存在感と取り柄のない私のことを必要ないと思っている人は、母だけではないはずです。でも、兄たちに大事にされているのに気づきませんでした

珠宮さくら

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兄から、衝撃的なことを聞いて、しばらく更に熱が上がって、ベッドから起き上がるのもしばらく辛かった。

そんな時に使用人が、額で温くなったタオルを替えてくれながら話しかけてくれた。


「お姉様から……?」
「お見舞いのカードのようですよ」
「……」


私が良くなったら知らせると言っていたはずなのに、具合が悪いのを知らせたのだろうか?

使用人が、あれこれ用事があるかのように私の側にいてくれた。どうやら、熱が再び上がることになったせいで、家族の面会を控えるように医者が言うらしく、こっそりとそれを届けてくれた。

診察してくれる時にそんなことを言ってはいなかったのだが、父にそう言ったようだ。

父は、早く良くなるのには、そうした方がよいそうだと言ってくれたのを最後に数日会っていない。

別に家族が見舞いに来てくれているのが、熱が下がらない原因ではないのだが、何を話していたかを伝えてられなかったことで、私が家族が見舞いに来てくれる時に気を遣い過ぎていると思われてしまったようだ。

そんなこと全くないというのに酷い話だ。

家族のことで熱があがったのではない。幼なじみのことで、腹が立って熱がぐんぐんと上がってしまっただけなのだ。姉にそんなことをしたのが許せなかったのも大きかった。

それに気づかなかったのもあったとはいえ、自分が悪いのだ。誰にあたれるというのか。具合が悪い時にそんなことをしたせいで、自分にあってしまったようなところはあったのかもしれない。

そんなことをあれこれ考えながら、姉からのカードを見た。

思っていたのと違っていた。優しすぎる姉は私のことが気になって仕方がなかったようだ。

気分転換に留学したはずなのに何と申し訳ないことをしているのか。姉は、やはり優しすぎる。自分のことでいっぱいいっぱいにならないところが、姉だ。

そんな姉が、私は心配でならなかった。今すぐにでも返信したいのだが、起き上がっているのが辛い。

ただですら、私の体温は低いのだ。この熱が続くせいで、体力をごっそり持っていかれている。

そんな時に助けがやって来るとは思わなかった。


「ルクレツィア。ジュリエッタからお見舞いのカードが来たって?」


兄がひょっこりと部屋を覗きに来た。兄は、内緒、内緒でやって来てくれていた。やることないと言っているが、きっと王太子の側近を辞めたことで、令嬢たちからあの手この手で誘われているはずだが、こうして妹のことを気にかけて早く帰って来てくれている。

……若干、それで言い逃れているのではないかと思わないでもないが、兄のことだ。私が思っているようなことで利用はしていないはずだ。


「そうなんです。知らせが来ないから、心配かけてしまったようで」
「そうか。そうだな。私が配慮にかけていた」


兄は、それを聞いて項垂れてしまった。

そんな姿を見て、キャーキャーと騒ぐ令嬢たちがいそうだ。落ち込む姿すら、絵になる。

私の言い方がまずかった。本当に余裕がなさすぎると配慮にかけてしまう。


「お兄様。私の代わりにお姉様に返信をお願いしてもいいですか? まだ、手紙を書くのは難しそうなんです。それを待っていたら、お姉様に益々心配をかけてしまいますから」
「それは、構わない。元気になったら、ルクレツィアが手紙を書くと伝えておく」
「それと私が、お姉様に謝っていたと書いてください。ちっとも良くならないのは、誰のせいでもないもの」
「それを言うなら、お前にも当てはまることだ。わかった。すぐに書いて出しておく。お前は、ゆっくり休め」
「ありがとう。お兄様」


こんな会話をしたが、面会が駄目と言って愚痴愚痴と家族に言っていたのは、医者ではなかったことを私が知ったのは、かなり後になってからだった。

母が、そんな長引く風邪に他の家族がかかったりしたら、どうするんだと言い始めたせいで、私にあれこれ言いに行くかも知れないと思って、医者が言っていると伝えたようだ。

もっとも、それを母が言っていたのを聞いても、らしいことを言っているとしか思わなかったが、その後が更に酷かった。

そもそも、この家にいさせないで、どこかに隔離でもすればいいとまで言っていたらしく、それに父が流石に我慢の限界を迎えて、母の方を追い出したらしい。

母は憤慨して実家に帰り、父にこんなことを言われて追い出されたと喚き散らして、逆に怒られてしまったようだ。


「何を言っているんだ! そもそも、母親であるお前が看病もせずに苦しんでいる子供を追い出そうなどと考えている奴だとは思わなかった」
「そうですよ。よくも、そんなことを言いに戻って来れたものね」


母の両親、つまり母方の祖父母はそんなことを言って腹を立てていた。

跡を継いでいる母の兄も、昔からどこか変な思考をしていたが、そこまでとは思わなかったとばかりに出て行ってほしいが、それより先にやることがあるとしばらくの間の滞在を許可した。

そこから、もう、そんなのと離婚した方がいいとまで言われ、父が義理の家族みんなに促されて離婚することになったのも、すぐのことだった。

義実家の面々は、父の味方をしたことで、離婚するなり母は実家を追い出されることになって、大変だったようだ。

だが、それだけでは終わらなかった。

元気になった私にあろうことか離婚になったのは、お前のせいだと母が怒鳴り散らしに来たのだ。


「え? 離婚??」
「白々しいわ。そんなことで誤魔化されないわよ。どうやって、言い含めたか知らないけど、本当に嫌な子ね」
「……」


それで、何があったのかをべらべら話す母のおかげで、全部知ることになった私の気持ちがおわかりいただけるだろうか?

病み上がりにハードなのが来たけど、あんなのを見てしまうと幼なじみと王太子を見ても、何でもないようにスルーできそうだなとそんなことを思ってしまった。

もちろん、母は私に怒鳴り散らしたのを父に知られて、二度と子供たちに会わせるために屋敷にもいれないと今まで見たことないほど、父を怒らせた。

そんな父は、弟妹たちより、やっと良くなった私のことを気にかけてくれていた。

仕事が忙しいだろうに申し訳ない。


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