幼なじみのお姉さんは、妹の浮気が許せないようですが、勘違いだとわかると私のせいになるのは、どうなのでしょう

珠宮さくら

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「ちょっと、プリシャ。何してるの?!」
「え?」


プリシャはいきなり怒鳴りつけられたことにデジャブを感じずにはいられなかった。そんな風に怒鳴りつけられることなど早々ないはずだが、声は違えど似ていると思ってしまった。


「婚約者が、留学中なのよ! それなのに他の子息と一緒にいるなんて、信じられない!」
「……」


幼なじみは修道院に行ったはずのシーラと同じようなことをしている自覚はないようだ。

周りにも、それが聞こえたのか。あの令嬢が戻って来たのかとばかりに身構えた者もいたが、この2人の令嬢たちは、周りなんて見えていなかった。

お互いに相手のことしか見えていなかった。プリシャは、久しぶりにカルニカと会話しているのに怒鳴り散らされるとは思っていなかった。

プリシャが、ラージの従兄を案内しているとそんなことを突然、言われたのだ。

彼女は、プリシャと一緒にいるのが誰か知らないようだが、だとしてもこんな風に怒鳴りつけられるところをプリシャは見たことがなかった。

まるで、わざと周りにも聞かせたいかのように騒ぎを大きくしようとしているようにすら見えた。その思惑があるのなら、成功している。


「カルニカ。こちらは……」


プリシャは、幼なじみにいつものように答えようとした。でも、彼女の方はいつものようにプリシャの話を聞く気はなかった。


「留学生でしょ? そんなこと知っているわ。そんなことで私は誤魔化されないわよ!」
「……」


わざと大きな声を出している気がする。カルニカの声に人が集まってきているのを見て、プリシャはラージたちが言っていたことが本当のことなのだと思い始めていた。

にわかには信じられないことだが、本当のことのようだ。そんなこと知りたくなかった。


「カルニカ? どうした?」
「ジテンドラ様、幼なじみが婚約者がいるのに留学生の子息と仲よさげにしているんです」
「何? それは、まずいだろ」
「……」


2人とも、そんなことを言い、何事かと集まって来ている面々も、プリシャがそんなことするのかとひそひそと話し始めていた。

おっとりしているプリシャでも、悪意を感じずにはいられなかった。


「プリシャ嬢、こちらは?」
「幼なじみとその婚約者です。2人とも、こちらは……」
「聞きたくないわ。あなたの浮気相手の名前なんて知りたくもない」


カルニカがわざとらしく遮って来たが、プリシャは気にせずに言葉を紡いだ。いつもなら、ことを荒立てたくないから物静かにしていたが、今日は黙っていられなかった。

どんなに遮られようともプリシャは言葉にした。


「……ラージ様の従兄です」
「え? ラージ様の従兄??」
「初めまして、サンジャイ・クシャトリアだ。こちらでは随分と珍しい歓迎のされ方をするのだな」
「クシャトリア……? こ、公爵家の……?」
「そうだが?」
「「っ!?」」


ジテンドラは、ファミリーネームで気づいたようだ。彼の元婚約者は、クシャトリア公爵夫人になることより、本命の相手との婚約を夢見ていたのだ。ジテンドラは、伯爵子息なのだが、その本命の令嬢には将来有望視されていて、王太子の側近だとか言っていたようだ。

だが、将来を有望視されている事実もなければ、王太子の側近でもない。それをサンジャイが教えたら、元婚約者はあっさりと本命だったはずの子息を捨てて、やり直したいと言ってサンジャイを追いかけ回して修道院に入ることになったが、ラージたちには詳しいことは言わなかった。

どうなるかを面白がって、あっさり戻って来ようとして、しつこく追いかけ回されたのだ。流石に自分の両親やあちらの家にも、そんなことをしてどうなるかを見ようとしたなんて、サンジャイは言えなかったため、後から調べ上げたことをどちらの両親にも告げて、そこで知ったかのようにしたのだ。

令嬢が修道院に入ったことをジテンドラは知らないのだろう。ただ、本命の令嬢の元婚約者だとしか思っていないはずだ。

カルニカは、それでも勘違いさせるようなことをしていたプリシャが悪いと言い、それもシーラに言われたことがあったなと遠い目をしてしまった。

幼なじみも、あのお姉さんと似ていたようだ。特に余裕がなくなると本性が出てくる。


「な、何よ。ややこしいことしないでよ!」
「……」


逆ギレされて、プリシャは何とも言えない顔をしていた。幼なじみが、こんな性格をしていることを今まで知らなかった。

まるで、全く別人という感じ。シーラが戻って来たかのように思えて、それがたまらなくプリシャのことをげんなりさせた。

幼なじみは、姉のことをとやかく言えるような性格をしていなかったのだ。


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