可愛い妹を母は溺愛して、私のことを嫌っていたはずなのに王太子と婚約が決まった途端、その溺愛が私に向くとは思いませんでした

珠宮さくら

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怒り心頭のまま伯爵家に戻るなり、サンマルティーニ伯爵を呼び出して、叫ぶように言ったのは……。


「あなたとは離婚するわ!」
「そうか! すぐに書類を用意する」


サンマルティーニ伯爵は、やっと離婚する気になった妻に喜んで、いつも持ち歩いていた離婚届を出した。

それに何か言うこともなく、さっさとサインして、アンジェラを連れて実家に帰ると言うのにサンマルティーニ伯爵は首を傾げた。

実家はともかく、アンジェラのことを口にしたことにおかしいと思ったのだ。


「アンジェラなら、留学からしばらく戻って来ないだろ?」
「そんなこと、わかっています」
「……」


戻って来たらに決まっているとばかりにしていて、荷物を詰め込んで、さっさと実家に向かった。

それを目をパチクリしながら、気が変わっては困ると思ってサンマルティーニ伯爵は余計なことを言うことはなかった。

アンジェラのことは、ちゃんと話しているから聞いていないなんてことはない。頭に血がのぼって、うっかり忘れているとかだろう。

だが、サンマルティーニ伯爵はそれを丁寧に教えてやることもなく、必要なものだけを持って出て行ったのに満面の笑顔となっていた。

ノルベルトは、あっさりと去って行ったのに驚いていた。父とは別のことに驚いていた。

母は、とっくに実家から絶縁されているのだ。それなのに離婚されたから戻れると思っている母に眉を顰めていた。

チラッと見ても浮かれている父に再度確認する気にもならなかった。こんな感じだ。絶縁の撤回なんてされないだろう。

そもそも、王妃主催のお茶会から戻って来るには早すぎる。それにあの感じだ。何かあったのは間違いない。

しかも、アンジェラは留学している間に養子になっている。母も、それを聞いていたはずだが、あの調子ではそれすら覚えていないように見えてならなかった。

だが、離婚してくれたことに父は、すっかり浮かれていて、愛人とやっと結婚できると浮かれているのにノルベルトはため息しかつかなかった。

あの人がいなくなるのに不満はない。

その知らせをノルベルトは、すぐにステファニアに教えるべく手紙にするために部屋に戻った。









(やっと、離婚したんだ)


兄からの手紙で、そう思っただけだった。実家からの速達だと聞いて何事かと思って焦ったが、そんなことかと思うようなものだった。


「何かあったの?」
「両親が離婚したそうです」


王妃に教えてもらっているのを中断するようなものではなかった。


「あら、そうなの」


ステファニアの言葉を聞いて、なんてことないように王妃は答えた。中断された理由が、その程度かと言う顔をすることはなかった。

あんなのと離婚してよかったかのようにしていたが、ステファニアはそれに喜んでいられない理由を口にした。


「なので、父がすぐにでも愛人と結婚する気でいるようです」
「……愛人?」


王妃は、それを聞いて物凄く怖い顔をした。


(あの愛人。どんな顔してたっけ?)


ステファニアは、会ったことがあるはずなのに思い出せなくて首を傾げていた。


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