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しおりを挟むそれとなぜか、ラカトゥシュ侯爵家の3男のアルサルイスがやたらとサヴァスティンカのいる特待生クラスの側を何かとうろちょろするようになっていた。今更、何があるというのか。
「また来ているわ」
「婚約を白紙にしておいて、まだサヴァスティンカ嬢に文句が言い足りないのか」
「……」
特待生クラスの面々は、そんなアルサルイスを親の敵のようにしていた。サヴァスティンカとの婚約を断っただけでなくて、せっかくの婿入りまで断った上、暴言を吐いたことに謝罪もないのだ。それに怒っている者ばかりだった。
最初は、謝罪に来たのかと思っていたが、そうではなかったのだ。
あちらは、サヴァスティンカの顔も知らないようだし、サヴァスティンカもアルサルイスの顔を知らなかった。今更、知りたいとも思っていなかった。
「謝罪でもないなら、何しに来ているのかしらね」
「薄気味悪いな」
そのため、周りが追い返してくれていたが、そのせいで特待生クラスは試験が終わっても、ピリピリしたままだった。それが、サヴァスティンカは申し訳なくて仕方がなかった。さっさと会って何をしたいのかを聞こうとしたが、特待生のクラスメイトたちに止められたのだ。
「あんな風にいきなりやって来て、暴言を吐き散らしたんだ。わざわざ会ってやることない」
「……」
「そうよ。あんな失礼な奴、きちんと謝罪もしないのと会うことないわ」
「……」
どうやら、サヴァスティンカがこの状況を打開するのに自ら動くのは違うと言いたいようだ。だが、それでクラスの雰囲気が悪くなってしまっているのだ。申し訳なくて仕方がない。
見かねた先生方から留学をすすめられて、父に相談すると眉を顰められた。
「あちらからは、きちんと謝罪があったが、本人からはまだだとは思わなかった」
「それこそ、呼んでくださればまだしも、廊下をウロウロなさっていて、とても迷惑なんです。他の方が話しかけても、しどろもどろで……。最初の時は、怒り心頭で怒鳴り散らしていたのもあって、クラスの皆さんが未だに怒っているのもあるんです」
「それも、まだしてないとはな。……そんなのを婿入りさせようとしていたとは思わなかった」
「……」
サヴァスティンカも、そこまでとは思っていなかった。
「それで、先生方に留学をすすめられたんです」
「そうか。それは、いい。どの国にするんだ?」
父は、留学の話に笑顔になった。成績もいいサヴァスティンカなら、どの国であろうとやっていけるとばかりに思っていた。
色々とすすめられたが、先生たちは自国に留学してほしいらしく、何ヶ所もの候補をプレゼンされて、サヴァスティンカはそれにも困っていた。
その資料を見て、父は驚き苦笑していた。そこから、親子でその資料を見つつ、執事やメイド長も加わって、あーでもないこーでもないと議論をした。
それが白熱してサヴァスティンカは置いてけぼりになってしまったが、それでもサヴァスティンカは楽しくて仕方がなかった。
書斎から出るとアレクサンドリーナとセザリナがはしゃいでいたし、アルサルイスも学園で相変わらずだったが、サヴァスティンカにはいい気分転換になっていた。
そんなことをして、数日してサヴァスティンカが留学することになるまで、すぐのことだった。
その時も、義母と義妹は何を思ったのか。こんな事をサヴァスティンカに言ってきた。
「あら、やっと私に勝てないとわかって家から出て行く気になったのね」
「……」
「まぁ、潔いわね。もっと早く出て行っても良かったと思うけど」
「……」
なぜか、留学に行くだけなのに家から出て行くと思われていた。サヴァスティンカは返事するのも、訂正するのも面倒くさくてほっといた。
父にも、関わらなくていいと言われていたのもあり、全部スルーして留学先に向かった。
何をしても浮かれているのだが、それも今回の婚約騒動で、父もこの厄介な連れ子がどうにかなってくれて、ホッとしているようだ。
婚約が駄目になろうとも、2人ともいいと言っているのもあり、それも書類にして何を言って来ても取り合わなくていいようにしてあった。ついでのように煩くしてきたら、この後妻とも離婚すると記してあるようだ。
サヴァスティンカの母親は、なぜ父にアレクサンドリーナとセザリナを託すようなことをしたのかがサヴァスティンカには謎のままだった。
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