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しおりを挟むメテリア伯爵家では、義母のアレクサンドリーナと義妹のセザリナが、婚約が決まってお祭り騒ぎではしゃいでいた。これまで以上に煩くしていて、それだけでなく色々と疲れたサヴァスティンカはくたびれていた。
サヴァスティンカの婚約が白紙となったあとで、義妹とラカトゥシュ侯爵家の次男との婚約の話が持ち上がった時にサヴァスティンカは父の書斎に呼ばれた。
「サヴァスティンカ。学園で何があった?」
「よくわからないんですが、どうもセザリナがラカトゥシュ侯爵家の方々にお会いしたようなんです」
「……あれをお前と間違えて婚約を白紙にしたと?」
「……」
それを聞いて、サヴァスティンカは苦笑するしかない。どうやったら、間違えられるのかがサヴァスティンカにもわからなかったのだ。
特待生の教室まで来たのだから、セザリナとは違うとわかってもよさそうだが、怒り心頭でやって来て言いたいことを言えずに友達に八つ当たりして戻ってしまったようでサヴァスティンカは結局、婚約が白紙となってしまったが、アルサルイスには会ってすらいない。
「まぁ、そんなのが婿入りしてくるよりはよかったな。それより、次男の方だ。あれと婚約して、どうするつもりなのやら」
「あの、義母の父君が、婚約者を決めるのではなかったのですか?」
「……あいつが、婚約したがっているからとゴリ押ししたらしい。それを強行するのなら、二度と実家を頼るなと言われたようだが、そんなこと婚約してしまえば問題ないと婚約させることにしたようだ」
「……」
それこそ、問題しかないと思うが、義母と義妹は何を考えているのやら、サヴァスティンカだけでなく父にもわからなくなっていた。自分で自分の首を絞めているのに実に楽しそうにしているのだ。もう、サヴァスティンカにはわけがわからなかった。父も同じようで、これまでで一番理解不能な顔をしていた。メテリア伯爵家では、浮かれる2人以外は同じ気持ちだったはずだ。
はしゃいでいるアレクサンドリーナとセザリナに使用人たちも、薄気味悪そうにしているが、2人はそれにすら気を悪くさせてはいない。全く見ていないようだ。こんなことは、初めてだった。
「あちらの義父は、どこに養子に出すかで頭を抱えていたようで、正直ホッとしているようだ」
「養子に……。それは、中々骨が折れますね」
「あぁ、どこも断ってきていて、貴族はほぼ全滅していたようだからな。……ラカトゥシュ侯爵家の次男が見初めたと聞いて物凄く驚いていた。何が何でも婚約したいと言っていたらしいから、それなりの覚悟があるのだろうが、あれの考えることだから、ろくなことではないだろうとは言っていたが」
「……」
「だが、これで厄介ごとが減って、私たちに今後は関われない言質を取れたと喜んでいた。だが、そのせいで、お前の婿になるのを邪魔してしまったのを申し訳ないと謝っていた」
「お義祖父様のせいではないのに。申し訳ないです」
サヴァスティンカは、それを聞いて何とも言えない顔をしてしまったどうやら、サヴァスティンカには縁がなかったようだ。その方がいいと思っていて内心では安堵していたのだが、父は気づいていない。もしかすると義祖父は気づいていたかも知れないが。
「そんな顔をするな。義父が、今度は、お前の婚約者を探すのを手伝うと張り切っていた。お前にも会いたがっていたぞ」
「そうですか」
それにサヴァスティンカは、ふふっと笑った。血の繋がりなどないのに孫のように可愛がってくれている。時折、母をサヴァスティンカの面影の中に見ているようで、未だに母を思っているのがよくわかった。
だが、婚約が白紙になってしまうまで、物凄く早かったこともあり、面白おかしく周りが話すのも早かった。サヴァスティンカのことではなくて、アレクサンドリーナとセザリナのことだが、メテリア伯爵家のことに変わりはない。サヴァスティンカは、それを耳にするたび、げんなりせずにはいられなかった。
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