮は君に頼んだ、我々はここで防衛戦を行う!死んでも守り切るぞ!」
隊員達が素早く準備を整え、あっという間にバリケードを作った。真田は急な状況にも関わらず落ち着いて判断をした。
「わかりました。皆さん、物資を奥の研究室まで運びきります!トラックが研究室の前についたら、急いで物資を研究室の中に!」
非隊員達はパニックになりながらも、トラックを走らせた。
「こちら第7番隊、伍長の島岡です!司令室!応答願います!」
内線で司令室に連絡が入る
「こちら司令室、どうした?別れの挨拶なら聞かないぞ」
青井中佐は答えた
「馬鹿な事を言わないでください。祝勝会の準備をお願いしますよ…我々より、後ろの隔壁を降ろして下さい。」
青井中佐は怒るように応答した
「そんなことしたら、君達が退避できないだろ!」
島岡伍長は落ち着いて答えた
「1秒でも長く時間を稼ぐ必要がありますからね。何も心配しないで下さい。その隔壁が破壊されることはありませんよ」
青井中佐は少しの沈黙を置いて答えた
「…隔壁を降ろせ、武運を!」
島岡は元気に答えた
「了解!…来やがれ、日本の底力舐めんなよ!」
搬入用のエレベーターのドアが開き、悪魔が姿を表した、8メートルほどのサイズで、単眼でネオンライトのラインの入った白いスマートな人型兵器は、返り血を浴びて真っ赤に染まっていた。
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